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迷宮学園の落第生  作者: 桐地栄人


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第二十四話 魔力量

それから二時間後。


「ギャギャ!」


こちらに走ってくる二体のホブゴブリンに対して、指を突きつけて魔法を唱える。


「サンダーボルト」

「ギャー!」


断末魔を叫びながら黒いモヤとなるホブゴブリンを振り返ることなく、もう一体が走ってくる。


俺は鉄の剣を抜き、ホブゴブリンに向かっていく。


「ギャギャ!」


横薙ぎをしてくる石斧を鉄の剣で防ぎ、それを押し戻しながら頭を下から斜め上に薙ぐ。

「カッ……」


鼻から上が分断されたホブゴブリンは、膝から崩れ落ち倒れ込む前に黒いモヤとなって消えていく。


五体のホブゴブリンを蹴散らした俺は魔石を拾いながら、息切れみたいな症状を起こしている星空に声をかける。


「はぁはぁ」

「大丈夫か?そろそろ帰るか?」

「うーん、ごめん。もうそろそろ限界かも。撃ててあとサンダーボルト二回」

「そうか。じゃあそろそろ引き上げるか」

「うん……っていうかワン君が全然余裕そうなの納得いかないんですけど!」


星空が叫ぶ。ホブゴブリンが寄ってくるから叫ぶのやめた方がいいぞ。


「そんなこと言われても。まだまだ行けそうなんだから仕方がない」

「わかった!痩せ我慢してるでしょ?絶対痩せ我慢してるでしょ」

「してないぞ。サンダーボルト、サンダーボルト」


俺は懐中電灯を上に放り投げ、両指から二本のサンダーボルトを飛ばす。サンダーボルトは狙い通り直線上に飛んでいき、その線上にあった木を黒焦げにする。


「よっと」

「……」

「見ての通りまだまだ余裕だ。半分以上は魔力残ってる」


体感だからよくわからないけど、感覚的にはまだまだ全然いける。半分どころか七割は残ってるんじゃないだろうか。


「半分……うそ……」


星空が絶句している。そんな驚くことか。


「私、もう限界なのに……。しかも後半ほぼワン君が倒してたし」

「ああ。キツそうだったからな。気を利かせたんだ」

「ちょっと待って。ワン君の口から気を利かせたとか聞くと感動を通り越して吐きそう」

「酷すぎない?」


ちょっと優しくするとすぐこれだよ。感動を通り越して吐きそうになるな。感動で咽び泣け。


体調悪そうな人いたら気を利かせるくらいするだろ。倒れたらどうするんだ。背負うの俺なんだぞ。本当に酷い言い草だ。


「そんなことよりレベル3の雷魔法、まだ?」


レベル2は撃ち続けても四時間は持つことが分かった。一日の狩りが長くて三時間であることを考えると十分問題ない。


雷魔法は威力も高いのだが、星空曰く、七層の魔物は一撃では倒せないらしい。

ソロで行動する身としては、できるだけ敵は一撃で倒したい。


そう思って聞いたのだが、星空は怒ってしまった。


「無理!レベル2になったのだって六レベルの時なんだよ?レベル3になるなんてずっと先だよ!」

「そうなのか」

「そうなの!」


俺は五レベルでレベル2になった。だから勝手に次は十レベルでレベル3になるものだと思っていた。

言われてみれば五レベル毎にスキルのレベルが上がるなんて保証はどこにもないんだよな。


コピースキル、レベル上がって枠増やしてくれないと困るんだよなぁ。


坂田のステータスは絶対に外せない。そうするとステータススロットが一つしか余らない。


最低でももう一つ、物理系のスキル持っている人間のステータスを持っておきたい。


「もう、本当に勝手なんだから!自分のステータスも教えないくせに!」

「それとこれとは関係ないだろ」

「秘密にし過ぎ!もうちょっと信用してくれてもいいじゃん!」


星空がむくれている。

いや、俺がオーク倒したこと配信で話しただろ。

意図的じゃなくてもうっかりとかもあり得るんだから言わないのは信用云々とは別の話だ。


「まあまあそんなに怒るなよ。レベル上げ手伝うから」

「手伝うって何?やっぱり私よりレベル高いの?」

「いや、そうじゃないけど」


何で怒ってるの。レベルは低いけどステータスは全部高いよ、とか言ったら更に怒りそうだな。やっぱり秘密にしておこう。


「まあそんなに怒るなって。星空の雷魔法、めっちゃ強くて助かってるからさ」

「むー、ワン君に褒められてもあんまり嬉しくない」

「そうかい。ふぁー」


むくれる星空を横目に俺は一つ欠伸をして、地上への帰路につくのだった。

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