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迷宮学園の落第生  作者: 桐地栄人


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第二十話 如月

「ちょっと。昼、顔貸しなさいよ」


教室に入り、自分の席に座った俺は、近寄ってきた如月にそう言われる。


そういえば今日、文月は休んでるな。迷宮産の回復薬があれば骨折なんてすぐ治るから、大事を取ったのだろう。


「ねぇあれって……」

「やっぱり昨日のオークを倒したのって……」


如月が珍しくクラスメイト、しかもレベル1の最弱の男に近寄っていったので周りから注目される。

如月はそんな周りの目を気にする事なく、俺を見ている。


「……」


俺は如月をチラリと見ると返答せず、窓の外を向く。


「フン」


如月は突っかかる事なく自分の席に戻っていった。


そして昼休み。

俺はいつもの場所で建物の縁に座りながら動画を見ていた。今日は星空は来ていない。


久々の一人飯。誰にも邪魔される事なくおにぎりを食べる。はぁ、幸せ。


そんな俺のオアシスに乱入者がやってきた。カンカンと乱暴に階段を上がっており、そして屋上への扉がバンと強く開けられる。


「ちょっと!小鳥遊!いるんでしょ!」


そんな不躾な声が下から聞こえてくる。


「……いるよ」

「ちょっと降りてきなさいよ!」

「……」


仕方ないので返事をすると、下からさらに怒声が聞こえてくる。何で降りなきゃいけないんだよ。

意味がわからないので無視を決め込むと、梯子を登ってくる音がする。


そして梯子を登り切った如月は猫のような吊り目をさらに吊り上がらせて怒鳴ってくる。


「あんた!顔貸すって約束したのに何で来ないのよ!」

「俺はいくなんて言ってない。お前が一方的に言ってきただけだ」

「でもアイコンタクトしたじゃない!あんた頷いてたのに……あー、もう訳わかんない!」


如月が地団駄を踏んでいる。

訳わかんないはこっちのセリフだよ。何に怒ってるの。てか何でこの場所にいるってわかったの。ああ、星空の配信か。


「はぁ、もういい!それで話っていうのは昨日のことなんだけど」

「ああ」

「昨日のこと、誰かに話した?」

「話してない」

「そう。よかった」


何がよかったのか。それに昨日のことってどれだ。誰にも何も話していないから話してはいなけど、どれのことを指しているのかわからない。


お前が襲われてオークに殺されそうになったことか。それとも正木とかいう奴が女見捨てて死んだふりした挙句に悲鳴を上げながら一人で逃げたことか。


「お願いがあるんだけど」

「何だ?」

「昨日のこと、誰にも言わないで欲しいんだけど」

「は?」


だから昨日のことってどっちだ。


「は、じゃないわよ!分かってんでしょ!あんな……あんな情けない男だとは思わなかった」


正木が悲鳴を上げて逃げ出したことか。


「別に良いんじゃないか。怖かったんだから逃げ出したって」

「よくないわよ!あいつが顔面にオークの棍棒まともに喰らって動かなかったから奈々美もやられて……とにかく、このこと絶対誰にも言わないでよね!」

「分かったよ」


俺は頷く。

そうか。死んだふりしたせいで味方を巻き込んだのか。それはいけないな。


「はぁ……」

「……」


如月が俺をじっと見ている。用は終わったのだろうか。俺は再度寝転がりこちらを見ている如月に帰るようにいう。


「何だ?用が終わったのなら帰っていいぞ?」

「……あんた、もしかして強いの?」

「はあ?」


突然なんだ。予想もしない人間から予想もしない質問をされ少し動揺する。


「だってあんた、十層の魔物の攻撃、余裕で受け止めてたし」

「いや、全然余裕じゃないぞ。結構ギリギリだった」

「でもオークはあんたが倒したんでしょ?」

「……ああ」

「じゃあ、十レベに近い能力があるってことじゃん」

「いや?オークが追ってきてくれたからスタミナ削りまくってバテたところをタコ殴りにしてやっただけだぞ」

「でも、オークを倒せたってことでしょ」


人の話を聞いていないのか。まるでオークを余裕で倒せるみたいな言い方をされても困る。

魔法を使えば余裕だが、ソロで魔力切れがある魔法に頼るのは悪手だ。

鉄の剣が仮にあったとしても、タイマンでオークとやる勇気は俺にはまだない。


「じゃあさ……私達とパーティー組まない?」

「は?嫌だけど?」

「何でよ!」


何が?驚くところないだろ。


「俺にメリットがないから」

「は!?私、読モやってるんだけど?」

「悪いがそういうステータス的なモノに興味がない」

「なっ……」


如月は愕然とした顔をしている。そんなに驚くことか。自身のステータスが通用しないとわかると、如月は苦々しげな顔をする。


「あんた、絶対後悔させてあげるからね」

「そうか」


そう言うと、如月は建物から飛び降りて校舎に入ってしまった。

後悔とはなんだろうか。

如月と組んでればもっと稼げたのに、とかなら確かに後悔しそうだ。そんなことを考えていると、また誰かがやってきた。


「ワンくーん、いるー?」


星空が来たみたいだ。


「いるぞー」

「そっちいくねー」


いうが早いか、カンカンと梯子を上る音が聞こえ、すぐに星空が顔を出す。


「やっほー!」

「おー」

「あっはっはっはっ!」


何が面白いのか俺の返しに星空が笑っている。俺は笑ってる星空を横目に寝転がる。ひとしきり笑った星空が目尻を拭いながら問いかけてくる。


「それで……さっきすれ違った人、如月さんだよね?読モやってるって……。何かあったの?」

「……まあちょっとな」

「ふーん。もしかして昨日のオーク騒動と関係ある?」


何だ。やっぱり知ってたのか。


「知ってたのか」

「あはは。注意喚起もされたし、みんな知ってると思うよ」

「ふーん」

「もしかして、オーク倒したの、ワン君?」

「ああ」


嘘つく理由もないので正直に話すが、星空は露骨に驚いていた。


「ええー!オークって十層の魔物だよ!?ワン君のステータスで倒せるの!?」

「お前の魔法使ったからな。結構余裕だったぞ」

「えー、私のステータスでオークを余裕で倒せるかなー?」

「ステータスは俺のを使った」

「え!?」


俺の暴露話に星空は大袈裟に驚き、詰め寄ってくる。


「ワン君のステータスっていくつなの!?」

「言う訳ないだろ。顔近いから離れろ」


近付けてきた星空の顔を押し返す。すると、星空はむくれながら腰に手をやり怒った顔をする。


「ひどーい!私のステータスは全部知ってるくせに!」

「動画で公表してるんだろ?ならいいだろ」

「それはそうだけど……別にステータスくらい教えてくれていいじゃん!」

「無理」

「もー、ほんと心無きなんだから!」


すげなく断る俺をディスってくる。理不尽すぎる。プライベート情報を守っただけなのに。


全く、本当に人付き合いは大変だ。


仰向けになり空を眺めながら俺はため息をつく。

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