勇者!迷子になります!?
「みんなー!どこに消えたんだー!」
叫んでも返事が来ることはなかった…。
遡ること数分前…。
「ここは迷いの草原。草原なのに迷いやすい矛盾から命名された場所!」
「こんなに見晴らしが良いのに迷うんですか?」
「見晴らしが良すぎるため、目印の付けることができない…」
···確かにこの見晴らしだと今どこにいるのかも分からない。
「やはりこの草原でも生徒会長は迷わず進めるのですね!!」
メリッサはキラキラした様子でアリス先輩に期待を抱いている。
すると、アリス先輩はアレスに問いかける。
「アレス!今はどこにいるのか当ててみなさい!」
急な無茶振りに戸惑うアレス。アレスはすかさず視野の端っこにあるメニューを誰にも分からないように開き、地図を見る。
「今は迷いの草原の入り口から北へ進んだ場所ではないですか?」
アレスは確認の意味も込めて問い返す。
「おしい!入り口から北東の場所よ!!」
アリス先輩は自慢気そうに語るが閲覧スキルの座標に間違いはない。つまり、間違っているのはアリス先輩なのである。
「いや~、でも魔物でねぇなー」
サイアが寂しそうに話し出す。
「俺もっとガツガツゴブリンやウルフを討伐するのかと思ってわくわくしてたけど…ここまで一度も見てないよー!」
すかさずメリッサが反応する。
「別に良いことでは!来ない方が安全ですし、怖いですもん…」
メリッサは少し魔物が怖いらしい。このことにブレインが反応した。
「メリッサの言う通り安全に行動は出来ているが、魔物退治をすることが今回の訓練、魔物がいないのは困る」
「そりゃそうだけど…」
メリッサは怯えながらも頷く。
少し歩き続けると茂みからガサガサと動く音が聞こえた。
ゴブット!!
目の前には数十匹のゴブリンが群がっている。
メリッサは突如現れた数十匹のゴブリンに驚き、無我夢中で1人で逃げ回る。それを追いかけるように数匹とブレインとサイアが走っていく。
「どうしようかアレス?」
「とりあえず追いかけるか…?」
「ガル!」
「アリス先輩も賛成しているし、そうしよう!」
「大いに賛成ですよ!でも今の声は私ではないですが?」
「またまた···?嘘ですよね…!?嘘ですよね~!?」
フェトは怯えながら背後を向く。
すると、ニコニコしながらお腹をぐぅぐぅ鳴らしながら、ヨダレを垂らしたウルフがこちらを向いている。フェトは細身の体を抱くように手を抱え、怖がりながら後退りし、ものすごい速さで草原を駆け始める。
ウルフはフェトを追いかけるように走り去っていった。
「ガルルゥー!!」
「ウルフだー!?逃げろー」