第116話 勇者、謎の研究者と出会う。
険しい山道を馬車に揺られながら進む。シドールから北東に位置するペトム村。
広大な草原に囲まれている一際離れた場所にポツンと存在する村。そんなペトム村では高級食材として扱われるホーンブルの飼育が盛んで、毎月のように王宮に供物として渡されるほどだ。
そんなペトム村では今、王都に高級食材であるホーンブルの肉が届かない事件が起きている。そして、その真相を探るために神黒たちはペトム村へと馬車で向かっていた。
「お前さんたち、こんな遠くまで何をしに行くんだい?」
「ペトム村に行くんですよ······」
その言葉を神黒が発すると馬車の運転をしていた者が険しい顔で言葉を返す。
「兄ちゃんたち、それは都合が悪い時に来てしまったね···。今、ペトムに行くのは止めた方が良いぞ。今、あそこでは謎の感染病が流行っているんだ。ペトム村に行くのは進めないぜ···。今からでも引き返すなら帰りは無料にしてやるぜ」
「お心遣いありがとうございます。でも、私たちも依頼を受けて来ているので王都に物が来ない原因くらいは調べるつもりです」
馬車の運転手は神黒たちの表情を見て、反対するつもりは無さそうだ。
「······せめて健在であることを祈ってるよ。じゃあな······」
馬車の運転手はペトム村から少し離れた場所に僕らを降ろし、王都へ向かって行くのであった。
「さて、馬車の運転手の話が正しいならペトム村には何らかの事件が起きている。皆、気をつけていこう······」
謎の感染病が流行っているペトム村に神黒たちは向かった。
ペトム村に着くと真っ昼間だというのに誰一人露店を開いている様子が無かった。
神黒たちは露店の一つもないペトム村の中へ入り、一軒ずつ家を回って行く。しかし、住民どころか住んでいた跡さえ残っていない。
「これは予想よりも厄介そうだな···」
神黒たちは馬車内で聞いた村の外れに住むと呼ばれている魔術師と呼ばれる者のいる館へと向かう。
「すみませ~ん。誰かいますか~?」
神黒の言葉に返事が返される様子はない。
━━━ドッカーン!!
突然、館の右側が崩壊し始めた。
「痛ったー!!また失敗しちまったよ。この世界だと術式とかいう使いにくい魔法で研究しなきゃいけないからめんどくさいし、失敗しちまうな~!」
「すみませ~ん!!」
「今度は火炎術式と風術式を連合させてみるか······」
━━━ドッカーン!!
今度は館の左側が崩壊し始めた。残ったのは正面玄関のある正面だけとなった。
今度こそはあの人に声が届くはず!
「すいませ~ん!!」
魔術師はようやく神黒の声に気付き、寄って来たのだった。




