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6、魔物討伐とレベルアップ

 ギルドを出た俺は近くにあった店で一番安い食べ物、穀物を粉にして野菜や肉を挟み込んで焼いたもの、を購入してHPを回復させた。味はかなり美味しかったので、これからこの世界で食事をするのが楽しみだ。


「たくさん倒してレベルアップして、お金も稼ぐか」


 HPを全回復させて準備を整えた俺は、そう呟いて気合を入れてからまた村の外に戻った。まず向かったのはさっきの草原とは別の方向だ。フットラビットは草原よりも森に多く生息しているらしく、特に低木がたくさん密集しているこの村の東にある森にいるらしい。


 俺は事前に短剣を構えて警戒しながら森に向かい、十分ほどで森の外縁部に辿り着いた。


「……変な森だなぁ」


 その森はまるでミニチュアみたいな森だ。俺の腰ほどの高さの木がどこまでも広がっていて、自分が巨人になったような気分になる。そしてその森の中に……ぴょこんっとたまに白い耳が飛び出してくる。あれがフットラビットだな。


 フットラビットは森を傷つけられるのをかなり嫌うという情報を得ていたので、俺はフットラビットに襲ってもらうために、短剣で近くにある木を切りつけてみた。

 するとガサっという音と共に木の枝が何本か地面に落ち……それと同時に、かなりの速度で白い耳が俺に向かって突進してきた。


 俺はそれをしっかりと見定めて直前で回避して、ぶつかるはずだった対象に避けられたことで地面に転がっていたフットラビットを、短剣で切りつけた。


「うわぁ……ちょっと待って、かなり嫌だ。凄く嫌だ」


 俺は無事にフットラビットを倒せたにも関わらず、思わず顔を顰めてしまった。なぜなら……フットラビットを倒す感触がリアルすぎたのだ。それに血を流して地面に倒れているフットラビットも、あまりにもリアルすぎる。

 スモールスネークはまだ爬虫類だからダメージは少なかったけど、哺乳類はヤバい。


 これはR-18指定になるのも頷けるな……さらに事前に魔物討伐に関してさまざまな警告があったんだけど、それも当然だろう。これはトラウマになる人もいそうだ。

 いろんな攻略サイトで職業は魔法使い推奨って書かれてたけど、倒した感触のリアルさが少ない職業をってことだったのかもしれない。


「早く錬金でお金を稼げるようになって、素材は購入できるようになりたいな」


 俺はその未来のために今は頑張ろうと決意して、フットラビットをインベントリに収納した。


 

 それからの俺はとにかく頑張った。途中で夜になったので一度現実に戻って食事と睡眠をとったけど、その後はすぐにまたゲームの世界に戻り、フットラビット討伐を続けた。


 もうフットラビットを倒す感覚には完全に慣れ、逆にこのリアルさが楽しいなと思っているぐらいだ。うわっと思うのは最初だけで、そこを乗り越えられたらこのリアルすぎるゲームの世界を楽しめるようになるのかもしれない。


「そろそろ終わりにするかな」


 俺はまた一匹フットラビットを倒したところで、倒したフットラビットと短剣をインベントリに仕舞った。そしてウィンドウを開いて、現在のレベルを確認する。


 さっきまたレベルアップの音が聞こえたんだよな……おおっ、レベルが9になってる! HPが32でMPが51だ。ここまで上がると、この村周辺なら死ぬ危険性はかなり低くなったな。

 最初よりも体が軽くなったし剣を振るのも楽になったから、レベルが上がっていくと身体能力も少しずつ向上していくんだろう。


 明日からは大学生活が始まるし、その前にここまでレベルアップできて良かった。これなら大学が忙しすぎてしばらくログインできなくて、強制的に宿から退去させられてインベントリの中身が空になってたとしても、すぐにまたお金を稼いで色々と買い揃えることができそうだ。

 まあ、そんなことにはしないけどな。いくら忙しいって言っても、夜なら時間はあるだろうし。


「さて、村に帰るか」


 日が傾いてきていたので急足で村に帰った俺は、討伐した魔物をお金に変えるために冒険者ギルドに向かった。そしてギルドでいくつか錬金で使えそうな素材以外は、全て買い取ってもらう。


「お待たせいたしました。こちらが買取金額となります。そして魔物の素材ですが、ご要望のものだけは買取せずこちらにございます」

「ありがとうございます」

「毎日とても頑張っておられますね」


 そう言って純粋な笑顔を向けてくれる受付の女性を見ていると、明日からも頑張ります! って言いたくなる。これはゲームの世界にどっぷり浸かってしまう人がいるのも分かるな。


「……明日からは冒険者として活動できる時間が短くなるので、それまでに稼いでおこうと思ったんです」

「そうだったのですね。冒険者以外には何か仕事をされているのですか?」

「そうですね……錬金術を」


 現実世界で大学生をって言おうと思ったけど、さすがにそれはやめとくかと思って当たり障りのない返答をした。すると女性は納得したのか笑顔で頷いてくれる。


「マサト様は錬金術師だったのですね。そちらでもご活躍されることを祈っております」

「まだ駆け出しですが、頑張ります。ありがとうございます」


 というかなんの器具も持ってないから、駆け出しとも言えないけど。一度も錬金をしたことがない錬金術師が俺だ。


 それからも受付の女性と少し言葉を交わした俺は、ギルドを出道具屋に向かった。もちろん目的は……錬金術師のセットだ。三万ペルグは余裕で貯まったので、さっそく購入しようと思う。

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