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【書籍発売中!】ぷちっとキレた令嬢パトリシアは人生を謳歌することにした  作者: あまNatu
第一章

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災難は向こうからやってくる

「…………疲れました」


「お疲れ様」


「大変だったねぇ……。本当に」


「なんだったのあいつら?」


 なんとかあの場を抜け出した四人は、ひとまず人気のないところまでやってきていた。

 疲弊困憊のパトリシアは、汚れるとかそんなことを気にする余裕もなく芝生の上へと座り込んだ。


「なんだったのでしょう……」


「こっちのセリフ。あいつらどうしたっていうのよ?」


「えっと……」


 そういえばシェリーとハイネには詳しい話をしていなかったなと、ことの詳細を伝えた。

 シグルドとの訣別、ロイドへの拒絶、クロウへの苦言。

 それらをすべて話し終えたあと、シェリーは盛大に顔を歪めた。


「…………それでなんでああなるの?」


「私が聞きたいです……」


 離れると思ったのに。

 むしろなぜ前よりも距離感を縮めてくるのか。

 思わず顔を覆ったパトリシアを見て、シェリーは腕を組み考えるように視線を斜め上に向ける。


「………………マゾ?」


「「やめろ」」


 クライヴとハイネが、中々な勢いでシェリーの言葉を止める。

 それ以上はいけないと、二人して首を振った。


「ひとまず……もう関わり合わないという選択肢はないように感じたけど……」


「…………そう、で、しょうか……?」


 できれば近寄りたくないのだが、やはり不可能なのだろうか。

 一縷の望みを賭けているパトリシアに、ハイネは残酷にも告げる。


「あれはもう無理です。関わらないという選択肢はないかと。絶対向こうから来ます。間違いないです」


「…………そんな、致命傷を与えてこないでください……っ」


「フレンティア嬢、真実は時に残酷です」


「残酷すぎるだろ」


 残酷ながらも全くもってその通りなので、諦めるしかないらしい。

 しょんぼり項垂れるパトリシアを見て、クライヴが手のひらに顎を乗せる。


「でもあいつらなにがしたいんだ?」


「んー……聞いてる限りだと、フレンティア嬢に認めてほしい、って感じかな?」


「認めるってなにを?」


「…………人間性?」


「現状逆効果じゃない?」


「勢いそのままで生きてるんだろうなぁ」


 結果あれかと、クライヴは呆れた顔をしている。


「まああんまりひどいようならいつも通りきっぱり拒否すれば、落ち込みながら帰ると思うので」


「……それが厄介なんです」


 まるでパトリシアか悪いことをしているようではないか。

 だから嫌なのだがそんなことを言ってはいられないらしい。

 若干諦めモードなパトリシアに、シェリーは憐れみの目を向けてきた。


「……あいつらも厄介だけど、面倒なのはマリー・エンバーじゃない?」


「…………」


 ふと先ほどのことを思い出す。

 あれだけの騒ぎの中、マリーだけは静かに佇んでいた。

 刺さるほどの鋭い視線を向けて。


「別にあいつらパティのこと恋愛として見てるわけじゃないだろ?」


「でもあの女よりパティを優先するのは目に見えてるもの。それにそれだけ強い感情を抱いてるならいつ恋愛に発展してもおかしくないわ」


「…………今のうちに潰しとくか」


「やめなさい」


 ハイネに怒られて、クライヴは軽く唇を尖らせた。


「面倒な芽は根っこごと引っこ抜いて燃やしたほうが早いだろ」


「考え方過激すぎ。もう少し余裕持ちなさいよ」


「…………」


 ぶすっとしたクライヴは、ふいっと顔を背けた。


「あれだけの騒ぎを起こして、なおかつこの後もパティに絡んでくるとなると……。あの女が黙ってるわけないわよ」


「……そうですね」


 パトリシアは彼女に彼らとは関わらない宣言をしたのに、無理になってしまった。

 完全に不可抗力ではあるけれど、約束を破る形になったのは頭を抱えそうになる。

 彼女のあの感じでは、パトリシアを逆恨みしてもおかしくはない。

 シェリーもそれを危惧しているのだろう。


「男どもが上手いことマリー・エンバーをよいしょしてくれればいいけど」


「あの猪突猛進感じゃ無理そうだなー」


「……まあ、大丈夫でしょ。パティがあんなのに負けるわけないし」


 面倒ごとは嫌だけれど、黙ってやられるままでいるつもりもない。

 まあ彼女が難癖をつけてこないことを祈りつつ、多分無理なんだろうな……とも思う。

 きっと彼女はやってくる。

 パトリシアを潰しに。


「ま、私たちはパティの味方だから。なにかあったらすぐに相談してね」


「ありがとうございます」


 けれどパトリシアには頼もしい仲間たちがいる。

 きっと大丈夫だろうと空を見上げた。

 なにがあっても、なんとかなる。

 ……なんとかは、なるけれど……。


「やはり関わらないという選択は……」


「「「無理」」」

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