勇者!妖怪と対決する。第十七章
━━━夕方。
日は沈み、世界は暗くなり始める頃。神黒たちは宿屋を飛び出し、村の広場に出掛けていた。
「提灯の色が暗い夜空を照らしてくれていて明るいな!」
広場では複数の屋台が肩を並べて出店している。香草焼きや野菜炒めなどの屋台付近では多くの煙がモクモクと空に登っている。
「美味しそうな匂いがプンプンする~!」
神黒たちは美味しそうな食べ物を見て、つい買ってしまう。
「やっぱ、美味しい~!!」
屋台は食べ物だけでなく、腕の良い鍛冶師の作った剣を屋台で売っていたりする。
「神黒様来ていただけたのですか!とても嬉しい!······もし良ければ壇上で宴の開会をしてほしいです!やってくれたらこの宴もとても盛り上がります!」
先ほど宴に呼んでくれた村人が神黒の背中を押しながら、壇上へと足を運ばせる。
「······っわ!」
神黒が壇上に上がると広場で飲み食いをしていた村人たちが一斉に目を向けた。
大きな歓声に少し驚くものの壇上の上というのもあり、緊張が身体中をめぐる。
「ほらほら早く!何か始まりの言葉を!」
期待してそうな表情を浮かばせる神黒をここに立たせた張本人。神黒はその期待に応えなくてはならない圧力に潰されそうになる。
神黒はこれ以上何も考えないようにして、祝杯の言葉を口にする。
「······ゴホン!えー、今日は村の半壊の中、復興を祈る祭りに来ていただきありがとうございます!私はこの祭りの主催者から頼まれ、この壇上に登って今発言しているわけですが、この村の復興が出来ることを祈っています。乾杯~!!」
「「カンパイ~!!」」
乾杯の言葉と共に広場に集まっている村人たちはお酒を飲む。
壇上から退く神黒に話しかける村人。
「ありがとうございます!やっぱり頼んでよかったー!」
「いやいや、これくらいなら全然やりますよ。ここに泊まらせていただいてますし···」
神黒たちは一通りお祭りを楽しみ、気づくと広場は人気が無くなっていっていた。
そろそろ帰ろうかと考えていると小さな神社で祈る花月を見つける。
「······」
神黒たちは祈っている花月に近よっていき、気づくのを待つ。
「なんじゃ、神黒!」
祈り終えるお爺さんは最初から気づいていたかのように神黒に話しかけた。
「いや、お祭りの帰り途中に花月さんがこの神社で祈りを捧げていたところを見かけて······」
神黒は不思議そうに花月を見ていた。なぜなら、こんなに明るいお祭りの途中で悲しそうな表情を浮かばせる花月にどうしても理由が解らなかったからだ。
「わしはこの騒動で愛しき妻を失くしておるのじゃ。遺体は鬼の力によって亡くなり、村は半壊でお墓を建てる余裕もない。だから、こうして神社で妻が幸せに過ごせるように祈っておるのじゃ······」
この騒動で亡くなったのはたった一人。あの時······あの檻の扉を開けようとした時に背後からの攻撃で亡くなった女性。あの人こそがこの人の妻だったのだろう。
「申し訳ないことを聞いてしまいました。すみません!」
「いいよ。謝らなくても······」
一滴の雫をこぼす花月を見て、自分のしたことの本当の重さを感じた。
神黒たちは宿屋に戻り、準備しておいた荷物を持って、旅に出るのであった。




