第七十四話 すれ違い
今回のお話しですが、作者の文章力のせいで読みづらいかもしれません。今話の内容は、おおよそ以下の通りです。
・ぐだぐだ会議
・処刑直前に突撃しようぜ
・スタンクさん王族と一緒に処刑されるってよ
・翔太、恋心を受信する
だいたいこんな感じです。ですが、本文も読んで頂ければ作者としては嬉しいです。
第七十四話 すれ違い
サイド 矢橋 翔太
馬車の外にしつらえた大型テント。映画で自衛隊とかが使っていそうな物を建てて、そこに椅子や机を設置して緊急会議を開いた。
議題は当然、『明日行われるという王家の処刑に関して』である。
「ええ、では会議の進行は大和連合より私、レオンが務めさせて頂きます」
参加者は大和連合側から大西さん、田中さん、自分。そして司会進行役で菊池さんことレオンさん。山下さんは馬車の護衛、ホムラさんはイリスについている。
そしてリースラン王国側よりドーラムさん、ヌーヴェルさん、そして近衛騎士のお二人。計四名が出席する形となる。キリングさんは王都で情報の収集と、王族派の統制に動いているらしい。
「まず、我々は『リースラン王家を革命軍より救出する』という点で意見が合致している。これでよろしいでしょうか?」
「はい」
「うむ」
大西さんとドーラムさんの答えに頷き、菊池さんが続ける。
「では、今回の会議は『王家の処刑を阻止する事』を如何にして実行するか。そこをゴールとさせて頂きます」
これもまた代表二人が頷くのを確認し、菊池さんが『お手元の資料をご確認ください』と告げた。
会議前に配られた資料。自分を含めた大和連合側は昨夜のうちに内容を知っているが、リースラン側にまではまだ届いていなかった。
故に、その内容に彼らが目をむくのは仕方のない事だろう。
「ぬ……」
「な、なんだこれは!?」
小さく息をのむドーラムさんとヌーヴェルさん。近衛は片方が深く眉間の皺を刻み、もう片方が声を上げた。
そして、声を上げた方が資料を手に大西さんへ視線を向ける。
「ま、待っていただきたい。この資料はどうやって作ったのですか?」
日本ならありふれていそうな紙と、パソコンで打った様な字。それらが気にならないぐらいに、彼らは動揺していた。
無理もない。資料には『王都パードゥムの全体図』『王城までの複数のルート』『王都に張り巡らされた地下通路』『王城と尖塔の見取り図』が記載されていた。
明らかにリースランにおける国家機密である。というか、たぶん地下通路に関しては彼らも知らない。
「まさか、ドーラム殿……」
「いや、違うぞ?」
近衛達から疑いの視線を向けられるドーラムさんだが、小さく首を振る。
「そもそも儂とて、ここまでの事は知らん」
「ええ。我々が独自に集めた情報です。王城の地図など、貴方がたの方がお詳しいはず。間違った点などありましたら、ご指摘ください」
大西さんが無表情のまま告げる。
そう、この資料は彼と田中さんが集めてきたものだ。大西さんの黒魔法で姿を隠し、その状態でここ数日大和連合から持ち込んだという魔道具で王都を調査したらしい。
資料の精度について不満はないらしく、近衛達は黙る。代わりに、視線には強い懐疑が生まれていた。
「……失礼ながら、この情報の出所を教えて頂きたい」
「お伝え出来ません。こちらにも独自のルートがある、と思って頂ければ」
「それは………っ!いえ、失礼した。会議を続けてください」
立ち上がりかけた近衛騎士だったが、小さく礼をして席に座りなおした。
失礼かもしれないが、少し意外だった。もっと食いついてくるか、下手したらこちらと革命軍との繋がりを疑われるかとも思ったが。
