第107話 勇者、旅に出る。
「道化師たちには気を付けろよ、あんまり情報を手に入れられてないから」
神黒たちは北西にある終焉の道化師の住処である沼に来ていた。
「神黒さん。この辺に本当にいるんですか?灯りの1つもない洞窟ですけど···」
「複数の人からもらった情報でもあるし、何よりここに楓たちの両親がいるのは確かなんだ!」
楓たちは自信満々に話す神黒を疑問に思ったものの、着いていくのであった。
時は既に数時間が経っていた。普通の洞窟と全く変わらない景色に少しづつ心配になっていく神黒一行。
何とか長く暗かった細い道から光が見え始め、洞窟とは思えない盛り上がりをしている道化師たちの賑わいを感じられるようになった。
「お前ら〜!聞け〜!!今からお楽しみの時間へと移る。若い女を持って来~い!」
大声で話す者の命令に従う部下たちは牢屋の中から若い女だけを連れ出し、首輪をはめる。
「おい、お前ら!我が村の子に何をするきだ!!」
牢屋の中から白髪白髭の村長らしき者が異議を申し立てる。
「···おじさん。私の許可なく話しかけないでくれるかな!!お前らそいつをやれ」
部下はその者の命令通りに村長を牢屋から出して、腰に掛けた短剣で村長に斬りかかる。
「何をする、止めろ止めてくれ·········」
━━━ガタン······。
そこには胴と頭が離れた村長が転がっていた。
「うっ、キャャーーーー!!!」
牢屋の中だけでなく、外に集められた若い女たちも喉がはち切れるほどの絶叫を放った。
「そうだ、そうだ。この村長の心意気に免じて、今から何をするのか教えてあげるよ!簡単なことさ!蛙様の生け贄になる者を選び、残ったものが我ら終焉の道化師が残らず食べるのさ···」
外道よりも悪い人間たちを目の前にし、村人たちは絶望感に浸るしかなかった。
······あいつら、絶対に許さねぇ!人間を何だと思っているんだ。絶対にこの手であいつらを地獄に落としてやる。
······何なのあいつら、良心的な心を持たないの?私が絶対に村の人々を守ってみせるわ!
「これ以上はヤバそうだな楓!」
「行きましょ!」
神黒と楓は息ぴったりで足を前に踏み出し、走り始めた。
神黒たちは大気一体を使い、体を空気に馴染ませる。敵は突然の奇襲を掛けられていることに気付かない。
「お前らの人生は我ら終焉の道化師と大山蛙のおかげで特別なものになるのだ!喜べ下民が!やれ部下···」
「······」
首領の命令に返事を返す者なし、首領は不思議に思ったがあまり気にしなかった。
「おい、もたもたしてんじゃねぇ!早く持って来い!」
首領は部下を叱るため、後ろを向くとそこには景色全体が誰かの顔で埋め尽くされる。
「うわっ~~~!!」
「部下よ!早くこいつらを追い出せ!」
返事をする者は現れなかった。
「無口になるな!早く俺を助けろカス供が~!」
「部下ならいねぇ〜ぜ。特に伸しちまったもんだからよ!」
「お前らは誰だ!?こんなことをして良いと思っているのか!?蛙様にどうさせられるとやら」
「そんなこと、知らないわよ···。敵になるなら本気で潰してやるわ!」
首領らしき者はポケットから紋章の付いた袋を取り出し、唱え始めた。
詠唱を終えると魔法陣から巨大な蛙が現れたのだった。




