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事前登録したら異世界に飛ばされた  作者: たろっぺ
第二章 異変の始まり
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第十四話 ダンジョンアタック

第十四話 ダンジョンアタック


サイド 矢橋 翔太



 近くの村にスタンクさんへの手紙を届けてもらうよう言ってから、ダンジョンの探索に入った。


 なお、手紙をお願いする時にアミティエさんが髪を一房切っていた時は『遺髪!?』と驚いたものの、単純に『ウチの髪色って珍しいから証明になるから』との事。


 髪は女の命って言うけど、一房もそんなあっさり……前に髪が長い理由を『いざとなったら糸代わりにできる』と言っていたのはもしかしたら冗談じゃないのかもしれない。


 森の深くへ入る前にフードを被り前の方でボタンを留める。これで『兜擬き』だ。


 このレザーコートのフードは裏地に薄くだが綿がいれてあり、多少なら衝撃を吸収できる。更に前の部分を止めれば首から鼻にかけてを覆い目元しか露出しない様にできるのだ。


 ただしあくまで『擬き』。本物の兜には劣る。だが金属製のヘルムは旅には向いていないのだ。というか今の装備でも正直暑苦しい。


「あった。足跡だよ」


「おぉ」


 そうこうしていると、アミティエさんが森の中に半魚人の足跡を発見する。


 言われて注視しなければわからない程度だが、確かに足跡らしき物があった。


「本当に半魚人だね……指の間に水かきがある」


「……そう言えば、俺が倒した奴らってもしかして歩哨か何か?だとしたら警戒されているかも」


「あぁ!?そうじゃん!」


 今更だがそう口にすると、アミティエさんが小さく首をふる。


「ううん。たぶんそれは違うと思う」


「というと?」


「出来たばかりのダンジョンに出てくるモンスターは知能がかなり低いんだ。時間経過でダンジョンが成長すれば別だけど、今は生前の行動を模倣しているだけだと思うよ。だから、こっちを警戒している可能性は低い」


「なーんだよかったー。つうか半魚人って弱いの?翔太が三体ぐらい倒したって言ってたけど」


「うーん、どうなんでしょう。そこまでヤバいとは思いませんでしたが」


「本来ならかなり危険なモンスターだよ?今もだけど」


 アミティエさん曰く、半魚人は人間ほどではないが高い知能を持つとされるらしい。まあ武器や布を身に着けていたし、納得だ。


 独自の文化に近いものがあり、そこで群れをなし生活する。狡猾で残忍な性格をしており、川辺などで人を襲い連れ去って食べるのだとか。


「奴らが一番怖いのは水の中にいる時。見た目通り魚みたいに動き回るからね。ただし、陸にいてもクマに匹敵する腕力と頑丈な鱗をもっているから、かなり危ない」


「はえー。じゃあ翔太が強かっただけかー」


 少し照れる。いやチートなんだけども。


 それにしても、確かに銛の力はクマに近かったが、それでも奴の爪ほどではない。『竜払い』でステータスが強化されたのもあるが、それ以上に半魚人の動きが鈍いからだと思う。


