第74話 勇者!懐かしい夢を見る。
「楓、明かりを付けてくれないか···」
楓は神黒に言われた通り、明かりを灯すために指先から炎を生成する。
周囲は埃やクモの巣が張り巡らされていて、いたるところからカサコソと何かが動く音が聞こえてくる。
「もうすぐ着くわよ······」
幼女はいくつかある牢屋の中で一番端にある檻の前で立ち止まり、奥にいるのであろう人に呼び掛ける。
「起きなさい!恵里!」
檻の中にいた者は呼びかけられたことに気づいたのか、急いで鉄格子の目の前まで走り出した。
「助けが来たのね!早くここから出してくれないかしら!!」
恵里は幼女に必死に呼びかけたが、幼女は開けようとする様子はない。
「早く開けて!」
······。
「開けてあげないの?」
楓は不思議に感じて、幼女に直接聞いた。
「···あなたたち、何か勘違いしていないかしら。なぜ私があなたたちを助けないといけないのかしら!私は神黒に興味を持っただけ、その他の物体なんてどうなったって良い」
何だこの俺への執着は···!俺はこいつにそこまで好かれる行動を取った記憶はないんだが···。
「僕も頼みます!お願いします!」
「あなたも神黒!あなたに私の行動を狂わすことは出来ないわよ!!」
幼女は神黒たちに向けて眠りの魔法を放った。
「どうし···て···」
神黒たちは気を失ってしまう。
何だこの感覚。淡い赤と白が混じったような空間に浮いている···。どこを見てもモヤがかかる。
不思議な空間は突然映像のようなモヤモヤを映し出した。
「勇者様!こ奴らをさっさと殺ってしまって下さい!!」
どこか見覚えのあるどこぞの貴族が俺に対して指示している映像が流れていた。
「こいつら、勇者様を侮辱したんですよ!!早く殺ってしまってください」
「どうかお助け下さい!!私たちは勇者様を侮辱したことなど一回もありません!」
「奴らは嘘をついていますよ勇者様!即刻死刑です死刑!!」
映像は突然消えてしまう。
今の映像は何だったんだ···?なんだか懐かしいような······。
考えているとまた同じようなモヤモヤの映像が映し出された。
「ニャ、ニャ~······」
映像には鳴いている猫が血を流しながら横たわっている様子が描かれていた。
なぜかこの映像、見覚えがある······。何でだろう。
「猫ちゃん、大丈夫?僕にはどうすることも出来ないけど···」
映像には少し太った眼鏡をかけた人が猫を手当てしているところが映し出されていた。
神黒はふと転移前の事を思い出す。
あの猫、今どうしているんだろう······。ごめんね、すぐに助けに行けなくて…。また会えるなら、今度こそ謝りたい。
モヤモヤした不思議な空間はやがて消えていく感覚を神黒は覚える。
「ん、あ···はぁ〜!え···」
神黒が夢から覚めると目の前にすごく見覚えのある猫が頬をスリスリしていたのだった。




