第75話 勇者!夢から覚める。
「ミャ〜。···ミャ~!」
猫は静かに垂らす神黒の涙を舐める。
「猫···ちゃん。どうしてここに···」
神黒の目の前にいたのは見覚えのある、いや、先ほどまで目の前にいた猫とそっくりの猫だった。
「あの時、見てみぬふりをしてごめんね···猫ちゃん······」
「君を助けに来たんだ······」
大人っぽい低く渋い声が猫の口元から発せられた。
猫ちゃん!?話した···?
神黒は猫が喋ったことに驚き、一瞬体が固まってしまう。
「聞いているのか神黒!」
「はっ!!何ですか」
「お前は今、恵里たちのように檻に閉じ込められている。しかも、恵里たちよりも頑丈な場所にな」
神黒は周囲を見回すと猫の言った通り、恵里たちのような鉄格子で囚われた場所ではなく、頑丈な鉄の扉できつく閉められていて暗い光が差さない部屋に囚われていた。
なぜそこまでここのことに詳しいんだ?
「それはここは我の世界だからだよ···」
どういうこと?
「困惑していそうだな。分かりやすく言えば、この世界は我が管理している世界だ。君も知っているだろう、複数の世界があることを···」
確かにこの世界の他に俺は三つの世界を知っている。俺の世界と俺を騙した世界、そしてフェルトのいる世界。
「だが、それがどうしたんだ?」
「それぞれの世界には管理者がいる。その者が定期的に全世界を統括するリーダーに報告して、調整を行っている」
「調整···?」
「君らの事だよ!」
そうか、そのリーダーによって俺たちのような転移者が呼ばれたのか。
「少し話が反れたな、我は君をここから出しに来たのだよ」
「それはありがたいけど、良いのかそんなに世界に干渉しても···?」
猫ちゃんは少し顔を引きずりながら話し始める。
「本当は管理者である我はあまり世界に干渉してはいけないのだが、ことがことなのだ。詳しいことは聞かないでくれ···」
「なら、ここからどうすれば出れるんだ猫ちゃん?」
神黒は猫に向かって檻から出る方法を聞く。すると猫は少し間を取った後、何か言いたげそうに話し始める。
「···なぁ、止めてくれないかその呼び方。我はこれでも世界の管理者なんだ。猫ちゃん呼びは馴れん」
「そう言われても、なんて呼べば良いのですか?」
「我の名はキャロック、叡知のキャロックだ!」
「じゃあキャロックさん、どうすればこの檻から出れるんだ?」
「おそらくじゃが、この部屋はスキルを無効化させる聖域であろうから自力でこの鉄の扉を開けるしかないじゃろ······。我も手伝ってあげるから、やるぞい!」
猫と神黒は鍛えられた肉体で頑丈な扉を前に腕に力を込める。
腕にはおのずと妖力が集まっていき、徐々に力が溜まっていく。おそらく妖力はスキルで無いため使用可能なのだろう。
神黒と猫は腕に溜め込んだ妖力を魔法のエネルギーにして、強化の魔法を腕に纏わせ、目の前にある鉄の扉へぶつけるのであった。




