勇者!一対一の勝負に挑む!?
「ウルフだー!?逃げろー」
フェトは突然現れたウルフに怯え、風の魔法を使って、激的な早さで逃げていく。アレス達はウルフに追いつかれないように逃げるもののフェトには追いつけずにいた。アリス先輩は不可解な表情をしながらウルフに追いつかれまいと逃げていた。
「あの…アリス先輩。どうかしました?」
「迷いの草原にいるウルフは緑色で小型なの、しかも感情を思わせるような口調なんてしない。それに対してこのウルフは黒くて大型そして楽しんでいるような口調をしている。それが引っ掛かって…?」
「それって普通のウルフよりも危ない可能性があるってことですか?」
俺とアリス先輩が話している間にフェトの姿を見失う。
「ヤバイですよアリス先輩!?このままではフェトはこの迷いの草原で迷い続けることになってしまいます!」
焦るアレスにアリス先輩が語りかける。
「確かにそれはあり得る。でも、ここで君を置いていくのも正しい判断ではないと私は思う。だから、一緒に探そう?」
アリス先輩は俺を置いてフェトに追いつくべきではないと考えているらしい。
···このままではフェトが危ない。どうにかアリス先輩を安心させてフェトのもとへ行かせる方法を考えないと…。それもこれもフェトが俺が追いつけないくらい速く逃げているせいなんだが…。
悩み混むアリス先輩を見てアレスは良い方法を打ち出した。
「アリス先輩!僕は迷いませんし、逃げ上手の自信だけはあります!」
「でも···」
アレスはアリス先輩めがけて渾身のつぶらな瞳を繰り出した。
アリス先輩はアレスのつぶらな瞳に抗えず、フェトを助けに行くと言ってフェトを追いかけていった。
「このウルフからどう逃げよう···?」
···どうもこのウルフは普通のウルフとは違うらしいとアリス先輩が言っていた。つまり、普通のウルフよりも強い可能性が高い。それに対して俺は必要最低限の剣と防具だけ…。勝ち目があるのか!?
別の世界の勇者ではあるものの力は制限され、スキルも一つしか持ってきてこれない俺では、えたいのしれない敵に勝てるのか···?
アレスは必死の思いでウルフから逃げていた足を止め、背後を振り返る。ウルフも同様に足を止め、アレスの動きを見極めているようだ。
···ウルフは足が速い。だから、切り付けるとしたら足を狙うべきか、それとも視覚を奪うために眼を狙うべきか···。
「分からない…」
···一か八か光魔法を使って効果があるかどうか試すか···。
アレスはウルフ相手に光魔法の初歩魔法ホワイト・ライトを使う。
「キャー!!」
ウルフは光魔法の効果で眼を焼き、ウルフの目は何も見えなくなった。自由奔放に動き回るウルフは、3か月ほど経つ赤ちゃんのような動きをする。
アレスはウルフがドタバタしている隙に手軽な短剣で硬い鱗を切り裂く。
切り裂かれたウルフは空気中に分散し、アイテムを落とす。
「これは精霊核ではないか!」
···原理は分からないが迷いの草原で出るはずのない精霊を呼び出す精霊核がドロップとしてこの手に存在している。
アレスは閲覧スキルを使ってその理由を調べた。だが、該当する情報は無かった。
アレスは迷いの草原の中部で精霊核の使い道を考えるのであった。