第104話 勇者、村へ旅立つ。
神黒たちは扉に挟まれていた手紙を手に取り、中の文章を読む。
【この手紙を読んでいるのはおそらく我が娘たちだろう。
楓と桜よ。元気にしているか?きっと神黒さんがいるから元気にしているのだろう。
ここまで来ているということは私の手紙の暗号を解いて、伝言が届いたのだろう。良くやった楓と桜······】
手紙の続きにはことの発端となぜ娘たちに救難信号を送ったのかを事細かに書かれていた。
村人が盗賊団らしき影に誘拐されていたのか。しかもこの手紙の時期的にまだ、楓たちの両親くらいしかその事を分かっていなかったんだろう。
「ここ付近で盗賊団といったら、確か西の祠を拠点にしている風乱の鷲か北の洞窟に住む氷結の風車のどちらかだが、どちらも誘拐をすることだけは絶対に無いんだよな~」
なぜこうも盗賊団の事に詳しいかというと、この世界には盗賊処という場所がある···らしい。言わば、裏ギルド的なものだ。侍処の受付によると盗賊処は国に認められていない非公認のギルドで、窃盗や暗殺、裏取引などの仕事を請け負っているらしい。だが、盗賊処のルールには5つのルールがある。そのルールが破られた時、破った盗賊または盗賊団は盗賊処の精鋭部隊に暗殺されることになっている。そのルールの中には誘拐をしてはいけないという内容のモノもある。そのため、盗賊処に所属する盗賊団は誘拐だけは絶対にしないのだ。
「おそらくだが、何者かが風乱の鷲や氷結の風車などの盗賊団を装ったんじゃないか···?」
「そうなると今回の犯人は盗賊団ではない者ということ······!」
「なぁ、おかしいと思わないか?なぜ立て続けにこの村に厄が降り注ぐのか···」
「まさか、そんなことが出来るの!モノノケを操れることが出来る者がこの世界にいるの!?」
「おそらくだが···」
楓たちは相手にしているものがとてつもなく恐ろしいものということに怖じ気付く。
「大丈夫かな···」
神黒は不安気な楓たちを見て、優しく呟いた。
「楓たちの両親は絶対に生きてる。助けに行こう!」
「···うん!」
神黒たちは謎の誘拐事件の犯人を見つけるために旅に出るのであった。
━━━近隣の村周辺。
楓たちの故郷から数km離れた場所にある村、影宝村。この村では貿易が盛んで良く楓たちの故郷の村人も交易をしたようだ。
神黒たちはこの村で働く村人たちに怪しい者たちを見つけなかったか聞き回った。
中々良い情報が得られない中で、村外れにある小屋にいた謎のオーラを放つおじいさんが良い情報を持っていた。
そのおじいさんによると最近、おじいさんの故郷の村でも同じような誘拐事件が起きているらしく、その犯人として挙げられていたのが、北西の沼に住む終焉の道化師の仕業ではないかと言っていたのだ。