 なんというか……寝起き?みたいな印象だった。出来たばかりのダンジョンとはそういう事なのだろう。


「あ、あった」


「え、もう?」


 アミティエさんが指さす先。木々の隙間から、大きな岩山が見えている。


「あれがそうなの?」


「確かこの辺には、あんなはっきりわかる岩山はなかったはずだよ」


「……間違いないねー。私の『魔力視』でもアレが魔力で構成されているって出てるよー」


 なるほど。ではあれがダンジョンか。


「本当に行くんだね?」


「もちのろんだよアミティエちゃん!スタンク何某への恩返しさ!」


「レベル上げ……ガチャ……レベル上げ……ガチャ……」


 切実に戦力が欲しい。あるいは呪いの解除方法。その為には多少のリスクは負わなければ、何もできない。


「わかった。けど本当に危ないと思ったらすぐに撤退だからね?」


「「はい!!」」


「じゃ、行こうか」


「「おおお!!」」


 改めて意思確認をし、ダンジョンへ。



* *  *



警戒されていないというのは本当らしく、ダンジョンの前には見張りの類も存在せず、自分が遭遇した三体以外の足跡もなかった。


 そうして突入したダンジョンは、かなり大きな洞窟の様な構造をしていた。


 光源はなく、真っ暗な内部。通路の広さは人が三人並んで歩けるぐらい。そして、足首まで水で浸かっている。


 この水はダンジョンの一部ではなく物質として確立されているとホムラさんが言っていた。地下水かどうかはわからないが、水位が上がり始めたら撤退するべきだろう。


 半魚人は目以上に嗅覚で獲物を判断する事が多いらしく、この暗闇の中戦うのは人間側に不利と言わざるを得ない。


 言わざるを得ない、が。


「らぁ!」


「『ヒートウィッップ』!」


 現在、破竹の勢いで自分達はダンジョン内を駆け回っていた。


 光源はホムラさんの魔法で確保。出てくる半魚人は碌に連携も取れておらず、各個撃破が可能だった。


 基本的に二体か三体の集団で動いているのだが、この通路で銛を持ち複数戦うのは難しいのだろう。


 当然突きを放ってくるのだが、自分が前に出て体で受け、反撃で脳天をかち割る。幸い、天井は四メートルぐらいあるので剣先が引っかかる事はない。向こうも銛を振り下ろしてくるが、頭さえ守ればどうにかなる。


 そして、想像以上にホムラさんの魔法が猛威を振るっていた。


「もーえろー!」


 初級火炎魔法の、範囲攻撃技『ヒートウィップ』。効果は単純、炎の鞭を杖先から出して相手にぶつけるだけ。


 だが、その威力がとんでもない。


 なんせ長さが五メートル近くあり、それがとんでもない速さで振るわれるのだ。壁にぶつかってのたうつ蛇の様になろうが関係ない。親指ほどの太さをした炎の鞭が当たれば半魚人の頑丈な体が弾けるように削られ、打ち据えられた箇所が油でもかけられたみたいに燃え続ける。


 基本的に先制でホムラさんの魔法を撃ち込み、続けて自分が斬りかかる。基本的にこれで順調に倒せていた。


 当然、問題はある。


 例えば俺のダメージ。いくら鎧とスキルで軽減しても、かすり傷や軽い打撲は負っていく。


 例えば敵の位置や数。迷路みたいな洞窟で視界も悪く、何よりアウェイ。先制を取り続けるのは難しい。


 だが、それの対処もどうにかなってしまうわけで。


「『ヒール』」


「あー……この足音は後ろの方から三体来ているね。こっちの存在に気付いていると思うよ」


 自分の怪我は魔法で治せるし、敵の位置や数はアミティエさんが教えてくれる。


 この音が反響する場所で、よくもまあ水のバシャバシャという音だけで人数やら方角やらわかるものだ。彼女の有能さに舌を巻くのは何度目か。


「翔太君、ホムラさん。魔力残量は?」


「問題ない」


「私もまだまだ撃てるぜー!ひゃっほー!」


 自然回復のペースと消費スピードが大差ない。満タンとは言わずともそれに近い状態でキープできている。


「おかしいなぁ……ウチの知っているダンジョン探索って、もっと、こう……」


 アミティエさんが少し呆れた様な目で自分達を見てくる。いや、たぶん貴女も大概だと思うんだ。


 もしかしなくても冒険者ギルドで貴女が絡まれなかったのって、お父さんの異名だけじゃなく自身の戦績もあるんじゃ?