同じく意外そうな大西さんだが、それを誤魔化す様に菊池さんが口を開く。
「これが大和連合の集めた情報となります。また、そこに書かれた地下に張り巡らされた地下通路ですが、革命軍をそそのかした魔族達が使用していると思われます」
「……失礼。この地下通路ですが、墓地と街外れの広場に異様なまでに繋がっておりますが」
「……街外れの広場には埋葬待ちとして、革命で亡くなった方達の御遺体が……その……」
言葉を濁す菊池さんを前に、ドーラムさん以外のリースラン側に強い嫌悪感が顔に浮かぶ。ぶっちゃけ自分も同じである。
「魔族どもめ……死体を食っているのか……」
近衛の一人がボソリと呟く。まあ、そういう事だろうな。
「んん!話しを王族の皆様を救出する件に戻させて頂きます」
「うむ。お主らも落ち着け。今は堪えよ」
「「「はっ」」」
ドーラムさんの言葉に、ヌーヴェルさんと近衛達が従う。
……よく考えれば、彼ら彼女らはこの王都に住んでいたのだ。そして、そのご家族は……。
やめよう。これは自分が今考えるべき事ではない。
「このように張り巡らされた地下通路ですが、王城近くにある尖塔には存在しません。また、この塔に王子と王女が捕まっているとされています」
田中さんからの聞き取りでアミティエさんが描いた絵を見る。三階部分までは普通の西洋建築でみる建物なのだが、そこから上は円柱型の塔が伸びていた。屋根が鋭く尖っている。
「その塔は昔教会だったものです。今は改装され、病にかかってしまった王族の方に療養して頂くための場所となっております」
ヌーヴェルさんの答えに、カーミラと戦った街を思い出す。
そう言えば、『あの街の教会は古いから大昔に刻まれた神術の結界がある。だから吸血鬼が入れない』とアミティエさんが言っていた。
もしやこの尖塔も同じなのか?
教会の神術については大西さん達にも話してある。彼らも同じ結論に出たようだ。
「なるほど。元教会であれば結界が残っているかもしれませんね。それで魔族が近寄り難いと」
「恐らく……神術の結界など、眉唾物と思っておりましたが」
ヌーヴェルさんの言葉に、どんだけ神術はおとぎ話し扱いされているんだと思考がそれる。
たぶん教会が色々やったんだろうなぁ……。
「しかし、敵もここは動きづらいとわかっているはず。だと言うのに殿下達の幽閉先に選んだと言う事は、罠ではないか?」
「大和連合側としても同じ意見です。ここに踏み込むのは難しい。ですので、王家の救出は処刑執行の直前を狙うのを提案します」
大西さんの言葉に、ヌーヴェルさん達が顔を見合わせる。
そして、代表する様にヌーヴェルさんが口を開いた。
「お言葉ながら、相手も処刑場への護送中と処刑執行時にこそ警戒を最大にするはず。また、処刑は昼頃に行われます。場所も王城前の広場ですので、移動時間はほとんどありません。その状況での救出は最も難易度が高いかと」
「……一理ありますね。では、強引にでも今夜救出しますか?あるいは明朝に?」
「……我々としては、今夜『殿下達の』救出をしたいと思います」
「ふむ……」
大西さんが少し考え込む。
「しかし、吸血鬼をはじめ魔族は日の光がない時間帯こそ最も活発に動きます。夜は奴らの時間と考えるべきでは?まだ明朝の方が成功率は高いと思いますが。王城に窓は多い」
「いえ。ここは……ここは、『陛下と王妃様の救出は諦め、殿下達の救出のみに注力すべき』かと。王城までは、手を伸ばすべきでありません」
えっ、ここに来て目標の変更か?
