勇者!1人の勇者と洞窟へ行く!第三章
足元は薄暗く歩くのには必要最低限の光量しかない。前を向いても松明の明かりは遠くを照らさない。地面は泥濘んでいて進もうとする足は足枷をつけているように重い。
暗闇を軽々と進む勇者稲区平斗。平斗の足は足枷のような重さを感じさせないほどに軽やかな動きで、暗くて見えてないはずの道を迷うことなく進む。
「待って!追いつけない平斗さん―――――!」
当の本人は不思議そうにこちらに近ずき、俺の手に触れる――――。
その時だった――――。
身体中に不思議な力が漲る。
さっきまで足枷がついているように重かったはずの足が軽やかに動く―――それだけじゃない。
俺は足元に気を取られてさっきまで気づかなかったが、先程まで松明で照らされた場所しか見えなかった。だが、今は太陽が上空にあるのかと思うほど明るく照らされている。視野も遠くまで見えるようになり、松明を持つ必要さえなくなった。
俺はこの現象を起こした稲区平斗を不思議だと思う。
━━━能力は人並み特異なスキルは無し、なのに体の異常に関するデバフは無効化…こいつが転生してきたとき手に入れた能力はデバフ効果無効化なんだろうか?
「今、何が起こりました!?」
「どうしたアレス君?」
突然おかしな行動をしだす生徒を見て不思議と思う表情を顔に出す。
━━━断じて俺がおかしいのではない。誰だってこんな能力見せられたら動じない人なんていないだろう。いたとしたらそれは事前にその能力を知っているものだけだ。
少しの間変な雰囲気が続いた。
それに我慢できなかった俺は話し出す。
「この奥って何があるんですか?」
「確かー…祐司達と来た時はオークが住んでいたようなー…!?」
勇者平斗は天然バカ野郎である。勇者平斗は勇者4人でやっと攻略できた洞窟に生徒1人と勇者平斗1人で潜り込んでいる。奥には強敵だったオーク…、完全に間違えている、最初から最後まで間違えきっている。
勇者平斗の表情は魚のように青くキョロキョロしていた。これからどうこの状況を覆すのだろうか…。
「勇者様が入れば敵無しですわ~ワッハッハッ!!」
ここに来てわざとらしく勇者平斗に絶大な期待を抱くふりをするアレスは平斗の慌て具合が悪化していくところを見て心の中だけでは笑いが抑えきれない。だが、アレスは頑張って表情に出ないように我慢する。
「えぇっと···やっぱり戻ろうか…?」
━━━なぜ疑問符を付けたのだろう…?
「いや、行きましょ…?」
アレスも吊られて疑問符で答えてしまう。
勇者平斗の表情はもはや羊の毛並みのように白くなっていく。
━━━大丈夫なのだろうか…。完全に亡くなる前の永眠寸前のような顔だが…。
アレスは自分で追い詰めたものの勇者平斗の顔の悪さに心配になってしまう。
引くに引けない状況の中で選択肢に戻るという選択はなかった。
勇者平斗とアレスは洞窟の奥へと進むのであった。




