第122話 勇者、森の奥地へと入る。
何故かは分からないが僕は頼りにしていたイザナミと会話することが出来なくなった。
頭にはイザナミが最後に伝えようとしていた言葉がこびりつくように残っていた。
イザナミは何を伝えようとしていたんだろう···。言えることとしたら、この周辺にいるモノノケはドッペルゲンガーと魔竜の2匹······。イザナミの言葉が正しければ、この森にはドッペルゲンガーがいて、魔竜はおそらくラルリットの商業処にいるんだろう···。
神黒はイザナミの言いたかったことがどんなことなのか考えていた。そのため、前を見ていなかったのか、目の前の障害物におもいっきりぶつかった。
「イッター!!」
「イッテー、何だ?」
神黒は考えるのを止め、ぶつかったものに意識を向けた。
「クレハさん!?」
「神黒くんじゃないか!?」
「なぜここに?」
「それはこっちのセリフだよ神黒くん!こんな深い所まで何の用で?」
「この森にいると言われるモノノケを退治に来たんだが······じゃなくて、今ここラルリットの防衛団によって立ち入りを禁止されているはずだろ!」
「そうなのか!!だから、森に来る村人が少なかったのか······」
「だから、どうしてここにあるんだ?」
「まぁ、私は神黒くんたちと別れてからすぐにペトム村の調査を行うためにこの森へ来たんですよ~」
「エッ!?あれって1週間前じゃなかったっけ······?」
「時はすでに1週間を経っていましたか···」
クレハはどこか遥か彼方の方向を向いて、おでこに右腕をかざした。
━━━キキキー!·········。
━━━グララー!!
突然、悲鳴に近い声と嘲笑うような声が同時に聞こえた。
「何の音だ?」
「何の音でしょうね···。行ってみます?」
クレハは興味本意に悲鳴の聞こえた方向へ走り出した。
「クレハ〜!1人じゃ何も出来ないだろー!」
「なら、神黒くんが私を守ってくれよ~」
神黒はクレハを追いかけ、森の奥地へと足を踏み入れた。
闇の邪気は奥地に行くにつれて増していき、一歩前進するごとに心臓を掴まれる感覚が神黒たちを襲う。
おさまらない動悸を我慢し、神黒たちはクレハの下へ向かうのであった。




