表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

16 ビル地下








 俺は砂が落ちていく箇所に、そっと近付いた。

 その下に空間があるなら、下手したら俺も落下の恐れがある。


 砂を良く観察すると、確かに下に空間がある時の落ち方だ。

 だが魔物の巣の可能性もある。


「リュウ、ロープを持って来てくれるか」


 ロープを手渡されたとこで、リュウに質問する。


「リュウ、行けそうか?」


「ああ、任せておけ」


 こういう時には、身体能力の高いリュウが適任だ。


 俺はリュウをロープで結び、砂の落ちる所へ近付けさせた。


 他の者は周囲の警戒だ。


 リュウが砂を手で掻き分ける。

 そして動きが止まった。


「リュウ、どうした!」


 俺が叫ぶとリュウ。


「社長、ビンゴだ!」


 そんな言葉が返ってきた。

 過去の遺物を発見したんだろう。


「何がある?」


「ああ、コンクリートの建物だな。ちょっと待ってくれ。入れそうだ……」


 俺の「気をつけろよ」の言葉を待たずに、スルリと砂の中へ消えて行った。

 俺は慌てて握っていたロープに力を込める。


 リュウは下に降りて行ってる様だ。 

 しばらくすると、握っていたロープが緩む。

 底に降り立ったみたいだ。


 そしてリュウの声が響く。


「ハコ社長〜、デカいライト持って来てくれよ〜」


 俺大急ぎではライトの他にも、探索道具一式をバックパックに詰め込んで、砂の下にいるだろうリュウに投げ渡した。


 穴の空いた砂から、灯りが漏れる。

 そしてリュウの声が響いた。


「安全みたいだ〜、降りて来ても平気だぜ〜」


 俺にも来いってことか。


 ロープの番を変異人に任せて、俺もリュウの後を追って、砂の中へと入っていった。


 地面に足を着くと、直ぐにライトで周囲を照らす。


「何だ、ここは……」


 思わず声に出してしまうほどに、異常な光景だった。


 恐らく何かのビルの地下一階なんだろう。

 その証拠に壁には“地下一階”の文字がある。


 それは一階から上は消失しているという事だ。

 リュウが周囲をライトで照らしながら言った。


「地下一階からスタートのビルらしいぜ。中々楽しそうなシュチュエーションだと思わねえか」


「ああ、そうだな。初めてのパターンだな。それに、手付かずだ。期待出来るかもしれないな」

 

 俺は頭上の穴に向かって叫んだ。


「俺達は奥へ入るっ、上は頼んだぞ〜」


「はい、は〜い。任されたよ〜」


 モエモエの声だ。


「リュウ、まずはこの階層から探索するぞ」


「ああ、分かってる。まずはこれを見てくれよ」


 そう言いながらリュウは壁を指差す。


 その壁にはこの階の見取り図が描かれていた。

 手て見取り図を拭って汚れを取ると、ハッキリと地下一階と書かれている。

 それによるとここは、地下一階にあるエレベーターホールらしい。


 もちろんエレベーターは動かない。

 その横にある一階に続く階段も、崩れていて使えない。

 行ける所というと、この先にある通路だ。

 ここから通路が伸びていて、その通路沿いに部屋が三つある。

 

 ライトで照らすと確かに通路が続いている。

 その突き当りが階段と描かれていた。


「リュウ、それじゃあ行ってみるか」


 するとリュウは手で“お先にどうぞ”と合図する。


 俺も負けずに両手で“お先にどうぞ”する。


 無言の攻防を二、三回やったあと、お互いに後ろを向く。


「「じゃんけんホイ!」」


 グーを出した俺の負けだ。


「くっそお、仕方ない。後方は任せたぞリュウ」


 そう言って俺は、ポンプアクション式ショットガンにライトを固定すると、構えながら通路を進んだ。


 まずは最初の部屋からだ。


 こういう所にはネズミ系の魔物がよくいる。

 病気を持っていたりするから注意が必要だ。


 だが熱処理すれば食料にもなる。


 俺は慎重に扉を少しだけ開けて、ショットガンを構えながら部屋の中をライトで照らす。

 直ぐに閉められる体勢だ。


 魔物が居れば、ライトの明かりに驚いて動くはず。


「動きはない。入るぞ」


 そう言って俺は部屋の中へと入って行く。

 

 目ぼしい物は何もなさそうだ。

 代わりに糞がいくつもある。

 ネズミ系魔物だろう。

 どこから入ったのだろうか。


 この部屋は諦めて通路に戻り、次の部屋を目指す。


 扉が開いていた。


 これは期待薄だな。

 

 開いた扉に近付き、部屋の中をライトで照らす。


 さっきの部屋よりも酷い有り様だった。

 この部屋には魔物の糞だけでなく、何らかの骨が散乱している。


 俺は部屋の中に入らずに、通路の先へ行こうとすると、リュウが声を掛けてきた。


「部屋ん中には入らないのかよ」


「あの骨が人間だった場合な、細菌とか、化学兵器による結果だとしたら、俺達も危険になるだろ。冒険はしたくないんだよ」

 

 放射能は端末で探知出来るが、生物、化学兵器とかは無理だからだ。

 それでリュウも納得したらしく「な〜るほど」と言って、再び俺の後ろを歩き出した。


 そして三つ目の部屋。


 扉は閉まっていた。

 これは期待がもてるか。


 しかし扉が開かない。

 古くてガタがきてる感じではない。

 そこで俺はニヤついてしまった。


 後ろからリュウが俺を小突いてきた。


「ハコ社長、何ニヤついてんだよ。キモいぜ」


 俺はショットガンを構えながら言った。


「この部屋、カギが掛けられてる」


 リュウの返答を待たずに、俺はショットガンを連続でぶっ放した。


 カギを破壊するためだ。


 三発ほど叩き込んでから、扉を勢い良く蹴り飛ばす。


 その勢いのまま、部屋の中へ突入した。

 突入して直ぐ、入って左の壁に背を付ける。

 後に続くリュウは右の壁に背を付けた。


 部屋の仲を二人してライトで照らす。


 毛布の上に人骨が横たわっていた。


 周囲には空のペットボトルや、空き缶が散乱していた。


「食料が尽きたんだろうな……嫌なもんを見たな」


 骨の大部分が変異している。

 つまり変異人だ。

 ここまで変異していると、街には入れない。

 ここで一人寂しく朽ち果てたんだな。

 

 リュウが漁り始めたのを見て声を掛けた。


「リュウ、放っておけ。先へ進むぞ」


 リュウは舌打ちしつつも、俺の後に付いて来る。


 通路に戻り階段口を目指す。

 階段口の扉は直ぐだった。


 扉には『備蓄庫階段』と書かれていた。


 俺はリュウと顔を合わせてニンマリした。


「ビンゴだな」


「大当たりだぜ」


 二人して早足で階段を降りる。


 降りた所はエレベーターホール。

 エレベーター以外に扉があり、閉まっている。

 ってことは手付かずの可能性が大だ。


 いつになく動きが良いリュウが、ライトでエレベーターホールをくまなく照らし「クリアー!」と宣言。


 早く備蓄庫に行けと言っているのが、ビンビンに伝わってくる。


 俺が扉の左に立つと、リュウが反対側に立つ。


 俺が手を延ばして扉の取っ手を捻る。


 カギが掛かっている。


 確実に手付かずのお宝が中にあると確信し、俺とリュウは目を合わせてニヤついた。


「リュウ、準備は良いか」


「とっくに出来てるぜ」


 こうして俺達は、備蓄庫に突入するのだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