表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮学園の落第生  作者: 桐地栄人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/148

第七十四話 試験のパーティー

それから半月が経過した。


特に変わり映えのしない毎日だった。昼は星空達によって模様替えされたクーラーのある部屋でゴロゴロしながら過ごし、放課後は星空や文月達と迷宮に潜ったり、ソロで潜ったり、何もせず寮でゲームしたりと言う生活を送っていた。


レベルは昨日、二十層のオークジェネラルを倒した事で18レベにまでなった。スキルのレベルは変わらないが、ステータスはどんどん高くなり、物理攻撃力に至っては32レベの相園先輩を越す程だ。もちろん魔法職の相園先輩に物理攻撃力で勝ったところで何の意味もない。


だが、近接で戦う時も俺のステータスを使うことはない。


何故なら、星空の助けもあり、無事剣術部主将にして、『剣聖』のスキルを持つ赤崎研磨のステータスを手に入れられたからだ。


魔法攻撃力以外はどれも40越えと物理において平均的に高いステータスを持ち、剣聖によるパッシブバフ効果により、実質50越えといっても過言ではない。


貯金という名のアイテムも部屋に溜まってきており、そろそろベッドの下に隠すのも難しくなってきた。


後二週間で夏休みだ。


特に予定はないが、とりあえず最近また出た新しいゲームを幾つかクリアしたい。


そんなことを思っていると、この「企業案件PR部」の部室をノックの音が響く。


「……」


俺は星空達が買ったフカフカのソファーに横になりながら無視をする。


「失礼するわよ」


しかし、許可も出してないのに女子生徒二人が部室に入ってきた。


文月と如月だ。


「どうした?」

「どうした、じゃないわよ。今日何で遅刻したのよ?」

「昨日二十層でオークジェネラルとやり合ってレベルが上がってな。連日の迷宮探索で疲れたから一限と二限はサボった」

「連日ってあんた、週に四回しか迷宮行ってないじゃん」

「しかも小鳥遊、また一人で二十層に行ったの?いくらあんたでも危ないんじゃない?」

「余計なお世話だ。安全マージンは十分とってる」


なにしろ赤崎のレベルは35だ。ぶっちゃけまだまだ余裕がある。一気に上の階層に行かないのは、順番に階層を上がって経験を積んでいるだけだ。


「ふん。まあ、あんたがいいなら別にいいけど……」


じゃあ何で聞いたんだ。止められても行く。


「それにしても今朝のあれ、流石に言い過ぎじゃないか」

「ぐっ……」


今朝、というか昼に近い時間だが、坂田が俺のことを馬鹿にした時、この二人が怒鳴ったのだ。

その時、彼らだけではなくFクラス全員を落ちこぼれとなじった。完全に関係ないFクラスのクラスメイト達にも飛び火させるのはやりすぎだと思う。

坂田が引いたからいいけどまた争ったら面倒なことになる。


「落ちこぼれって。そこまで言わなくてもいいだろうに」

「そ、そうだけど……って、あんたが何も言い返さないからでしょ!ここ最近ちょっと目に余るわよ、あいつ」

「人のせいにするな」


確かに文月の言うとおり、日を追うごとに坂田は俺に構ってくるようになってきていた。

金剛をボコった噂がたってからはしばらく何も言ってこなかったんだけどな。


「それに別にどうでもいいだろ、あれくらい放っておけば。実害ないんだし」

「聞いていてこっちが不快になるって言ってるの!」

「は?何で?」

「何でって……。それは……」

「それは?」


言い淀む文月達に対して俺はさらに質問する。


「……とにかく!ああいうのをあんまり調子に乗らせないで!またあいつらが騒いだら怒るからね!」

「何で?」


訳がわからない。どういう事だ。何で俺のことでお前らが怒るのさ。


「はぁ、あんたは分からなくていい。いってもどうせ分からないでしょ」

「そうか?別にいいけど、言い過ぎるなよ」

「分かってるわよ」


言っても分からないって、言わないと分からないだろうに。まあ気をつけるならいい。この前みたいなのはもう勘弁だ。

そう思っていると、文月が話題を変えてきた。


「それで、あんた期末試験どうするの?」

「どうするの、とは?」


期末試験って期末テストのことだろ?

