勇者!妖怪と対決する。序章
「誰かいませんかー!いるなら返事をー!!」
勇者の声に返事を返すものはいない。どこを見ても炎が燃えたぎり、村全体が火の海になっていた。この村に入る前に村に住んでいた住民は逃げ出したのか、この村には誰かがいる気配を感じられない。
勇者は燃えている小屋や家に入って人がいるかを一軒ずつ確認していった。結果的には誰も居らず、この村に死体も無さそうなため、無事に避難できたのだろう。
「新しい町や村を探すしかないか…」
勇者は焼け野原になってしまった村を出ようと村の入り口に戻っていると森の茂みに小柄な何かが動きどよめくのを感じた。恐る恐る近づいて、塞いでいた茂みを払うとそこには隠れてブルブル震えた小学生ほどの歳の男の子と女の子が座っていた。どちらも声を出さないように下唇を噛むように抑え込みながら涙をボロボロと流している。
「······もう怖がるものはいないよ…」
勇者が話しかけると片方の男の子が勇者を見た瞬間、声を出す前に気を失ってしまう。もう一人の女の子は身体をぶるぶる震えながら「誰!···来ないで……。止めて…」と逃げ出しそうな身体を無理矢理止めて、震える声で言葉を返す。
「大丈夫。君たちを怖がらしている人たちとは違うから」
「······ホント···?」
怯える声は少し和らいでいく。
「教えて欲しいんだ。ここで何が起きたのか…」
おぼつかない声ではあるがこの村で起きたことをゆっくりと彼女は話し始めた。
「お手玉で遊んでいたら、村近くの森が赤くなって、お父さんが見に行くって言ったきり、帰って来なくて…うぇ…うぇ~ん!!」
女の子は説明するほどにその時の思いがこみ上げてきたのか、泣き出してしまった。
━━━ここまで泣かせるほどに酷かったのか…。
「もう怖くないよ。大丈夫、兄さんがいるから。後、弟くんに見せたくないでしょ…」
女の子の隣で横たわっていた男の子は女の子が向くと同時にゆっくりと眼を開く。見開いた瞬間は驚いて、また倒れそうになるもののもう一人の女の子の手もあり、話を聞いてくれた。
「僕が気づいた時にはもうお母さんもいなかったよ?」
━━━この二人の親はきっとこの子達を守るために犠牲になったのだろうか…。話を聞いている限り、自然的に起きた火事では無さそうだ。
勇者は村の人々が逃げ切れたのか心配する。この子達のように逃げそびれた人達も入るのではないかと考えるものの、この子達の顔を見て考えるのを止めた。
「またお母さんやお父さんに会いたい?」
「会いたい……」
「なら俺と探しに行かないか?」
━━━怪しがるのもしょうがない。だって、さっき知り合ったばかりの人間についてこいと言われているんだ当然だ。
「······分かった…今すぐ行こう!」
━━━え…。······あれ、急に雰囲気変わった……。
思いもよらぬ反応に勇者は拍子抜けだ。