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迷宮学園の落第生  作者: 桐地栄人


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第八十五話 新幹線

迷宮の魔物の階層移動。


イレギュラーモンスター。


ここ数ヶ月で世界各地で起きている災害。


その中でも中央迷宮13層で起こったイレギュラーモンスターであるシーサーペントの出現は世界に激震が走った。


世界で確認されているイレギュラーモンスターの最大階層は12層。しかし、中央迷宮にて18層もの階層を跨いだイレギュラーモンスターが確認された。


偶然その場にいた生徒達によってシーサーペントの撃破が確認されたが、通常であれば多数の死者が出てもおかしくない非常事態であった。


それ故に、昨今の迷宮探索に対する、批判的な声が高まっていた。


特に問題視され槍玉に挙げられたのは、やはり未成年の学生達を迷宮という命の危険のある場所に入れている迷宮学園である。


度々テレビでは、迷宮の埋め立てや迷宮探索活動否定派の反迷宮活動団体による反迷宮活動が取り上げられていた。


しかし、電気エネルギーや車を動かすエネルギーなど、世界中の様々なエネルギーが迷宮から産出される魔石によって賄われている現在、迷宮の閉鎖を行うことはこの日本においても大きな混乱をもたらすものであった。


シーサーペントの出現以来、テレビ、ネット、掲示板、SNSなど様々な場所で白熱した議論が巻き起こり、様々な賛否をよんでいた。


そんな中、イレギュラーモンスターや迷宮の話題になると、必ずと言っていいほどとある一人の男の名前が上がっていた。


「ザ・ワン」


1レベから上がらず、ステータスが変化しないのにも関わらず31層に出没するシーサーペントすら倒す謎の強さを誇る世界で唯一無二のただ一人の一。


今や世界中から注目されるその謎の学生、小鳥遊翔当人はしかし、そんなことは気にする様子もなく、課外実習という名の旅行を楽しむべく、新幹線に乗り山梨県へと向かっていた。




ーー。


課外実習初日、東京から山梨への新幹線での移動の最中、俺は対面座席の窓際でスマホをいじっていた。


俺の横には何故か星空が座っており、前の席二つには如月と文月が座っている。


「ワン君、何見てるの?」

「ん?ああ、今週の旅行の日程表だ」


そう言って、今回の旅行のために作った日程表を星空に見せる。それを見た星空が驚きの声を上げる。


「うわー、結構ちゃんと予定表作ってるんだねー!」

「そうだな」


せっかくの無料での旅行だ。無駄には出来ない。事前にちゃんとお店なんかも調べてあるし、ルートも考えてある。


「ちゃんと楽しみにしてるんだねー、ワン君!」

「まあな」

「意外ね。あんた、旅行に行っても旅館でぐーたら寝てるタイプだと思ったのに」

「あはは、ふーちゃん私と同じこと言ってる!」

「せっかく旅行にきて旅館で寝る?家でも出来るのに?意味がわからないな」

「まあそう言われればそうなんだけど」

「旅館だと寝心地いいみたいなのってあるよねー!」

「そうか?」

「そうそう!」


そんなものか?

旅館で泊まるなんて小学生以来だから分からないな。


何もせず旅館にいるくらいなら外に出て観光するさ。美味しいものも食べたいし、自然が多いので色々見て風情を感じたり、温泉巡りというのもいい。


まだ見ぬ山梨県に想いを馳せていると、俺の予定表を見ていた星空が顰めっ面になる。


「ちょっと待って……これ、迷宮に潜る時間、一日三十分しかないよ!何で!?」

「何でって、学校側からの課題なんてそれだけあれば足りるだろ」


例年の学園からの課題を調べたが、班ごとに指定された階層の魔石を幾つ集めろ的な課題だったり、指定の階層の採集アイテムを取ってこい的な課題だったりする。


まだ課題内容は発表されてはいないのだが、俺はFクラスなので、Fクラス用の課題をやることになる。それなら軽く三十分マラソンして指定のアイテム集めたらそれで終わりだろう。


「いやいや、一応この課外実習の目的は学園外の迷宮を探索する事だよ!それなのにワン君は……もう!」


何故か星空が頬を膨らませているが、俺は気にする事なく星空からスマホを取り返す。


「あっ!」

「迷宮には潜る。課題はちゃんとやっておかないと留年するかもしれないからな」

「それは当たり前でしょ!そうじゃなくて

、もう……」


星空が拗ねている。星空は相変わらずよく分からない。星空と俺はパーティーが違うし、課題内容も違うのだから、俺が迷宮に潜ろうが潜らまいが星空には何の関係もない。


だから俺が迷宮に潜らないことを星空が拗ねる理由が全然分からない。


俺の前の二人もファッションの話をしているのかと思いきや、迷宮の装備を新調する話をしているし、後ろのクラスメイトからはこれからいく迷宮で出る魔物の倒し方を議論する声が聞こえてくる。


山梨県といえば富士山という絶好の観光スポットがあり、風景のみならず、緑豊かな自然、美味しい食べ物、バリエーション豊富な温泉などがある日本が誇る有名観光スポットの一つだ。


それにも関わらず、俺の周りの生徒達はそんな事には目もくれずに迷宮の話ばかりしている。


学園の目的は、確かに課外実習で彼らは正しいのだが、こういうのって実習という名の旅行みたいなもんじゃないのか。


林間学校みたいな勉強とは名ばかりの実質遊びに行くみたいなやつなんじゃないのか。


何で観光放って真面目に迷宮の話とかしてるの。


「はぁ……」


誰かと話したいとか語り合いたいわけではないのだが、どうにもそりが合わない。


この学園の生徒は本当に迷宮が好きらしい。迷宮に全く興味のない俺は少し居心地の悪さを感じる。


「はぁ……」


星空が前の二人の会話に混ざって、迷宮のおしゃれな防具やアクセサリーの話をしているのを聞きながら、俺は駅までの道のりを窓の外を眺めて時間を潰した。


そして、泊まる宿へと辿り着き、課題を言い渡された俺は衝撃の事実が知らされることとなる。

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