第百二十八話
「「はいどうもーーーー!ネット掲示板やSNSに話題の迷宮のあんな噂やこんな噂、何でも深掘りチャンネルの」」
「ハヤトと」
「リョウです!」
「「よろしくお願いします!!」」
リ「ということでハヤトさん!今回の噂は何ですか?」
ハ「今回はですね、今日本で一番熱い探索者の噂について深掘って行きたいと思います!」
リ「ほぉ、今日本で一番熱い探索者!誰ですかそれは?林田優さんですか?」
ハ「違いますw日本一の探索者林田さんもそりゃすごいと思います。でも話題って言ったらやっぱりこの人、ザ・ワンじゃないですか?」
リ「ザ・ワン!」
ハ「ザ・ワンを知らない人について説明しますね。現在東迷学園に通う一年F組の生徒でどれだけ迷宮に潜って魔物を倒しても1レベルから上がらず、覚醒度も2%のまま、ステータスも歴代最低クラス。本来であれば探索者として絶望的な状況なわけですが、何故かめちゃくちゃ強く、遥か格上のはずの魔物をバンバン倒しまくるっていう偉業を成し遂げています。直近で言えば三十層近くに出る海蛇シーサーペント、森の悪魔マンティコア、三頭の悪夢キマイラ。どれも超が付くほどの有名な魔物ですが、何と、迷宮に潜って僅か半年のザ・ワン、通称ワン君による撃破が確認された、というね。どう思います?これ」
リ「どう思うってそりゃレベルが上がらないって嘘ついてるとしか思えへんよ。レベル上がらない詐欺でしょ」
ハ「詐欺ってwやめてください、誹謗中傷は」
リ「いや事実でしょ」
ハ「嘘かどうか分からないですからね。実際第三者が確認したステータスの紙を生放送で確認しているわけですし!」
リ「いやーどうでしょうねー」
ハ「ってことはリョウさんは信じてないってことですね?」
リ「当たり前やろ!どう考えたってザ・ワンは1レベの強さじゃない!信じるわけないやん!」
ハ「なるほど。確かにネットではリョウさんの様にザ・ワンのステータス、スキルについては度々議論になり、否定派も日に日に増えていっている様に自分も感じます」
リ「何であんな言い訳で騙せると思っとんねん。舐めすぎやろ」
ハ「いや信じてる人も結構いますよ?日に日に減って来ているだけで」
リ「減って来とるやん!」
ハ「(笑)。まあまあ!それならリョウさんはザ・ワンの強さの秘密は何だと思いますか?」
リ「うーん、まあ今ネットで一番多い説は自身のステータス、スキルを自由に変えられるスキル……」
ハ「あー。でもそれだと、ロシアの死神と被るんじゃないですか?」
リ「だから、死神と違って自分のステータス値を自由に上げ下げさせられるっていう」
ハ「上げ下げって曖昧やな。てか下げてどうするんですか!弱くなる意味ないでしょ」
リ「いや、こうして偽造が出来るっていうね」
ハ「偽造ってwずいぶんしょうもないスキル……」
リ「いやいや、その代わりステータスを上げることも出来ますからね。それでプラマイゼロ」
ハ「プラマイゼロにしてどうするんですか!プラスにしないと」
リ「ははははは!」
ハ「というわけで、今回は秘密の多いザ・ワンについてリョウさんと一緒に深堀って行きたいと思います!」
リ「よろしくお願いしまーす」
『ザ・ワンのスキルについて』
ハ「やっぱりみんな気になるのはザ・ワンのスキルについてですよね」
リ「めっちゃ気になる」
ハ「ここからはまず、ザ・ワンがオンリーワンであることを前提に話させていただくんですけども」
リ「おー」
ハ「まずオンリーワンスキルとは何かって話なんですが」
リ「いや知らん奴おらんでしょ、このチャンネル見てて」
ハ「はははははっ!まあ一応ね。知らん人もいるかもしれないから!一応ご説明させていただきますと、オンリーワンとは世界で唯一無二の誰も持っていない強力なスキルを所有するスキルホルダーを指し、その覚醒度は最低でも50%以上という化け物揃いなんですね。そのオンリーワンには初期スキルとして二つ、世界で唯一のスキルを持っているんですね」
リ「つまり、ザ・ワンの持っているスキルも二つのはず、ということですね」
ハ「そうです。ちなみに公表されているザ・ワンのスキルは転倒阻止というまあそこそこありふれたスキルです」
