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迷宮学園の落第生  作者: 桐地栄人


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第四十一話 招待

次の日、一限に余裕で間に合う時間に教室に到着した俺は、特に挨拶などもされることなく一人で席に着く。


「ねぇねぇ聞いた?2年Fクラスの先輩と1年Sクラスの金剛君が決闘するって!」

「聞いたよ!どっちが勝つと思う?」

「流石に先輩でしょ!私たちより1年も長く迷宮に行ってるんだから!」

「えー、でも金剛君って剣王持ちでしょ?金剛君が勝つと思うなー」


昨日の話がもう広まっているみたいだった。誰が広めたのかね。


「ふわぁ……」


興味のない俺は欠伸をしながら一限の準備をしていたのだが、クラスメイト達は興奮を抑えきれないようだ。


「やっぱり流石に先輩に勝って欲しいわ!」

「だよなー。金剛ってやつ、知ってるけどいけすかねぇっていうか」

「態度が露骨に俺ら見下してるよな」


坂田達がでかい声で友人達と話している。


俺は気にせず準備が終わったので、始まるまで背中を丸めて顎を机の上につけ、スマホで動画を見る。


その間も坂田達の話は止まらない。


「あいつ、女子にばっかり声掛けてパワレベしてるらしいぜ!」

「下心丸出しじゃん!はっはっはっ!」


そう笑った時だった。


ドン、と言うでかい音がFクラスの教室に響き渡る。そちらをチラリと見ると、金剛が右手の拳を教室の壁に当て、左手をポケットに突っ込み、睨みつけるようにFクラスを見回していた。


「うぃーす!今噂の金剛でーす!」


金剛が笑顔なのに気怠げな声音で自己紹介している。そしてゆっくりと坂田達に近づくと、その肩にガッと両手でのしかかる。


「ひっ……」

「うっ……」

「君達さぁ、俺の噂をしてたみたいじゃん?」

「いやっ、あの……」


坂田達はしどろもどろになっている。そんな坂田達を金剛は腕でホールドしており、力が強いのか坂田達が呻いている。


「今、俺気分いいからさ、別に構わねぇぜ?好きなだけ俺の噂をしてくれれば」

「いっ、あのっ」

「いや、あの……す、すみませんでした」

「いいっていいって」


怯える坂田達に対して、金剛は笑っている。だが、次の瞬間、二人の顔を自分に向けさせ呟くように囁く。


「むかついたら決闘挑むだけだからさ」

「ひっ……」

「うっ……」


そう言って、二人の肩から腕を離し、今度は興味なさげにスマホをいじってる文月達のところに向かう。

そして、すぐ近くに行くと、今度は優しく手を肩に置く。


「やっほー奈々美ちゃーん」

「気軽に肩に手を掛けないでくれる?」

「はっはっはっ、おいおい、一緒にパーティー組んでるって言うのに冷たい女だな」


冷たい事の何が面白いのか、金剛は笑う。それを見て、前の席に座っていた如月が後ろに振り返り、棘のある声で金剛を睨みつける。


「Fクラスに何の用?そろそろ一限始まるんだけど」

「お前も相変わらずだな、双葉。くっくっくっ、ま、今日の目当てはお前らじゃない」


そう言うと、文月の肩から手を離し俺の元まで歩いてくる。


そして、スマホの動画を見ている俺のすぐ側まで来ると、見下す様に声を掛けてくる。


「おい、ザ・ワン」


何だろ。こいつにそのあだ名で言われるとちょっと気持ち悪いな。まあいいけど。


「何だー?俺に何か用かー?」


俺は動画から視線を外さずにだらけた姿勢で聞き返す。


「……相変わらず舐めた野郎だな、てめぇはよぉ」


俺の何かが気に障った様で、そう言ってくる。

君は何にイラついてるんだい?


「まあいい。てめぇ放課後、第二戦闘訓練室に来い」

「放課後はゲームする予定だから無理だ」


昨日迷宮に潜ったから今日はお休みだ。最近発売されたゲームを買ってまだやってないのでそちらを優先させてもらう。


「てめぇの意見なんて聞いてねぇよ。いいから来い。頭の悪いお前でも分かる様に雑魚どもに身の程ってやつを教え込んでやるから」


一方的にそれだけ言うと、金剛は身を翻し、教室から出ていく。


「いいか!ザ・ワン、テメェは絶対こいよ!あと奈々美と双葉も絶対来いよ!」


扉から出る直前、念を押す様に叫ぶ声が聞こえてくる。


「……」


金剛が去ったFクラスは誰も何も言えず、息を潜める様にシンとしていた。


「ふわぁぁぁぁ」


そんな中、俺は欠伸を一つして動画に視線を戻す。


全く、勝手なやつだなぁ。そんなに自分の見せ場を俺に自慢したいのかよ。何、俺に恋でもしてるの?

ノーセンキューなんだけど。


キーンコーンカーンコーン。


同時にチャイムが鳴り、俺はスマホをしまい、教科書とノートを開く。


その日の午後、いつもの場所で寝転がっていたら、如月がやって来た。


「お前もいい加減しつこいね」


俺は梯子を登って俺を見下ろす様に立っている如月に呆れた様に言う。

どんだけ俺に構ってくるの。放っておいて欲しいんだけど。

如月は俺の言葉に露骨に不快な顔をする。


「あんた、心配して来てやったって言うのに失礼すぎない?」

「何を心配してるんだ?お前らが心配する様なことなんて何も起きてないぞ」

「金剛に目をつけられてる事に決まってるでしょ!あんた、本当に頭おかしいんじゃないの?!」


酷くない?

別に俺は普通だろ。金剛がFクラスの教室にまで来て俺に自分の見せ場を見せたがってる。


ただそれだけ。心配する様なことなんて何もない。


行かなかったら後で何か言われるかもしれないが、まあそれは仮病でも使おう。ゲーム依存症とか言っておけば大丈夫だろ。


「それで、あんた、見にいくの?」

「金剛の決闘か?行かない。寮でゲームしたいからな」


金剛、すまんが俺にいいところを見せようとしてもダメだぞ。お前の恋は実らない。


「ゲームって……。あんた、行かなかったら後で何されるか分からないわよ」

「言い訳はちゃんと考えてある。お前が気にする様なことじゃない」

「言い訳って……そんなのが通用する人間じゃないわよ?」

「安心しろ。作戦は考えてある」


俺は余裕の態度で如月に言う。そんな俺の様子を見て、今度は如月が呆れた様だ。


「作戦って……あんた、本当に訳わからない。心配して損した」


そう言うと如月は校舎に帰って行った。


その後ろ姿を見ながら俺は思う。


如月が俺を理解出来ないのは当たり前だ。人は他人を理解出来ないのだから。


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