ならテストは個人技だ。この二人には何の関係もない。


「違うわよ!この学園の期末試験って言ったら迷宮攻略テストに決まってるでしょ!」

「は?何だそれ?」


そんなテストの名前、聞いたことない。


「各クラス毎に到達階層や魔石やアイテムとかを点数化してその点数で成績が決まるのよ」

「そんなものがあるのか」

「そうよ。それでその課題、パーティー課題なのよ」

「ああ、なるほど。じゃあいい感じに嫌がりながら俺とパーティーを組んでくれ」


やっと一ヶ月前の約束の効果が発揮されるわけか。


「嫌がりながらって。正直もう隠す意味もあんまり感じないんだけど」

「そうそう!周りのクラスメイト達も怪しみ出してるしさー」

「だからって別に公にする必要はないだろ。なあなあにしておけばいい」


俺も文月達もクラスメイトと仲良く話すような人間ではない。俺も度々クラスメイト達からパーティーの誘いが来ているが断り続けている。

この二人にも来ているらしいが断っていると聞いた。


まあ、クラスメイトとかどうでもいいからな。暴力沙汰さえ起こさなければ退学しても構わない。


「なあなあ、ねぇ……」

「キモい視線を向けられる私達の身にも……って、あんたには分からないわよね」

「……?」


キモい視線って何だ。ねっとりした視線というやつか。そんな視線、俺は向けられたことないぞ。


「それで、期末試験のパーティーは組むのね?」

「組む」

「そ。分かったわ」

「じゃあ適当に嫌がっておくけど、怒んないでよね」

「当たり前だ」


自分で頼んでおいてやられたら怒るってどんな奴だよ。そもそもその程度で怒ったりしない。


「それじゃ」

「ああ」


そう言って二人は出て行った。ここはこういう密会の場としても丁度いい。まあ逆を言うと人が遠慮なく尋ねてくるようになったのだが。


この半月間で何十人もの入部希望者が居て、当然全てを断った。これ以上人を増やす必要性もするつもりもないのだから当たり前だが。


次の日一限目が変更され、HRになった。


教壇にはこのクラスの担任、橋下が立っていた。


「皆も知っての通りこの学園では、学期末毎に迷宮探索試験を行う。基本的には四人一組のパーティーで行う集団戦だ」


あれ、四人一組?

聞いていた話とだいぶ違うんだけど。

後一人どうすんだよ。


俺が如月達を見ると、二人はチラリと俺を見て目を背ける。


今年の一年Fクラスは三十二名。確かに割り切れるが、五人パーティーや六人パーティーのクラスもいるだろう。

それがありなら三人パーティーも可能だと思うが。ならば四人一組、とわざわざ言う必要はない。


生徒達がざわめき立っている。橋下はそれを無視して、さらに条件を告げる。


「それと、パーティーはこちらで決めさせてもらった」

「えー!」


これには生徒達も一斉にブーイングをする。


「聞いてないですよー!」

「そうですよ!私達いつも五人パーティーで探索してるのにこんな急に言われても」

「急に、ではない。迷宮探索テストを行うのは九月の中旬。あと二ヶ月はある。連携を考える時間はたっぷりあるだろう」

「まあ確かに時間はあるかもしれませんけどー。場合によっては……」


その女子生徒はそう言うと、チラリと文月達の方を見る。


「あんまり仲良くない人とパーティーを組まないといけないってことですよね?」

「そうだ。君達も探索者を目指すなら他の生徒のスキルやそれらとの連携を知っておくべきだ。場合によっては複数の探索者パーティーによる連合(アライランス)を組む場合などもある。そうなった場合、好きではない者とでも命を預ける仲間として接し、連携しなければならない。今回はその練習と思ってくれ」


橋下はそこまで言うと、手元の液晶を操作する。


「じゃあパーティーを発表する。第一パーティー弓塚、田中、宮本……」


橋下がどんどん名前を呼んでいく。

呼ばれた生徒は返事をして、自分と同じパーティーのクラスメイトを見る。


俺と文月達の名前はずっと呼ばれない。


「それじゃあ最後の第八パーティーは如月、文月、小鳥遊それと……」


そう言うと、橋下は一人の男子生徒を見て言った。


「坂田!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
主人公の自前のステータスが5LVと6LV出てきますが、この成長率考えたら18LVでやっと相園先輩の物攻超えた〜みたいな文は違和感しかないのですが… 本人のステータス全然出てこないのであれですが、5→…
まあ勝手に決めるなら一番上と一番下くっつけるよな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