勇者!妖怪と対決する。第五章
神黒たちは森の中を彷徨っていた。
「さっきから小鬼が多くなってきていないか…?」
鳥居前まで一匹も出てこなかった小鬼が鳥居を潜ってからやたらと出てくる。【鬼山】と言うからなのか、逆に他の妖怪を一度も見ていない。
「早く母さん達を助けないと!神黒さん鬼族の棲み処はどこなんでしょう?」
楓は神黒を急かすように質問してきた。
「幾分か経ってるけど着きそうな雰囲気も無いな…」
神黒たちは山奥の中で小鬼と出会い戦い、武器の消耗が増えていくばかりで楓たちの親を拐ったであろう奴らの棲み処に辿り着けないでいる。
山奥を迷い続けていると神黒たちは霧がかかっている竹藪の生えた場所を見つける。そこは少しスピリチュアル感のある幻想的な場所で視界も霧によって方向を狂わせてくる。
次第に神黒たちは霧の中で迷い、みんなバラバラにはぐれてしまった。
「楓ー!どこにいるー!桜と一緒にいるかー!!」
神黒は見失った楓たちに声を発して捜索するが、返答はもちろん叫ぶ声も聞こえない。
━━━楓たちは大丈夫だろうか…。一人で寂しくなっているのではないか…。取り合えず、早く合流しないと……。
神黒は大声で叫び楓たちを探し歩いていく。やがて、神黒は一つの小屋を見つける。霧の中に一軒だけがたたずむ小屋は何か懐かしい面影を思い出す。それが何かは思い出せないが神黒は無意識で小屋の扉を左へ寄せる。
━━━ガラガラガラ!!
中は囲炉裏が中央に設置されて、周りにタンスやクローゼットが置かれている。
━━━キューー!!
やかんが沸騰した音が小屋の中の静寂さを強める。
━━━ズリズリズリ……、ペタ…。
神黒は右肩に違和感を感じて、その場から離れる。
「誰だっ!」
神黒は右肩に触れた相手に刃こぼれした日本刀を向ける。相手はその行動に怯えること無く、神黒の日本刀に目を向けた。
「おい…この刀、刃こぼれしてるじゃないか…わしに貸しなさい!」
神黒の持っていた刀を無理矢理奪い、小屋の中へと入っていった。神黒は髭を生やした体格の大きい男を追いかけるとそこには、金床の上に刃こぼれした刀を置き、金槌で叩く男がいた。
金槌で刃こぼれしている刀を打ち付ける男は何度も何度も熱に溶かして、刀を打ち付けた。
神黒はその様子を見て、一言その男に語りかける。
「あんたは誰なんだ……」
神黒の問いに刀を打ち付けながら答え始める。
「俺の名前はドラントだよ。ドラント・ブラウン!鍛冶工房の親方だ。弟子は一人しかいないがな…」
ドラントという者は神黒の話を聞きながら鍛冶を進める。
「なぜこの地域に住んでいるんだ。鬼山に住む意図が分からない…」
ドラントはその理由を刀を打ち付けながら話し始めた。
「俺は一度、国外追放された身なんだ。彷徨っていたところ、間違って鬼山へ迷い込んでしまった。何度も小鬼どもに襲われそうになって大変じゃったよ!でも、過ごしているうちにこの地の素晴らしさを知った。もう国外追放期間は過ぎているが、戻らずにここに住んでいるわけじゃ…」
━━━なぜ、この地を好んだのか一欠片も理解できない。
ドラントが話し終えると同時に精錬された日本刀が渡される。
「これは…何ですか?」
「それは【影之一零式・改】じゃ!元々の刀の性能が異常なのだがわしが少し加えたから【影之一零式・改】じゃ!!」
謎の性能を持った日本刀。神黒はその性能を知らぬままその日本刀を手に入れるのであった…。




