クリエ ~創造~
これはまだ世界にほんの少ししか人がいなかったころの話。
クリエという青年がいた。彼は20才。親は早くになくなっていた。亜麻色のやわらかな髪に真っ黒な目を持った、小柄な男だった。彼は、その体格で周囲にバカにされることが多かった。周囲の男性は決まって、栗色の髪に青い瞳、身長も高かった。彼は20才になったこの日、村を出た。
彼が村を出て、山を5つ越え、川を3本ほど渡ったところにちょうどよい平地があった。彼はここに住もうと決めた。村を出て1月後のことである。
まず、彼は家を作ろうと考えた。村では家はなく、皆、適当に寝転んだり雨をしのいだりしていた。村に済んでいて、クリエがずっと考えていたことだ。
「周囲の山から木を切り、それを蔦で縛り、藁でもひけば気持ちよさそうだ。山にはそれらがたくさんあるからな。」
そうして彼は山から木を切り、蔦をちぎり、藁を引き抜いて家を作りました。作った家は快適でしたが、雨が降ると雨漏りが始まりました。
「屋根にも藁を乗せよう。ついでに全体を藁で覆ってしまおう」
そうして彼は山から大量の藁を取ってきました。それで全体を覆いました。それからしばらくして、気温が上がり始めました。村ではずっと気候は安定していましたからクリエは驚きました。それでも藁の間から風は入ってきますし、住みかの下には冷たい水があることも見つけました。そうしていると、今度は気温が下がり、雪まで降り始めました。クリエは雪を見たことなどもちろん無かったので、災厄の種だと思い、住みかにこもりました。山の動物たちもこれを見て同様にしました。クリエは長い間、水だけで生活しましたが、とうとう住みかを出て食料を探し始めました。ついでに寒かったので、すきまの少ない風の通らない住みかを作りました。これに山の植物をほとんど使ったので、はげ山になりました。クリエは少しばかりしかいない獲物で何とか生きながらえました。そうして少しずつ気温が上がり、動物たちは起き始めました。植物もまた芽を出しました。
「また寒い時期が来ては困る」
クリエはそう思い、植物を植え、育てようと考えました。初めは、育て方がわからず植物を何種類も育てようとしました。そのため、土地の植物は目に見えて減少しました。クリエはまた、動物を飼うことを思いつきました。また、何種類もの動物を育てようとしました。そうして、山の動物たちは明らかにその数を減らしました。
「気候が暖かいうちは大丈夫だろう」
クリエはそう考え、動植物の数を次々増やしました。やがて気温が下がり、育てていた植物の多くは枯れ、動物も疫病などで数を減らしました。彼の周りにあった、美しい動植物は、屍となりました。わずかに残る動植物だけで暮らすことを考えるとクリエはいても立ってもいられなくなりました。急に寂しくなり、彼は死んだ動物の皮と枯れた植物を張り合わせ、奇妙な生き物を作りました。初めは4足歩行の獣、次に魚、鳥、ついには人型のものを完成させました。不思議なことにその人型は瞬きをし、話し出しました。クリエは驚きましたが、話し相手ができたことに多いに喜びました。クリエはこれを『人形』と呼び、次々と作りました。そうして、気候が緩やかになった頃には100体ほどの人形ができました。クリエはできた人形たちに狩りや、植物の採集をさせました。次第にそこには出来のよい悪いが発生しました。クリエは出来の悪いものは叱り、良いものはそれなりに賞与を行いました。そうするうちにそこには秩序が生まれました。しかし、山の自然は次第に失われました。
あるときクリエは出来の悪い人形を殺しました。すると、突然全ての人形は崩れおち、動かなくなりました。クリエは何とか直そうとしましたが、一向に効果は出ませんでした。さらに彼は新しい人形を作りましたが、動く人形はできませんでした。人形たちの乱獲で山の動植物はすでになくなっていました。クリエはこの地を去ろうと決意しましたが、周囲を山に囲まれていたので越えられそうにもなく、途方に暮れてしまいました。そうしてクリエは一人で静かに息を引き取りました。