「……最初に、王家の救出を目的としていると合意がとれたはずですが」
「はい。我々としても、勿論王族の方々全てをお助けしたいと考えております。しかし、それが不可能であるのならせめて殿下達だけでも、と……」
本当に苦渋の決断なのだろう。彼らの顔は暗く、言葉は重い。
だが、それを気にした様子もなく大西さんが問いかけた。
「王子と王女のみなら夜間の救出は可能だと?」
「いかに魔族が革命軍にいるとは言え、奴らの大半は普通の人間です。夜間の襲撃であれば、対処するのは魔族のみで済むかもしれません」
「でしたら、夜間に王家の方々全員を救出すればいいのでは?」
「それはあまりにも難しすぎます。王城の内部はかなり複雑な造りをしておりますので、侵入して陛下達をお連れして逃げるには時間がかかり過ぎるかと。その間に包囲されてしまえば逃げるのは不可能です」
資料をペラリとめくる。確かに王城の見取り図は複雑だ。隠し通路やら隠し部屋やらがかなりある。
そして、革命軍と思しき人員は王城周りだけで五千近い。この街の人口はまだわかっていないが、それでも二万は超えているだろう。
正直、半分は潜在的な革命軍と考えた方がいいかもしれない。そして王城は街のど真ん中。包囲されるのは確実か。ついでに言えば、ちょいちょい王都周りの都市にも奴らはいるし。
だが。
「我々であれば、『たかが』一万人の兵士ていど容易に逃げ切れます。殲滅せよと言われれば、厳しいですが」
「……それは」
ヌーヴェルさんが視線を少し逸らす。彼女が口に含んだまま言えなかった事を、隣に座るドーラムさんが告げた。
「端的に言って、お主らの力がどれ程の物かわからんのよ。儂らは」
あっけらかんと言ったドーラムさんを、大西さんが睨む。
「我らの実力を疑うので?」
「正直に言うと、その通りじゃ。なんせこやつ等はお主らの戦いを知らん。儂とて、そこの翔太殿がラルゴという化け物と戦うのをチラリと見た程度にすぎん」
彼らの視線がこちらに向く。
あー、まあそれもそうか。自分達は傭兵団の人達も含めて三十人ちょい。そして王族派は例の隠れ家以外にも潜伏しているのを含めて四十ぐらい。合わせて七十から八十人ぐらい。
たったそれだけの人員で、万の相手に挑むのは普通に考えたら自殺行為だ。
「では、力を見せよと?」
「儂としては十分なんじゃがのー。こやつ等がのー」
少しいじけた様に言う爺。その横で、ヌーヴェルさんが顔をしかめた。
「いくらなんでも、一万以上の敵に百にも満たない数で挑むには無理があります。大和連合の方々が一騎当千の猛者だとしても、それでも数で負けるのです」
「……ここまで無能を晒し続けてきた方々が随分と言いますね」
あ、大西さんがキレた。
「なっ」
「こちらが王城や尖塔について調べている間、貴方達は何をしていたのですか?王都での情報収集をすると言っていましたが、処刑執行を知ったのが前日とは」
「我らとて全力を尽くしました。しかし相手は指揮系統すら機能していない相手。聞く相手によって日取りも場所も変わってしまうのです」
「では、せめて我々に王城その他の地図を教えてくださればそちらの調査に回す時間を他に使えたのですがね。例えば、処刑についてとか」
「王城の事は我らとて全てを知っているわけではないと言ったはずです。それに、今の王城には魔族の罠が仕掛けられているのではないのですか?」
「……貴方達、本当に王家を助ける気があるのですか?随分と消極的な意見ばかり」
「現実的な意見を言っているに過ぎません。理想と現実は違います」
大西さんとヌーヴェルさん達の間で視えない火花が散る。
まずい流れだ。ただでさえ時間がないのに責任だのやる気がどうのと言っているのは不毛に過ぎる。
その時、テント内に強く手を叩いた音が響いた。
「失礼しました」
菊池さんだ。一時的に彼へと視線が戻ると、彼はそのまま言葉を続ける。
「整理させて頂きます。大和連合側は『王都にいる革命軍を全て振り切って王家を逃す』。王族派の方々は『敵の数を考え、王子と王女だけでも救出する』。こう考えているという事で、よろしいですか?」
「……ええ」
「はい」
両者の言葉に菊池さんが頷き、俺やドーラムさんへ視線を向けてきた。
「何か、他にご意見のある方はいらっしゃいますか?」
「そうじゃなー。儂としては、陛下達もお助けしたいのが本音じゃ」
「ドーラム様」
「リスクは承知。しかし、儂は不可能ではないと思っているぞ。相手は烏合の衆も同然。これが統制の取れた敵兵一万や二万であれば不可能だが、下士官も何もおらん集団だ。精々が田舎ギャングの元締めか、裏切った地方の騎士程度」
ニヤリと、ドーラムさんが不敵に笑う。
「一万の敵と戦うのではない。十数人程度の集団が千個ほど蠢いている中を駆け抜けるだけじゃ」
「……だけと言いますが、魔族には人を操る者もいると聞きます。それに奴らは単独で騎士十人以上の戦力。個々の集団でしか動けないとしても、魔族と戦っているうちに群がられれば」
「そこはほれ。一騎当千の強者共がおるではないか」
ドーラムさんがこちらに視線をよこしてくる。えぇ、そこは田中さんにパスしてくれよ。
だが、スキルで広がっている感覚が田中さんは机の下で大西さんの手を掴み、必死に宥めているのがわかった。なら、仕方がないか。
眼光が発動しない程度に、目に力を込める。強いショックを受ける程ではないが、ヌーヴェルさん達の体がびくりと震え、汗が頬を伝うのが見て取れた。
「見ての通りの若輩者ではありますが、腕力には多少の自信があります。並みの魔族であれば、鎧袖一触にしてみせましょう」
いや、並みの魔族って知らんけどね?とりあえずドーラムさん達が捕まっていた館にいた吸血鬼ぐらいならやれるけど。
内心全然自信がないまま言った発言だったが、スキルのおかげで説得力が出たらしい。彼らの瞳に少しだけ希望がともる。
「……本当に、可能なのですか?」
「可能性は十分にある。自分はそう思っています」
恰好だけ自信満々に頷く。こういう役目、俺じゃないと思うんだけどなぁ。
満足げに頷くドーラムさん。爺、むしろお前が若者ら安心させろや。特に俺。たぶんこの中で一番若いからね?甘えさせて?