リ「転倒阻止ですか。パッとしないスキルですね」
ハ「前衛で持ってると転ばなくなったり倒れる際受け身を取りながら立ち上がれるようになるんで結構重宝されるスキルですよ」
リ「それを言うたら大体のスキルはそうでしょ」
ハ「そうですね。まあ話を戻しますが、つまりザ・ワンがオンリーワンであると仮定するならば、ザ・ワンには転倒阻止とは別のオンリーワンスキルを二つ持っている、と言うことになります」
リ「そうですね」
ハ「リョウさんが先程言っていた、自分のステータス、スキルを自由に変更出来るスキルっていうのもよく聞きますね。ただ、ザ・ワンは肉体的には強いですけど、魔法や技術系のスキルは一切使ってないんですよね」
リ「確かにそうですね」
ハ「ということは肉体強化系のスキル……でもそれだとヤオバオと被るんです」
リ「確かに。オンリーワンのスキルは正にオンリーワン。他のオンリーワンと被るようなスキルはありませんからね」
ハ「そうなんですよ。未だ存在しないスキルでオーソドックスなもので言えば、相手の弱体化、とかはあるあるですね。相手の防御力とか敏捷とか下げるみたいな」
リ「でもその説って否定されてますよね?魔物の動きは全く弱まってないって……」
ハ「うーん、攻撃する瞬間だけ相手が弱くなるとかじゃない?もしくはあらゆる攻撃が敵の防御を貫通するとか」
リ「いや、それじゃあザ・ワンがあんなに速く動ける理由にはならないじゃないですか?」
ハ「それはそうなんですけども」
リ「ダメやんw」
ハ「と、いうように様々な考察が出てはあれやこれやと日夜議論されているわけなんですけどもー、結局結論に至れてないというか、いや、それここがおかしいじゃんっていう反論がどうしても出てしまうと」
リ「相手の弱体化は流石に穴だらけ過ぎると思いますけどね、僕は」
ハ「ですから今回、一部の隙もない確実にこれだと言える噂を持って参りました!」
リ「ほぉ!ついにあのザ・ワンの化けの皮が剥がされる時がきましたか!?」
ハ「化けの皮ってw。まあとにかく!もう間違いなくこれなんじゃないかってものを持って来ました!」
リ「ほう!聞かせてください!」
ハ「ずばり!ザ・ワンのオンリーワンスキルは『コピー』と『ステータス値超上昇』の二つです!」
リ「ほぉ!コピーとステータス値超上昇。何ですかそれは?」
『コピー』
ハ「まずコピーの方からご説明いたしますね!スキル「コピー」とは、対象のステータスを丸っとコピーして自分のものにすると言うスキルです」
リ「僕が言ったのと同じじゃないですか」
ハ「違います!一緒にしないでください?リョウさんのはステータスを自由に上げ下げして、スキルも付けたり外したり出来るんですよね?僕の噂はコピーですから!」
リ「同じやろ。まあそれは確かにオンリーワンというにふさわしいスキルかもしれませんが、何か根拠でもあるんですか?」
ハ「根拠ですね。実はあるんですよ」
リ「あるんかい!」
ハ「実はザ・ワンが度々配信に載せているこのステータス。なんと、ザ・ワン以外にも同じステータスを持っていた人間がいるんですね」
リ「ええーー!そんなことあり得るんですかー!!??」
ハ「それがあり得たんだそうです。しかも、この、仮にAさんとさせていただきますが、ザ・ワンとこのAさん、初期ステータス値だけではなく、スキル、そして覚醒度まで完全に一致していたそうです」
リ「いやいやいやあり得ないでしょ、そんなこと。確か三つが全てが完全に一致する確率って何百億分の一とか何千億分の一とかだったはずですよ」
ハ「そう!その通り。しかし、そのあり得ないことが実際に起こったのよ!」
リ「ほんまか?誰情報よ、それ?」
ハ「東迷学園のとある生徒、とだけ言っておきます」
リ「誰?めぐたん?」
ハ「いや違いますw名前出さないでください?めぐたんさんじゃありませんから」
リ「じゃあ誰や」
ハ「やめてください、犯人探しは」
リ「はははw」
