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16、臨時パーティーとクエスト

 広場から冒険者ギルドはかなり近かったようで、歩いて五分ほどで到着した。ユーテ村にあったギルドとは比べものにならないほどの規模だ。


「うわぁ……テーマパークみたい!」

「これはかなりテンション上がるなぁ」

「早く入ろうぜ。まだ時間あるし、一つぐらい依頼を受けるだろ?」

「もちろん」


 入り口のドアを開けて中に入ると、夜遅い時間なのにかなり賑わっていた。ほとんどがプレイヤーみたいだ。やっぱり仕事とか学校が昼間にある人は多いし、夜はこうなるよな。


「依頼書はあっちに貼られてるんだ」


 そう言ってナイトーが指差したのは、建物の右側の壁一面だ。その壁の前には何人もの冒険者が集まっていて、それぞれ依頼を吟味している。

 俺達も壁に近づいて依頼内容を見てみると、村にはなかったような面白い依頼がいくつもあった。


「どれを受ける?」

「うーん、これとかどう? 夜光華の採取だって。月の光の下でしか咲かないとか面白そうじゃない?」

「それは俺も受けたことねぇな。じゃあそれにするか! マサトもいいか?」

「もちろん良いよ」

「じゃあ決まりだな!」


 それから俺達は受付に向かって依頼の受注処理を済ませ、ウィンドウでクエストが始まったことを確認してからギルドを後にした。



 クエスト: 夜光華を採取せよ

 内容: リーングスの街の薬師が、調薬のために夜光華を探しているようだ。三つ以上採取して冒険者ギルドに納品しよう。

 報酬: 2000ペルグ



 ちなみに冒険者が一緒に一つの依頼を受ける時はパーティー登録が必要だけど、今回は正式な登録ではなく臨時パーティーの登録にしてある。


「俺らでパーティーを作らないのか?」

「うん。俺は生産職だから、そのうち依頼は受けなくなると思うんだ。だから少なくとも、俺をメンバーには入れない方が良いよ」

「そういえばマサトは錬金術師だったっけ? 確かにそう考えると、パーティーは組まない方が良いかもなぁ」


 生産職をメンバーにして、街の外に行くのは戦闘職の人たちだけってパーティーもあるんだろうけど、俺はそれならパーティーに入らなくても良いかなと思う。

 別にパーティーにならなくても、普通に友達として作ったアイテムを融通するとかできるしな。


「一緒に依頼を受けたかったら、こうして臨時パーティーを組めば良いもんね」

「確かにそうだな。よしっ、じゃあ依頼を頑張るか。夜光華は東の方向だったな」


 街を出てマップや方角、それからたまにある標識に従って歩いていると……十分ほどで最初の魔物と遭遇した。


「ワイルドボアだ! あいつ、肉が高く売れるんだ」

「良いね。じゃあ私は後ろから援護するよ」

「俺は……リーナの周囲を警戒しておく」

「了解! 俺はあいつを倒してくるぜ」


 ナイトーはそう言うと、ニヤッと楽しそうな笑みを浮かべてインベントリから大きな剣を取り出した。そしてワイルドボアに向かって一直線に駆けていく。

 やっぱり魔物との戦闘で生産職は役に立たないな……俺が活躍できるとしたら、夜光華の採取の時ぐらいしかなさそうだ。


「おりゃあぁぁ!」


 ナイトーはこちらに突進してくるワイルドボアに正面から突っ込んでいき、ぶつかるっ! と俺の心臓が縮み上がった瞬間に、少しだけ左に体を逸らして間一髪でワイルドボアを避けた。そして避けたのと同時に剣を振るって、ワイルドボアの首から胴体に大きく傷をつける。


 しかし剣があまり深く入らなかったようで、ワイルドボアは体から血を流しながらもまだ倒れない。


「ナイトー、下がって!」


 今度はリーナの出番だ。ナイトーに向けて今にも突進をしようと狙いを定めているワイルドボアに、大きめのファイヤーボールを正確にぶつけた。


「ナイスっ!」


 するとワイルドボアは今度こそ体をぐらりと傾かせて地面に倒れ……そのまま動かなくなった。


「やっぱり前衛がいると凄く楽かも」

「俺も思った。後衛の援護があると一気に倒すのが楽になるな」

「二人ともお疲れ」

「マサトもな」

「俺は何の役にも立ってないけどな。やっぱりもうこの辺の魔物は錬金術師じゃ厳しいかも。いや、それよりもレベルの問題?」


 俺のその言葉を聞いて二人はウィンドウを確認し、二人の方が俺よりもかなりレベルが高いことが判明した。


「……あのさ、丘に着くまで俺も魔物と戦って良い? 危なそうだったら助けて欲しい」

「もちろん良いぜ! へへっ、俺に任せろ」


 俺の肩に腕を回してそう言ったナイトーは楽しそうだ。リーナも笑顔で頷いてくれたので、俺達は予定よりも回り道して丘に向かうことにした。


 それから何体もの魔物を倒しながら進んだことで、俺のレベルは12に上がった。自分の実力よりも強い魔物を倒すとレベルは上がりやすいみたいだ。


「そろそろ丘に着いたけど、夜光華はあるかな」

「結構デカい植物なんだよな?」

「俺達の腰の高さぐらいの木に、たくさんの小さな花が咲いてるって話だけど……」


 辺りを見回しながら、夜光華を見逃さないようにと慎重に歩みを進めていると……リーナが「あっ」と声をあげて遠くを指差した。


「あれじゃない?」


 目を凝らしてそちらを見てみると……確かに低木がいくつかあるのが見える。でもその周りに何か飛んでる気がするけど……あれって、虫?


「もしかして、蜂か?」

「ナイトーも気づいた? 何かいるよな?」

「本当だ。言われてみれば何か飛んでるかも。ちょっと近づいてみようか」

「じゃあ慎重に行くぞ」


 それからナイトー、俺、リーナの順で列になり夜光華らしき植物に近づいていくと、あと数十メートルというところで、俺たちの耳にブーンという羽音が聞こえてきた。

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