……いや、けど甘えるならヌーヴェルさんがいいわ。男装の美女って、いいよね。
「……わかりました。王家の皆様を全員救出する。それに同意します」
「では、話しを戻させて頂きます。その方法についてです」
菊池さんの言葉に、心の中でため息をついた。そうじゃん。全然話し進んでないじゃん。
「……我らとしては、やはり処刑執行直前を推します。集まった聴衆や革命軍の視線は否が応でもそちらに集中するはず。接近は比較的容易になるはず」
復活した大西さんの言葉に、ヌーヴェルさんが頷いた。
「私達もそれに賛成します」
「では、具体的なプランを――」
* * *
夕方近くなり、空が赤く染まる。ようやく会議が終了し、テントの外に出て背中を伸ばした。
あ゛ー、めっちゃ疲れた。むしろ活き活きとしていた菊池さんが本気でわからんわ。
とっ、ヌーヴェルさんもテントから出てきたので、そちらに向かう。
「ヌーヴェルさん」
「これは、翔太殿」
小さく会釈しながら声をかければ、彼女もローブをつまみカーテーシーで返してくれた。
「会議ではお見苦しい所をお見せしてしまいました。申し訳ございません」
「いえいえ。こちらこそ色々とありまして……」
互いに頭を下げあい、本題に入る。
「先ほどの会議では関係のない質問でしたのでお聞き出来なかったのですが……スタンクという人物に心当たりはございませんか?」
「スタンク……そう言えば、その様な名前の傭兵も囚われていると聞きました」
「っ!?彼がどこにいるか知りませんか?俺の知り合いでして……」
「それは……」
ヌーヴェルさんが、少しためらった後に口を開く。
「王家の処刑の前座として、彼の処刑を行うと聞きました。それこそ、陛下の斬首の直前に」
彼女の言葉に、思わず頭を抱える。
あの時、館でラルゴと戦った時に時間稼ぎ目的でスタンクさんの事を奴に聞いた。まさか、それがこんな所で響くとは。
あの野郎。是が非でも明日の処刑に俺を引きずり出すつもりだな?