ハ「話は戻しますが、その何千億分の一が実際に起こるということは考えられないわけですよ。それならば、ザ・ワンはこのAさんのステータスをコピーしたと考えるのが普通じゃないでしょうか。しかも、仮に自分よりもステータスが高い生徒のステータスをコピーできるとしたら、ザ・ワンの強さにも説得力がつきませんか?つまり、ザ・ワンのオンリーワンスキルの一つは『コピー』で間違いないんじゃないでしょうか?」
リ「おー、なるほどー。……あれ、でもザ・ワンとAさんってスキルも完全に一致しているんですよね?それならザ・ワンはスキルもコピー出来るって事になりません?なら、ザ・ワンは魔法も使えるってことになるじゃないですか」
ハ「そこなんよね、やっぱり」
リ「ダメじゃん!」
ハ「他人のスキルを使えるのを隠してるだけだと思うんよね、僕は」
リ「何で隠す必要があるんですか?」
ハ「そりゃ他人のスキルをコピー出来ることを隠すためじゃない?肉体強化で特殊技能を見せなければギリギリ言い訳が出来るとか考えてるんちゃうんかな」
リ「そこがもどかしいところなんよ!本気で隠す気は全然ないくせに確信的なこともないから断言も出来ない。答えにもうちょっとで届きそうなのに辿り着けないところがほんまイライラするんですよ!隠すならちゃんと隠せ!」
ハ「隠せてますやん!まあつまり、本当はザ・ワンは魔法を使えるっていうのが僕の見解。シーサーペントは分からんけど、マンティコアとキマイラ戦は魔法使ってたんじゃない?誰も見てなかったわけだし」
リ「うーんなるほどー」
ハ「仮に他人のステータスをコピー出来るのだとしたら、かなり早い時期から、しかも大して迷宮に潜ってなくても強い理由には説明がつきますよね。何せ強い人のステータスをコピーすればいいわけですから」
リ「おーなるほど。それなら筋は通りますね」
ハ「でしょ!?つまり、これまでの実績と照らし合わせても、ザ・ワンのスキルはコピーで間違いないと思います!」
リ「結構穴だらけのような気もしますけどね、僕は」
ハ「うるさい」
リ「ハハハ」
『ステータス値超上昇』
ハ「そして!もう一つのオンリーワンスキル、それはステータス値超上昇!」
リ「ほう!まあ名前見たらわかるけど、一応どんなスキルか聞いておきましょうか」
ハ「はい!まあ名前の通りなんですけど、ザ・ワンのステータスが上がる際、普段よりも更にステータスの上昇値がアップするっていうスキルですね」
リ「それは……スキルとしてはめちゃくちゃ強いと思いますけど、コピースキルとの因果関係なくないですか?」
ハ「それが実はあるんですよ!」
リ「ほぉ!」
ハ「相手のステータスとスキルを丸っとコピーして自分のものにすることができる。こう聞くとめちゃくちゃ強そうに見えますよね?」
リ「めちゃくちゃ強そうに見えるっていうかめちゃくちゃ強いやろ!実際オンリーワンの中でも半年でキマイラ倒せるのなんてさすがにいないで?」
ハ「確かにリョウさんの言うとおり、ザ・ワンは他のオンリーワンと比べてもかつてない程速い功績があると思います。でも、ちょっと考えてみてくださいよ。ザ・ワンもオンリーワンだとしたら、その覚醒度は50%を超えていますよね。それならば、ステータス値の上昇率もかなり高いわけですよ」
リ「高いでしょうね」
ハ「つまり、レベルが上がってステータス値が上がっていくと、他人のステータスをコピーする必要性ってなくなっちゃうんよね」
リ「あー確かに」
ハ「つまり、もし仮に、ザ・ワンのスキルがコピーだった場合、その本質はスキルをコピーする事にあるんよ!」
リ「なるほどなるほど……。あ、でもそれなら他のオンリーワンをコピーすれば良くないか?それならそうそうレベル上がってもステータス値追いつかれることないと思うで?」
ハ「じゃあさ、例えばだけどウィリアムのステータス、スキルを完全にコピーしたとして、ウィリアムと戦ったらザ・ワンはウィリアムに勝てると思います?」
リ「無理に決まっとるやん」
ハ「ほぉ、何故?」
リ「そら、その道の本職に付け焼き刃で勝つのは不可能やろ」
ハ「その通り!日本中のあらゆるレース場で優勝したレースカーをいきなりほいって渡されてもレースで優勝なんて出来ないですよね。それと同じ。オンリーワンのスキルを手に入れても、そのオンリーワンには絶対に勝てない。つまり、コピーだけだとザ・ワンはオンリーワン達の中で最弱になってしまうんよ」