「おらぁ!『ヒートウィップ』!」


 見えてきた半魚人の集団に先制して炎の鞭が放たれる。


 杖から分離して暴れ狂うソレが、半魚人達の体を打ち据えた。たとえ知能が低かろうが痛覚はあるらしく、奴らの足が止まる。そこへ大きく踏み込んだ。


「おぉっ!」


 両手で握った剣で中央の半魚人の頭をかち割り、胴を蹴り込む。分断された残り二体。片方は魔法で右腕と武器を失っている。


 武器無しが水に落ちた銛を拾おうとしているあいだに、もう片方にタックルをしかける。


 銛が頭の横を通り過ぎていくが気にしない。肩からぶつかって相手を壁面に抑えつけた所に背後で銛を拾った奴が構えるのがわかった。


「『フレイムアロー』!」


 だが、それが突き出されるより前に炎の矢が側頭部に直撃。首から上を燃やしながら倒れ伏した。


 それを直感で察しながら、残り一体を押さえつつ右手でナイフを抜き相手の脇腹に何度も突き刺していく。


 三回目か四回目か。半魚人が痙攣した後消滅した。


「ふぅ……ナイスです」


「おうよぉ!そっちもよかったぜブラザー!」


 ハイタッチを求めてくるホムラさんにこちらも答え、パチンと少し大きな音が響く。


「お疲れー。ウチの出番ないね、本当に」


「……ジョーク?」


「半分はね。だって、普通ダンジョンにたった三人で突入とか自殺行為だし」


「そんなに?」


「君達がバカスカ倒している半魚人は一体でも村としては脅威なんだよねぇ……」


「はっはっは!それは私達が強すぎるからさ!」


 腰に手を当てて高笑いするホムラさんをスルーし、ステータスを確認する。


「あ、LVが上がってる」


「にゃにぃ!?」


 全レベルが『3』になり、合計が『15』に。通りで殴られても痛みが減ったわけだ。


「お、私も上がってる!」


 ホムラさんもレベルアップしたらしい。ガチャの方は……まだ十連には足りないか。


 このガチャ。特にピックアップとかなさそうだし、十連分たまったら回す方がいいのかな。それとも何かあるかもと溜めるべきなのか……悩む。


「うーん……?」


「ん?どうしたの、アミティエさん」


「いや、足音が減ったなって」


 壁に近づき耳を澄ませていたアミティエさんが、首を傾げる。


「そりゃあかなり倒したし、当たり前じゃない?」


 ホムラさんの疑問にアミティエさんが首を横に振る。


「いいや、それにしてもおかしいんだよ。ダンジョンのモンスターはコアが奪われるまで、ほぼ無制限に出てくる。倒されたら復活まで時間はかかるけど……それでも、そのペースが遅いんだ」


「それは……」


 少し、不気味だ。


 ダンジョンに意思があって、何か一大攻勢の準備をしている?それとも防備を更に厳重に?あるいは、アミティエさんも知らないような特性が?


 更に不思議な事に、『獣の直感』が危機を知らせてこない。それが余計に不気味さを深める。


「あっ」


「ホムラさん?」


 そう思っていると、ホムラさんがポンッと手を叩く。


「それ、私達のせいじゃない?」


「……あー」


「え、どういう事?」


 不思議そうなアミティエさんに、ホムラさんが『ムフフ』と得意げな顔で笑う。


「私達が吸収している経験値ってさ。別に魔力をそのまま吸っているわけじゃないんだけどぉ。それでも多少は影響しているっぽいんだよねぇ」


 彼女が持つ『魔力視』のスキル。それにより、魔力の流れが大まかにだが可視化されるらしい。


 そして、ホムラさんは自分達に吸収される『経験値』を少しだけ観測したわけだ。


「なにも魔力の塊をどうこうしたら経験値が入るわけじゃないみたいだけど、モンスターの復活は妨害してるんじゃない?」


「……なるほど。そもそもモンスターは魔力で構成されているから、それが散ってもまた復活する。けれどその魔力が減ったら」


「復活も大変になると。いやー、ホムラちゃん天才!崇めろぉ、称えろぉ!」


「けど参りましたね」


「え?」


「レベル上げとガチャの効率が……」


「あっ」


 撤退した場合スタンクさんが来たら渡す様の地図を作らなきゃ。と、アミティエさんに行って端から端までダンジョン内を暴れているのだが……モンスターが減っては意味がない。


 まあそれはそれとしてマップは埋めるが。


「翔太くーん……」


「あっ」


「ウチ、安全第一って言ったよね」


「勿論です!」


 慌てて気を付けの姿勢でアミティエさんに向き合う。やばい、怖い。


「それよりマジかー……ええ、私の経験値ぃ……」


「本当に……ダンジョン探索って……」


 嘆くホムラさん。頭痛を堪えるようにうめくアミティエさん。


「まあ、うん。君達が非常識なのは置いておくとして」


「はい」


「武器と防具の消耗は、どう?」


「あっ」


 アミティエさんに言われて、ようやく気付く。


 視線と手で触れて確認した所、剣はあちこち刃こぼれと僅かな歪み。防具は引っかいたような傷だらけとなっている。


「オトンが言っていたよ。新兵は自分の怪我だけ気にして、装備の点検を疎かにするって」


「ご、ごめん」


「まったく……見た感じまだ戦えそうだけど、装備は消耗品だってのを忘れちゃだめだよ?戦闘中に剣が折れたり、肝心な時に鎧が役に立たなくなった意味がないでしょ?」


「ごもっともです……」


 十割アミティエさんが正しい。どうやら少し、自分は浮かれ過ぎていたようだ。


 ダンジョンでレベルを上げられるなら、呪いの解除も、そうでなくとも竜殺しの難易度も変わると、ついつい舞い上がってしまった。


 それはそうとアミティエさんの後ろで『やーい怒られてやんのー』と己の尻を叩いて煽っている馬鹿はなんなのか。今の貴女がやっても誘っているようにしか見えないからね?