「すみません、ヌーヴェルさん。少しお話しがあります。大西さんにも、聞いてもらわないと」
「……そのスタンクという御仁は、貴方にとってそれほど重要な方なのですか?」
ヌーヴェルさんの視線が、少し鋭くなる。
当然だろう。彼女としては、『若造がこの土壇場でやらかすかもしれない』という感じなのだから。
「重要かどうかは、わかりません。それほど親しいわけではありませんから」
せっかく立てた作戦に、今更ケチをつける気はない。元より彼らとはスタンクさんの救助は『ついで』と決めていた。
「けど、助けたい。助け出したい。そう思う人です」
だが、筋は通す。
彼にはいくつも世話になった。友人の忘れ形見であるアミティエさんのついでだったかもしれないが、それでも返すべき借りがある。
大和連合にも、ヌーヴェルさんにも極力迷惑をかけない。その上で、彼を助けたい。その為なら命以外は懸けてみせよう。
こちらの言葉に、数秒だけ沈黙した後。彼女は静かに微笑んだ。
「ええ、構いません。貴方達は少し待っていてください」
「「はっ」」
近衛の人達を待機させ、ヌーヴェルさんがついて来てくれる。
もう少し警戒されていると思っていたが……近衛の人達もこちらを見て気まずそうな顔をするだけだし。
「翔太殿」
「え、あ。はい」
ヌーヴェルさんが突然手を取ってきた。白い手袋越しに感じる小さくも柔らかい手の温もり。
大人の女性に近い距離で見つめられ、心臓がこんな時だと言うのに跳ね上がる。
「ぬ、ヌーヴェルさん?」
「『大切な方』が囚われている事への心配、とてもわかります。私も姫様の事を思わぬ夜はありません。どうか、その不安を抱え込み過ぎませんよう」
「は、はあ」
「お互い全力を尽くしましょう。貴方のお力、頼りにさせて頂きます」
「は、はい」
うわぁ、顔近い。夜会巻きとでも言えばいいのか。まとめられた栗色の髪からは良い匂いがする。
スタイルもモデルさんみたいだし、なんだかこうしているだけで頭がクラクラしそうだ。
そして、至近距離でこちらを力強く見つめてくるヌーヴェルさんに、自分は気づいた。
『まさかこの人……俺に惚れている……!?』
なんという事だ。しかし、この強い熱を帯びた瞳。可能性は高いのではないか?
だってこんな至近距離で俺を見つめてくるし、手まで握って。貴族令嬢ってその辺厳しいんじゃないの?それでもって事は、ほら。もう確定なのでは?
え、けどきっかけは何?このイケメンフェイスか?それとも吊り橋効果的な?あるいは手配書での悪印象から、実際会ってのギャップ?
おいおいマジかよ……男装の麗人と始まるラブロマンスが来ちゃったよ。俺の人生は実はラブコメだった?
苦節十五年。彼女いない歴=年齢の俺だったが、まさかこの様な出会いが待っているとは。
け、けどどうしよう。異世界の貴族令嬢とだなんて……俺、どうすれば。
「ま、任せてください!俺は、その、はい!頑張ります!」
「はい。私と貴方の思いは同じです。この戦いが終わったら、お話ししたい事もございます。それまで、絶対に生き残りましょう」
「はい!」
名残惜しいが、彼女の手を離しテントの中へ。そこには未だ不機嫌そうな大西さんと、それを宥める田中さん。そしてやりきった感を出している菊池さんがいた。
まだ熱気の籠ったテントの中だが、そんな事関係ない程に顔が熱い。
色々と考えるべき事はあるが、しかしモチベーションだけはかつてない程に高まっている。
王家の人達を助けてギルマスに貸しを作り、遠くないうちに竜の呪いを解いてもらう。スタンクさんを助けて後味の悪い状況をなくす。あとラルゴとベルガーは殺す。
そうしたら、俺も彼女の気持ちに答えられると思うから……!
「すみません、少しお話しがあります!!」
「うぉ、声でっか……」
大声にビクリと肩を跳ねさせる田中さん。驚いて椅子ごとひっくり返る大西さん。こっちを見て思わずと言った様子で口元を引きつらせる菊池さん。
鼻から蒸気が出そうになりながら、彼らにスタンクさんの事についてを告げるのだった。
安心してくれ、ヌーヴェルさん。いいや、マリアンヌさん。君を、そう待たせはしない!!!
読んで頂きありがとうございます。
感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。
Q.大西さん、王族や貴族に関わる案件ではぶっちゃけ人選ミスじゃない?
A.大和連合は人手が足りません。
ギルマス
「あやつでもだいぶマシな方なんじゃ。貴族や教会に恨みを抱えておる奴のなかではの。それ以外?よほどのアーパーな者以外儂の作った安全圏より出たがらんわ!それにやる事が……やる事が多い……!分身しても足らぬぅ……!」
アーパー代表。恐らくどっかで活動中な某チーム。
「スプラァァァァッシュ!……やっぱり、なんだかスプラッシュって単語エロイわね」
「この谷……少し、エッチですね。いえナニに似ているとかではなく」
「おっと、悪戯な風さんだ。自然現象だよ!本当だよ!信じて!?」




