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22、思わぬ出会い

 ハナは泣きそうな表情で薬屋の前にいる男性に近づき、躊躇いがちに声をかけた。


「あの、すみません。話が聞こえてしまったんですけど、私は薬師です。ちょうどポーションを持ってるので売りましょうか?」

「え、ほ、本当か!?」


 男性はハナの言葉を聞いて勢いよくこちらを振り向くと、ハナの手をガシッと掴んで頭を下げた。


「ぜひ、ぜひ売って欲しい……!」

「もちろんです。あの、ここだと目立つので場所を移動しませんか……?」

「あ、ああ、そうだな」


 人通りの少ない市場の端に移動した俺たちは、改めて男性と向き直った。男性はガタイが良くて体を動かす仕事をしてることは明らかだけど、顔色が悪くて目の下に濃い隈があるのを見るに、最近はあまり寝ていないのかもしれない。心なしか、頬がコケ始めているようにも見える。


「先ほどは突然手を掴んだりしてすまなかった。俺はラッジだ。冒険者をしている。イリナという仲間と二人でやってるんだが、そのイリナが魔力凝固症にかかっちまったんだ。それで融解ポーションは頼んだんだが、納品まであと数ヶ月はかかるって言われて、それまではポーションで命を繋いでおかないといけないのにポーションがなくなって……お願いだ、ぜひ俺にポーションを売ってくれ!」


 ラッジと名乗った男性は、そこまでを一息に説明するとガバッと頭を下げた。しかし俺たちは頭に疑問符がいくつも浮かび、すぐに反応することができない。


「あの、俺たちは異世界から来たんです。なので魔力凝固症? や融解ポーションがどんなものなのかよく知らないのですが」

「……ああ、そうか」


 それからラッジさんが軽く説明してくれたところによると、魔力凝固症とは生まれつき魔力が体に備わっている人にだけ起こり得る病気で、魔力が体の中で固まり流れなくなってしまうのだそうだ。

 発症原因は不明、しかし治療法は確立されていて、融解ポーションという薬を飲めばすぐに治るらしい。ただ問題は、そのポーションを作れる人材がかなり少ないこと。


 融解ポーションは錬金術師しか作れず、しかもその中でも一部の腕が良い人たちにしか作成できないのだそうだ。だから注文しても数ヶ月待ちになってしまい、その間はポーションを飲んで病気の進行を遅らせるらしい。

 ただ今はどこにもポーションが売っていなく、ポーションを飲まなければ魔力凝固症は急速に進行し、数週間で命を失ってしまうのだとか。


 ……それってかなり怖い病気だよな。


「それは危機的な状況ですね。私が持っているポーションは全て売っても構いません。今は八本ありますが、それで足りますか?」

「は、八本も! そんなに良いのか!? 本当にありがとう……ありがとうございます」


 ラッジさんは瞳を潤ませながら、何度もお礼を口にしている。ポーションがなかったら命を落とすんだから、当然だよな……でも融解ポーションが手に入るまで数ヶ月待ちだって言ってたけど、それまで八本で保つのだろうか。


「ちなみになんですけど、ポーション一本で何日ぐらい効果があるのでしょうか?」

「……約一日だ。基本的には毎朝ポーションを飲むようにと、そう言われている。ただ二日に一本でもなんとかなるし、それだけ猶予ができれば俺が薬草を取りに行ける」


 一日一本!? それじゃあ全然足りないじゃないか……これはポーションを手に入れる術より、融解ポーションを手に入れる方向で考えた方が良い気がする。


「融解ポーションの作り方って分かりますか? 俺は一応錬金術師なので、もしかしたら作れるかも……」

「え、そうなのか!? ゆ、融解ポーションは、ヒーリ草、香石、夜光華、ラナックの角で作れるらしい。もし作ったことがないなら、一度試してみてくれないか……?」


 俺はラッジさんのその言葉を聞いて、驚きで少し固まってしまった。だってその四つの素材は……俺が作った錬金ポーションの素材そのものだったのだ。

 ということは、あれって融解ポーションだったのか。


「俺、融解ポーション持ってるかも」

「……はぁ!?」

「……え!?」


 俺の呟きにラッジさんとハナが一拍遅れて声をあげ、かなり周囲の注目を浴びて目立ってしまったので、俺たちは場所を移動することにした。

 目的地はもちろん、ラッジさんの仲間であり魔力凝固症に罹患しているイリナさんのところだ。


「それで、なんでマサトが持ってるの?」

「この前さ、錬金でポーションが作れないか試してみたって言ったじゃん。その時に使った素材が、ラッジさんが言ってたやつだったんだ。三つは元々持ってたから入れてみて、ラナックの角はちょうど市場で錬金に使えるって売ってたから、たまにはこういうのも買ってみようかなって」

「マサト……! それ、金はあるだけ出すから売ってくれ、頼む!」


 ラッジさんが足は止めずに、しかし必死な様子でそう言ってまた頭を下げたので、俺はすぐに頭を上げてもらって頷いた。


「もちろんそのつもりです」


 その瞬間、ピコンっと音が鳴ってウィンドウのクエスト部分に赤いビックリマークが表示された。そこを開くと……



 クエスト:融解ポーションを納品せよ

 内容:ラッジが仲間のイリナを助けるために融解ポーションを欲している。できる限り早くに納品してあげよう。

 報酬:???

 期限 : 一週間



 冒険者ギルドの依頼じゃないクエスト、初めてだな。なんかこれワクワクしてきたかも。これって錬金術師は全員がやるイベントなんだろうか。

 このゲームってこういうクエストの出現条件とかも、全く分かってないんだよなぁ。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

面白いと思ってくださいましたら、ぜひ☆評価などよろしくお願いいたします!

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