勇者!勉強をする!
アレスは国立学院のEクラスの窓際に立っていた。
「何か~大きな出来事無いかな~…」
「確かに最近は授業続きでつまらないけど、こういうところで堪えていくことも大切だぞ!」
「それもそうだな!」
すると、教室の扉を勢い良く開く音がする。
「お前らっ!!今日は朗報があるぜ!」
わくわくしたエリス先生はどこか楽しそうな表情をする。
「朗報とは何ですかっ?」
いつも真面目なEクラスの学級委員長が真っ先に聞いた。
「まぁまぁ、急ぐ気持ちも分かるが落ち着け!━━━言うぞ!······明日……急遽テストが予定されました!パチパチパチパチ」
「━━━え~!!」
教室中の生徒達は喜ぶどころか憂鬱に感じてしまう。
······なぜなんだよ!悪いことは朗報とは呼ばないことを先生は理解してないのか!!しかも、明日って無理に決まってるだろ!
「無理だ!今からでも取り消せ〜!!取〜りっ消せ!取~りっ消せ!」
生徒達の暴動はエリス先生の一言で反転する。
「明日のテストで6割以上取れたものには、勇者との模擬戦を行う議会が与えられる!!このチャンスを無駄にするのか!」
教室中の生徒達が暴動を止めて歓喜する。
「オッシャー!!」
「生徒諸君!!明日のテストのために今日は全限自習とする!!諸君の活躍を祈る!!」
エリス先生は話し終えると先ほどの扉を開け、職員室へ戻っていってしまった。
少しの間静寂が包み、緊迫感の感じる空間だったが1人の生徒が隣の生徒に勉強を教えてくれと頼み出すと、他の生徒も同じように勉強を始めたり、グループを作って教え合っていたりすることを始めていった。
「僕たちも勇者と模擬戦出来るように勉強しない?」
隣の席にいるフェトが話しかけてきた。
「いいよ!」
アレスは快く承諾する。アレスとフェトが勉強を始めるとサイアとミレトアが席を近づけてきた。
「俺達も入れてくれ!」
アレス達は4人で勉強を進めていき、時刻は午後の3時となっていた。
サイアが3人に向けて話す。
「そろそろ止めないか~」
「まだまだですよ!もっと勉強しないと明日のテスト6割取れませんよ!!」
ミレトアが必死になってサイアを勉強会に戻す。2人を見たアレスは3人に向けて話し出す。
「一旦休憩を取りますか…?」
「それもそうですね。一旦休憩を取りますか…」
「ナイスだ!アレス!!」
「また後で勉強はしますよ!!」
「分かった分かった···」
アレス達は休憩として、城下町の中にある行きつけの喫茶店に入った。
カラン…コロン…。
中は古民家の雰囲気を残しながら、少し西洋感のある設計だ。ここではコーヒーやカフランというカフェインの濃い飲み物やアイスやブレッドなどの食べ物を食べることができる。
アレス達は一番隅のテーブル席に座って注文を始めた。
「僕はアイスコーヒーと焼きオークのサンドをお願いします!」
「俺はメロンソーダとサンダーアイスで!」
「私はホットコーヒーとタマゴサンド」
「俺はホットカフランとチーズケーキを!」
4人はそれぞれ違ったメニューを注文した。
注文を待つ間に4人は前に勇者と会った合同訓練のお話を繰り広げていた。
「アレスってあの時勇者平斗と一緒にいたって話で聞いたけど、平斗さんって強いの?」
ミレトアの問いにサイアも便乗する。
「う~ん···強さと言うより硬いと言った方が合ってる気がする···?」
アレスは言い方に困ってしまう。なぜなら、平斗はステータス的にも強いとは言い難いが守りにだけ重点を置くと無敵と言っていい。この特殊な力は平斗の仲間にはもちろん平斗自身でさえ気がついていない。
「よく分かんないけど強いっちゃ強いって感じなんだね」
ミレトアは届いていたホットコーヒーを片手に持ち、軽く口に流した。
話が終わり、それぞれ届いた食べ物を口に入れ込む。話題は最近のメリッサとブレインの話に切り替わる。
「最近、メリッサとブレインが仲違いしているんだよな~」
「確かにあの2人、前はいつ見ても一緒にいたり、2人でDクラスを引っ張っている印象が大きかったけど、最近は2人でいるところ見ないな~…」
サイアとアレス、フェトが2人の話題で盛り上がっているとミレトアが弱気な声で話の間に割り込む。
「······あの、ブレインさんとメリッサさんって誰ですか?」
━━━これは盲点だった!!ミレトアとは入れ替わりで仲良くなったもんな。それはブレインとメリッサのことを知らなくて当然だ。
ブレインとメリッサが誰なのか、どういう関係なのかをフェトがミレトアに話した。
「そういうことですか!まぁ、そのお二人にも会ってみたいです!」
「今度会ってみよう!ミレトアのことも話したいし!」
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テーブルに置いてある料理を食べ終える。
「お腹も膨れたし、そろそろ帰りますか~…」
「それじゃあ勉強を始めましょうか!!」
「うん!」
「そんな~」
こうして4人は勉強をし始めるのであった。