リ「おー、なるほど」
ハ「そこで!ザ・ワンはもう一つのオンリーワンスキル『ステータス値超上昇』でステータス値を大幅に上げることでこの弱点をカバーしてるいるのです!」
リ「……」
ハ「どうしました、リョウさん」
リ「俺、今の説明に一個疑問点が浮かんだんやけど。言ってもええか?」
ハ「ほぉ、どうぞ」
リ「ザ・ワンのステータス値が上がっても、コピーでステータス値とスキルコピーしたら意味ないんちゃうか?コピーした相手のステータス値とスキルになるんやから」
ハ「だから分けれるんじゃない?」
リ「何でやねん!都合良すぎやろ!」
ハ「いやいやそうでないと辻褄が合わないですから!」
リ「ほんじゃ何か。ザ・ワンのコピースキルは相手のステータス値とスキルを丸々コピーできて、更にステータス値とスキルを分けて自由に変更できるってこと?」
ハ「追加すると、更に複数の相手のステータスをストックも出来る。今何個ストックがあるのか知らんけど、最低でも本人のも合わせて三つ以上のステータスを持ってるのは確実やね」
リ「だから都合良すぎるって!一人で三つもステータス持ってて組み合わせも自由とかバケモン過ぎるやろ!」
ハ「いやオンリーワンなんてそんなもんやろ。半径5キロをたった一つの魔法で更地に変えたウィリアムの『星魔法』。五つの巨大兵器を自由に出し入れ可能。整備士が付いて魔石さえあればほぼ無制限の火力を誇るリヤンの『兵装召喚』。魔法攻撃がない代わりに戦車砲すら片手で防ぎ、ミサイルすら弾き返すダイヤモンドの肉体を持つヤオバオの『黄金の肉体』。それらを振り返ってみると、他人のステータスを三つ保有し自由に変更できる、位は別にあってもおかしくなくないですか?」
リ「あー、並べられると確かにオンリーワンはバケモノ揃いだわ。それからすると確かに……って、なるかー!ならヤオバオとウィリアムのステータスをコピーしたらええやないかい!鋼の肉体と、広範囲の殲滅力を両立するバケモノが生まれるぞ!」
ハ「その通り!ザ・ワンは、あらゆるスキルをコピーし、『ステータス値超上昇』によって他に類を見ないほど上がった自分のステータスでそれらを使いこなし、それはあらゆる状況に対応し得る万能の探索者。まさに探索者達として理想の存在。つまり頂点である『世界』なんじゃないか、という噂でした!どうでしたか、リョウさん?」
リ「ハヤトさん、もしかしてザ・ワンのこと気に入ってます?」
ハ「そりゃ好きですよ!自分の秘密よりも他人の命のために躊躇いなく走り出せるなんてそうそう出来る事じゃないですよ」
リ「そうですかね?僕なら出来ると思いますけど」
ハ「え、じゃあ貴方、貯金大好きですよね?」
リ「はい!めっちゃ大好きです!」
ハ「じゃあリョウさんの貯金額を世界に公開しなければハヤトを殺すぞって言われたら躊躇いなく貯金額スクショして世界に発信出来ます?」
リ「無理ですね」
ハ「無理なんかい!そこは頷いてくれよ!」
リ「いや、意味不明やろ!何で俺の貯金公開したらハヤトさんの命助けんねん」
ハ「例え話ですから。でもそう言う事なんよ。いざとなったらリョウさんだって、しょうがない、分かった!ってなるかもしれないけど、それでも迷うのが普通なんよ。でもめぐたんの配信、僕も見たけど、ザ・ワンはシーサーペント見て他の誰かに自分の隠し事を見られるのも構わずすぐさま本気出すって結論出したんよね。それってさ、自分の中の優先順位がはっきりしていないとできない事だよね」
リ「あー、それは僕も凄いと思ったわ」
ハ「そういう所がザ・ワンの人気の秘密なんじゃないかと僕は思います。以上!ばーい!」
リ「ばーい!」
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掲示板回とかやりたいけど苦手だって分かったのでこういう形にしました。読みづらかったらすみません。
次からが本編となりますので、よろしくお願いします!




