20、新入生歓迎会
店内に入ると先輩にくじを渡されて、その番号の席に誘導される。仲良い人たちで固まりすぎないようにってことらしい。
「あっ、真斗くん! 席となりだね。よろしくね〜」
「夏樹先輩、よろしくお願いします」
夏樹先輩が笑顔で俺の隣に来てくれて、俺は緊張していた体から力が抜けた。周りが話したことない先輩ばっかりじゃなくて良かった……一つ上の先輩とは何人か交流があるけど、三年生四年生、さらにその上の六年制学部の人達や大学院生なんて全く知らないのだ。
大学院生はもう二十三歳とか、二十四歳とか、それより年上の人たちもいるんだよな……大人だ。十八になって大学に入って子供を抜け出した気がしたけど、まだ大人の仲間入りは遠いな。
「皆さん、今日はゲーム研究会の新入生歓迎会に来てくれてありがとうございます! ゲーム研究会はかなーり緩いサークルなので、気負わずに楽しんでほしいです。じゃあ皆でゲームの話とかして盛り上がりましょう。注文は各テーブルごとに上級生がお願いします!」
遠くにいる男の先輩が立ち上がって開始の合図をすると、さっそくテーブルごとにガヤガヤと話が始まった。俺たちのテーブルも夏樹先輩が主導で話が始まる。
「じゃあまずは料理を頼んじゃおうか。一年生は先輩たちの奢りだから好きに食べて良いよ。私のおすすめはさっきも言ったけどカルボナーラと……あとはこれとこれ!」
そう言って夏樹先輩が指差したのは、生ハムが載ったオシャレなパスタと海鮮のトマトパスタだった。海鮮の方は唐辛子マークがついていて辛いみたいだ。
「じゃあ俺はその海鮮のやつにします」
「おおっ、真斗くんは辛いのいける口だね? じゃあ私もそれにしよっかな。もう一人の子はどうする? 先輩も決めてくださいね」
四人掛けテーブルなので俺と夏樹先輩の他に二人いて、一人は一年生でもう一人は夏樹先輩の先輩らしい。ということは、三年生以上ってことだな。
「私はパスタがあまり得意ではなくて、こっちのチキン煮込みでも良いでしょうか?」
「もちろん良いよー!」
「じゃあこれで」
「はーい。先輩は決まりました?」
「俺はこれかな」
メニューのページをペラペラとめくっていた先輩が指差したのは、デザートだった。
「え〜、最初から甘いものですか?」
「寝坊しすぎてさっき昼ご飯食べたんだよ。だからお腹空いてない」
「……もう夜の七時とかですけど。まあ良いや、じゃあティラミス頼みますね」
「お願い。あっ、あとコーヒーも」
「はーい」
夏樹先輩は呆れた様子で笑いながら、先輩の言葉を受け流している。なんか、大学っていろんな人がいるよなぁ。
それから料理が運ばれてきて食事をしながら同じテーブルの人たちと話をしていると、そろそろ食事も終わる頃ということで、席移動が解禁された。すると先輩たちはすぐに席を立って仲良い人のところに向かう。
俺も梨奈と拓実を探すか……あと華もと思って周囲を見回すと、ちょうど数個先のテーブルにいる華と目が合った。
「もう食べ終わった?」
俺はとっくに食べ終わっていたので席を立って華の下に向かうと、華は嬉しそうに頷いてくれた。
「うん。私の他に先輩たちしかいなくて、ちょっと緊張したけど……さっきその先輩たちが、一年生を連れてきてあげるって向こうに……」
「華ちゃん、連れてきたよー! あっ、もしかしてお節介だった?」
先輩が俺と華の顔を交互に見てそう言ったので、俺はすぐ首を横に振った。
「いえ、俺たちもさっき仲良くなったところなので」
「なんだ良かった。じゃあ一年生連れてきたから仲良くね!」
そう言って先輩に背中を押されたのは……まさかの梨奈と拓実だった。
「なんだ、二人か」
「あれ、二人とも知り合いだった?」
「いえ、俺が知り合いなだけで、華とはそんなに話してないと思います」
「そっか。それなら良かった。じゃあ華ちゃんまたねー」
先輩はニコッと人懐っこい笑みを浮かべると、他の先輩に呼ばれて別のテーブルに向かっていった。
「座っていいか?」
「あ、もちろんどうぞっ」
「ちょっと拓実、華を怖がらせないでよ」
「なんだ、梨奈もこの子と知り合いなのか?」
「さっき部室で少しだけ話したの。それで生産職だからって真斗に紹介したんだけど、もう仲良くなったんだ」
梨奈のその言葉に華は頷いても良いものかって躊躇ってたみたいだけど、俺はすぐに頷いた。
「もちろん。貴重な生産職仲間だからな」
「確かにあんまりいないよなぁ」
拓実が椅子に座りながら呟いた言葉に、梨奈もその隣に座りながら何度も頷く。二人がそこに座ったってことは、俺は華の隣だな。
「俺は内藤拓実、よろしくな」
「わ、私は夏川華です。よろしくお願いします」
「そんな硬くなくてもいいぞ? 拓実って呼んでくれ」
「……い、いいのかな?」
「もちろん!」
華は拓実の派手な外見に少し気後れしていたようだけど、意外にも人懐っこい拓実の様子に警戒心を和らげたらしい。
「じゃあ、拓実。これからよろしくね」
「おうっ! それで華も錬金術師なのか?」
「ううん。私は薬師だよ。薬学部だからその流れで」
「え、華って薬学部だったの!? 何それ頭良い!」
梨奈がかなり驚いた様子で瞳を見開いた。やっぱり驚くよなぁ。うちの大学の薬学部はかなりレベル高いから。華も将来的には薬の研究員とかになるんだろうか。
「薬師ならポーションとか作ってるか?」
「うん。まだそんなに効果が高いのは作れないけど……」
「おおっ! それならポーション売ってくれないか? お金は定価を払うから! 最近ポーションが売り切れのことが多くて困ってるんだ」
「分かる。私ももう何本かしかないよ。華、良ければ私にも売ってくれないかな?」
二人のそのお願いに、華は嬉しそうに頬を緩めて頷いた。確かに最近、ポーションはあんまり売ってないかもしれないな……俺も華に余裕があったら買わせてもらおう。
「定価より少しなら割引できるよ……?」
「ほんとか! それめっちゃありがたい!」
「今度フレンド登録しようね」
そうして二人とも打ち解けた華を含めて、四人で楽しく談笑して新入生歓迎会の楽しい時間は過ぎていった。




