勇者!妖怪と対決する。第七章
今、神黒たちはエレメンタル鉱石のある輝石の洞窟へ向かっていた。
「この霧には迷い効果のある魔素が多く含まれている。じゃから、無闇に動いてももとの場所へ戻されるぞ…」
神黒は濃い魔素によって、ドラントを見失わないように足を進めていく。
ドラントは霧の影響を受けていないかのようにスタスタと歩いていく。ドラントはゴーグルのような物を目に被って、濃い魔素を目に接触させないようにしているのだろう。
すらすらと歩くドラントは輝石の洞窟へ着くと光石を取り出し、洞窟を照らす。
洞窟の入り口には赤色に染められた旗が掲げられている。旗には大きく鬼のような顔が全面に塗られている。
「ここが小鬼長のいる輝石の洞窟ですか…?」
「そうなんじゃが…おかしいな……いつもならもう周回していると思うが……」
洞窟の中の少し深い場所には人の血のような血痕が残されていた。
不思議なことを言おうとするドラントに不信感しか感じられない神黒はドラントが口を開く前に口を開く。
「中に捕らわれた人がいるからとかでは、無いですよね…?」
ドラントは深く熟考する。
「そうかもしれないな…。その可能性は十分にありえる…」
━━━楓や桜が囚われていないと良いが…。取り合えずは考えるよりも行動だ。行ってみれば分かる!!
洞窟の中へ神黒とドラントは入っていく。中は光石を持っていてもとても暗い。こんなところに小鬼長の率いる小鬼集団が棲んでいると思うと、足がすくんでしまう。動かぬ足をどうにかして前へ運んでいると、突然ダイヤのように光輝く鉱石を見つける。
「これじゃ!これが欲しかったのじゃ!わしが掘っている間、周りは頼んだぞい神黒!」
ドラントに任され、周囲を警戒する神黒に渾身の殴りを神黒に決めようとする者がいた。
「キャッハッハッハ!我の一撃を避けるとはなかなかやるな…。キャッハッハッハ!!」
高笑いする者は嬉しそうな感情、はたまた、悔しそうな感情を感じさせるほどに変性者だった。
「お前は誰だ!」
神黒の疑に答える。
「我の名は殴段のグリック。通りすがりのニートだ…」
━━━ニート?この世界にも現代用語のような言葉があるんだなー。殴段のグリックって言ってたっけ、こいつはなんなんだ。突然攻撃すると思ったら、その途端、笑いだすなんてとても尋常とは思えない。
「殴段のグリックと言ったか、なぜ急に襲いかかったんだ!」
殴段のグリックは側で鉱石を掘っているドラントを見て微笑しながら語る。
「あんたを殺しに来たんだよ!キャッハッハ!我は勇ましい者を阻むもの…」
グリックは話を続けながら神黒の胸元に毒の染み込んだレイピアを突きだす。神黒は後方にバク宙をするように避ける。
「っ危!」
「これも避けますかー。もっと興味が湧きました。あなたはここでは殺さないことにしよう。だが、あちらの御方は殺らせていただきますよ!!」
グリックは尋常ではない速さで神黒の横を通り過ぎ、ドラントの下へ入り込む。
「これで終わりだ。キャッハッハッハ!!」
グリックのレイピアはドラントの眼球目掛けて突かれる。
━━━バチンー!!