勇者!合同訓練に参加した。 第五章
「アレスくん!アレスくんどうしたのっ!?」
「手足が動かない……」
アレスは先ほどの大技の反動で手足が動かないで息も切れている。
「···えっ!待て待て…スライムジェネラルをソロ討伐したアレスが動かない…。死んだ~!!」
平斗は先ほどまでとてもたのもしかったアレスを見て、期待から絶望へと変わる。
「大丈夫だ···俺の土魔法で壁を壊すから、道に繋がった時は平斗さんの目で外へ出ましょう!」
アレスの返事を聞いても平斗は困惑を止めることはなかった。
アレスは動かない身体を無理に動かして、壁に手をつけ、詠唱を唱えようとするものの荒れた息によって魔法が唱えられない。
━━━平斗は今の状況を受け止めることができなく、戦意喪失している。だが、今の俺じゃあ何もできない…。せめて、反動が無ければ━━━。
······あっ!!平斗のスキルでなくすことができるのでは!!
一欠片の希望を持って、平斗の手に触れる。
触れた瞬間緑色の光が輝く。アレスの身体は徐々に動けるようになり、口の動きも戻っていった。
アレスは動けるようになるとすぐに壁めがけて土魔法を唱える。
壁は左右へ押すように動き始め、アレスと平斗は真ん中に空いた道へと足を進める。
「あぁ~、やっと出れた~!」
平斗の安堵する顔は先ほどまでの顔とは真逆の様子だ。
アレスたちは外へ出て練習場に戻るとそこには勇者も学院の生徒もいなくなっていた。
きっと合同訓練が終わったから撤収したのだろうと思ったアレスは1つ不思議に思った。
······平斗が帰ってないのになぜ勇者たちはここにいないのだろうか?
この理由はアレスにとって容易く考えのつくものだったが、平斗に対してとても酷なことであり、平斗にそのことを勘づかれないようにわからないふりをする。
「誰もいないですね…」
「そうだな…。今日はありがとうアレス!君のおかげで助かったよ」
「こちらこそありがとうございました!」
「アレスみたいな強い人が味方になってくれると頼もしいけど、僕は決める立場じゃないから祈ることしかできないや!また会えることを願ってるよ」
平斗は笑顔を浮かばせながら右手を大きく上げて左右に振りながら帰っていくのであった。