第113話 勇者、王様と会う。
「名鍛冶師の弟子なら、信じても良いかもな!」
神黒は名鍛冶師という言葉からドラントのことを思い出す。
「お前さんの刀を見せてくれないか?」
武器屋の親方に言われた通り、神黒は亜空間にしまっていたドラントが改良した影之一零式・改を手渡した。
「おぉ〜!!これは業物だな。元々妖刀だった刀に更なる力を元の力に馴染むように叩き込んでいる。こんなこと出来るの世界に10人もいない···」
刀を驚きの眼差しで見ている武器屋の親方の手は震えが止まらない。
「もう良いですか?」
「あっ!?すまん、少し取り乱してしまったようだ···。あぁ、大体の構想は浮かんだから出来を期待しといてくれ!」
親方は影之一零式・改を神黒に返し、早速工房へ籠り始めた。
「これは買い物は出来なさそうだな、別の武器屋を探しに行くか···?」
明たちが親方の武器屋を出ようと扉に手を置いた時だった。
「待ってください。夫は籠っていますが私が代わりに店番するので防具や武器を買ってくれませんか?」
必死そうに親方の妻は僕らを呼び止めた。
「私の夫は弟子も取らないし、ろくに防具や武器を売らないんです。毎回ごねて侍に売ろうとしなくて、なぜ武器屋なんて始めたんだろう······?だから、見るだけでもしてもらえないですか!!」
深刻そうだったため、神黒たちはもう少し武器や防具を見ることにした。
店内に置かれている武器や防具は全てが一級品でドラン国の兵士が身に付けていた武器や防具よりも格段に性能が高い。なぜこの性能の高さで店内が賑わっていないのか不思議に思う。
「こんなに性能の高い武器や防具を買っても良いのか?話を聞いている限り、侍に武器や防具は一切、売っている様ではないが······」
「良いんです!そもそも、ろくに売らないくせに鉱石を買って、新しい武器や防具を作るばかり、少しぐらい痛い目に遭わないと気が済まないわ!!それにガルシュが始めて自分から作りたいと言ったあなたの仲間なら許してくれるわよ!」
「それで良いなら、良いんだが······」
神黒たちはガルシュ・リーグの武器屋でまともな武器や防具に新調して、店を出るのであった。
「少し武器屋に居すぎたようだ!もうこんな時間になっているじゃないか!?」
時刻は王様に謁見する10分前となっていた。神黒たちは急ぎ城へ向かい、どうにか謁見する5分前には城の門をくぐることが出来た。
「王様ってどんなお方なんでしょうかね?」
「メルティアの話では国民思いのある優しい人と聞いたことはあるけど、他のことは何も···」
メルティアのお父さんがどんな人なのか、想像を膨らませていると豪華な鎧を纏った騎士が僕らを王様のいる玉座まで案内してくれた。
「御勇者一行、到着しました!」
「入ってよい···」
渋い声に神黒たちは一瞬、緊張感を漂わせる。
「失礼致します!!勇者殿、お入り下さいませ。王が玉座にてお待ちしております」
緊迫感を感じながらも一歩一歩足を進めていく。
王様のいる間へ足を踏み入れた神黒たちは玉座に座る王と目が合う。
玉座に座る王様は重々しく、僕らを映す視線は冷めているかのように冷酷だった。外の賑やかさを忘れるほどに玉座の間は静かで緊迫感がある。
「騎士団団長エンリウッド、勇者御一行をここまで案内してくれてありがとう。下がってよいぞ」
「ハッ!」
エンリウッドは王様の指示の通り、速やかに玉座の間から退出する。
「よくぞ来てくれた······転移者殿!!ありがとうな家のメルティアの呪いを解いてくれて、いやあれからとても絶好調で父親ながらとても嬉しいよ〜!!ちゃんと報償金も渡すから、待っていてくれよ!それより、どうやってかの有名なモノノケ、大山蛙を倒したんだい?どう倒したか検討もつかないよ!教えてくれ勇者殿!!」
この場にいたすべての者がこう思っただろう。王様ってこんなに喋ってたっけー!?
王様の明るい質問攻めは軽く神黒たちの頭の思考をパンクさせるほどに多く、想定外だった。




