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29、攻略サイト確認と二度目の夕食

 めぼしい記事が見つけられなくて攻略サイトを閉じた俺は、華の成果を聞こうとスマホを近づけて口を開いた。


「華、何かあった?」


 すると華からはすぐに返答が来る。


『あんまりないんだけど……何ヶ月か前にリーングスの街のマップが広がったって発信した人がいて、フォロワーが凄く少ないからほとんど話題になってないんだけど、何人かが方法を教えて欲しいって返信してるみたい。でもその後で……何故か俺にしか行けないらしいって感じの発信があるよ』


 俺にしか行けないか……ということは、何かしら決まったクエストを受けないとマップが広がることはなくて、マップが広がらない限りはその部分には入れないってことなのだろうか。


「その人に連絡取れる?」

『メッセージ送ってみるよ。返信来るか分からないけどね……って、早っ!』

「え、もう来たの?」

『マジで……!?!? って返信が来た』


 華が笑いながら言った言葉が楽しそうで、俺もなんだか気分が上がる。ノリが良さそうな相手で良かった。


『他の人を連れて行ったんですか? って聞いてみたら、連れて行ったけど他の人は壁に阻まれて行けなかったんだって』

「そうなんだ……その人にどんな経緯でマップが広がったか聞いてみてくれない?」

『了解!』


 これで俺たちと同じクエストだったら、あの納品クエストでしかマップは広がらないってことだよな。でもあのゲームってNPCが本当に生きてるみたいだし、同じクエストを何度も繰り返してるとか、そういうのが想像できないよなぁ。


 例えばこれから俺たちがラッジとイリナからのクエストを終えたら、またイリナは魔力凝固症に罹って、ラッジはポーションを探し回るのだろうか。

 でもポーション不足ってここ最近のことで、前はそんなことなかったって攻略サイトに書いてあったんだよな。そうなると、ラッジがポーションを求めて薬屋の店主と言い合うこともないはずで……


 ダメだ、考えても分からない。あんまり深く考えずに、ただあの世界を楽しめば良いのかなぁ。


『真斗、返信来たよ。その人は鍛冶師らしいんだけど、NPCの鍛冶師に弟子入りしたらしくて、その鍛冶師の家に招待されたんだって。そしたらその家がマップの外で、急にマップが広がったらしいよ』

「クエストとかじゃないのか」

『そうみたい。だから他の人に同じクエストを受けさせて行けるように試してみることもできないし、あんまりこの情報は広めてないんだって』


 うーん、NPCに連れて行かれた場合のみ行けるようになるのかなぁ。今のところ共通点がNPCの案内ってところぐらいしかない。これが正解だったら、不思議な条件のマップ解放だよな。

 NPCと仲良くなってそのNPCが街の外側に住んでるか、そうでなくても街の外側に用事があるとかじゃないといけないんだから。


「この情報はどうする? 攻略サイトとかにあげる?」

『私は……知り合いに伝えるぐらいで良いかなと思うんだけど。梨奈とか拓実とか。この情報を広めたら、一気にたくさんのプレイヤーがリーングスに来ちゃうだろうし』

「確かにそうなると、住民に迷惑だよな」


 ゲームで住人に迷惑とか考える必要はないのかもしれないけど、あそこまでリアルなゲームだとどうしても考えてしまう。


『うん。だから梨奈たちに話してみるぐらいにしない?』

「そうするか。二人がリーングスに来れそうなら、マップの解放条件を試してみるのも面白そうだな」

『確かにそうだね。……あっ、もう良い時間じゃない? そろそろログインしようか』

「本当だ。じゃあまたゲームの中で」


 そうして俺は華との電話を終わりにして、またゲーム用のソファーに身を沈めた。



「マサト、さっきぶりだね」


 ログインして宿の部屋から出ると、ちょうどハナも部屋から出てきたところだった。現実では離れたところにいるのに、ゲームの中だとすぐ近くにいるって不思議だなぁ。


「なんか変な感じだな」

「ふふっ、本当だね。じゃあ下に行こうか」


 ハナと一緒に一階にある食堂に向かうと、既にラッジとイリナは席に着いていた。二人は俺たちに気づくと、大きく手を振ってくれる。


「ごめん。待たせたか?」

「いや、大丈夫だ。私たちも今来たところだからな。今夜の宿泊者用のメニューはこの二つから選ぶらしい。二人はどっちにする?」

「えっと……ワイルドボアのワイン煮込みと、フォレストスネークのステーキ?」


 マジか、フォレストスネークを食べるのか。確かに地球でも蛇を食べる人もいるって話は聞いたことあるけど……ちょっと抵抗感が強い。


「俺は煮込みかな」

「わ、私もそうする」

「了解。じゃあ私は……ステーキにするかな」

「俺は追加料金払って両方にするぜ!」

「おいラッジ、またそんなに食べるのか? お前はいつも食べ過ぎなんだ」

「まあまあ、いいじゃねぇか」


 ラッジは楽しそうな笑みを浮かべてイリナの言葉を受け流すと、さっそく店員さんを呼んだ。そして注文を済ませて数分後、美味しそうな料理が俺たちのテーブルに運ばれてくる。


「パンは一度だけおかわり無料なので言ってくださーい。じゃあごゆっくりー」


 緩い感じの店員さんがテーブルを後にしてから、さっそく実食だ。さっき現実ではお腹いっぱいに食べたけど、ゲームの中だとまた食べられるんだから不思議だよなぁ。


「んっ、美味しい!」


 ハナが煮込み肉を口にして頬を緩めた。俺もその言葉に促されて口に入れると……ほろほろと崩れる柔らかい肉に旨みが強いソース、絶品だった。


「凄いな。めちゃくちゃ美味い」

「こっちのステーキも美味いぞ。一口食べるか?」


 イリナがそう言って少し切り分けてくれたステーキは、見た目はただの鶏肉みたいだ。この見た目ならそこまで抵抗ないかも……


「じゃあ、一口だけもらうよ」


 イリナから受け取ったフォークをパクッと口に入れ、蛇だってことは考えないように口を動かすと……柔らかくて脂が乗っている美味しい肉に、自然と頬が緩む。


「……美味しい」

「そうだよな! この宿の食事は当たりだな」


 そう言って楽しそうに笑うイリナを見て俺たちは全員が笑顔になり、それからは楽しい夕食の時間を過ごした。

 これで今日やるべきことは、ゲームの中も現実も終わりだな。明日は朝早くからラナック討伐になるし、今日は早めに寝ておこう。

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