勇者、さらなる関門にぶち当たる!
俺は市ノ瀬響。後ろから2番目の窓側の席に座っている。いつもは誰よりも早く登校して黒板を消す。生徒の来る頃になれば席に座り、静かに小説を読む。昼になれば、自習室で弁当を片手に勉強をする。放課後になれば誰もいなくなってから下校する。
毎日のように同じ習慣を繰り返し続ける。
とある日、たまたま俺は昼食を取る場所を探していた。何でかと言うといつも通り教室で食べようとしたら俺の席にすでに人が座っていたからだ。
俺は上位カーストのグループが席を使っていて、その気迫に圧倒され、話しかける前に諦めた。
食堂は席が埋まっていて使えないため探していると体育館裏で猫が怪我をしながら倒れていた。この学校では猫を飼っていない。つまり、学校外の迷い猫だ。
···俺はこの猫を知っている。朝、校門の前で迷っていた猫だ。教室に着き、いつも通り黒板を消していると窓の方から声が聞こえる。気になった俺は、窓を開き覗く。
「この猫どこから迷い混んだんだ!誰か出してあげろよ~」
「お前がやれよ~」
「ニャー!」
「キャー!!」
「この猫、爪引っ掛けてきた!この野郎!!」
「俺の仲間になにしてんだ!!」
窓の向こうで猫をいじめている生徒を見て、俺は何もしなかった。
俺は厄介なことに手を出したくなかったから。
結局猫は誰にも助けられることはなかった。
······現在。
「あ~、まだ入学してから1ヶ月しか経ってないのか〜!早く勇者一行に会いたいな~」
「つい一週間前に退学になってしまった生徒達にもきっと会いたかった人いただろうなー!」
「そうだなー。!勇者って滅多に会える機会ってないんだよなー」
「そうだね…」
教室へ向かうとフェトと新しく友達になったサイアが話していた。
「おはよう!アレス!!」
「おはよう、アレスくん!」
「おはよう!」
いつものように返事を返す。
何気ない話で盛り上がっていると教室の入り口からエリス先生が来た。
「お前ら座れー!!これから話すことは3日後に控えた。魔物退治訓練の概要を話すからちゃんと聞けよー!」
高々とエリス先生は魔物退治訓練(MTK作戦)の概要を話す。
「3日後、我々は迷いの草原にてゴブリンとウルフを討伐する。その上、当日はBランク冒険者の方々がお越ししてくださるそうだ。当日は失礼のないように!後、武器や防具は持参なので持ってくるように!」
3日後に控えたクエスト訓練の内容を話し終えると、エリス先生は職員室へ戻った。
「武器、防具は自分達で持参だってよ!何持っていく?」
「アイアンソードにアイアンプレートを持ってく予定だよ、僕は!」
「俺はそこまで良いもの買えないからな〜!俺は短剣にフード付きのマントかな〜!お前はどうなんだアレス?」
···この世界で一般的な装備は短剣にフード付きのマントなのか、だが俺は短剣よりロングソードの方が使いなれているし、どうするべきだろう?
「俺は…まぁ金無いから安い武器や防具揃えて行くよ!」
···カーン
鐘の音が学院の建物に響き渡る。教室では授業が始まり、生徒達は授業を真剣に受ける。