 たっぷり肉ののった尻を振るな。叩くな。興奮するだろうが。


「地図と音からして……たぶん、コアがありそうな所が近い気がするよ」


「え、そうなの?」


「うん。ここは元集落で、ダンジョンコアは大抵再現した空間の中で重要とされる場所にある事が多いんだ。族長の家とか、食糧庫とか。本能的に大事な物って思うんだろうね」


「なるほど……」


 そしてこの世界の住居などについてアミティエさんは詳しいと。であるなら、確かにコアが近いのかもしれない。


「というわけで、行こっか」


「え、どこに?」


「もちろん、ボス部屋」


「「マジで!!??」」


 てっきり『撤収』と言われるのかと。


「ここまで来たんだし、せっかくだから終わらせちゃおう。手柄が誰かの物になるの、いやでしょ?」


 少し悪戯めいた風に笑うアミティエさんに二人して頷く。


「そうこなくっちゃだよアミティエちゃぁん!」


「けど安全第一なのは変わらないからね?そこは気を付けてよ?」


「はーい」


 子供みたいにはしゃぐホムラさんに、それを宥めるアミティエさん。


 なんというか、どちらが年上なのかわからんものだ。



* *  *



そんなわけで、ボス部屋前に。


「あからさまですね……」


「あからさまだな……」


「え、そう?」


 唐突に『でーん』と存在する骨と木で作られた大きな扉。ここまで人工物と呼べる物なんて碌になかったのに、ここだけそんな物があるのだ。誰だって『この奥になんかいるわ』ってわかる。


 ちなみに、どうやらこの洞窟に流れる水はこの部屋から漏れているらしい。ドアの下から流れ出ている。


「……中にいるのは五体、かな?うち一体はかなり大きい」


「すごく、大きいです……って言ってアミティエちゃん」


 馬鹿の頭を殴り、アミティエさんに続きを促す。


「五体とも扉からは離れているね。もしかしたらこちらの侵入を警戒しているのかもしれない」


「時間が経って知能が戻ってきた。ってこと?」


「たぶん。けど、大型の奴だけじゃないかな。たぶんここのボスだと思う」


「なるほど」


 あらかじめ話し合った通り、アミティエさんが後ろに下がる。背後の通路から敵の増援が来ないか警戒するためだ。


 そして自分とホムラさんが扉から数メートル程の位置に立つ。


 恐らく今までの半魚人ほど簡単にはいかない。特にボスともなればかなりの強敵だろう。自分のスキルも、この部屋の中央にかなり危険な奴がいると伝えている。


 ホムラさんと見合い、小さく頷く。


 ダンジョンのコアを護る番人。半魚人の長。であれば、正々堂々と――。



「『フレイムアロー』」


「『マグヌス・ラケルタ』」



 開幕ブッパである。


 まず炎の矢が扉を打ち砕き、次の瞬間には光弾が部屋の中に。その中央でノコギリみたいな大剣を持つ、三メートルはあろう半魚人のどてっ腹に。


『ギィェェェ!!??』


 なんか格上ぽいなという予想が当たったのか、『ラッキーパンチ』が発動した感覚。ラケルタが直撃したボスが胴体に風穴を開けて後ろに吹っ飛んだ。


 その左右に二体ずついた半魚人達が機械的な動作で銛を投げてくる。背にも予備を括り付けているので、突入して来たらそこに投げつける予定だったのだろう。


 だが、この距離なら自分が左手に持つ剣を両手に切り替え、一歩前に出て切り払うのが間に合う。


 二本は外れ、残りは剣で叩き落す。次の銛を出している所に、炎の鞭が叩き込まれた。


『ギョ』


『ギョギョ』


 感情まで薄いのか短く声を上げて水の中を転がる半魚人達に、反撃に警戒しつつ止めをさしていく。


「……ウチの知っているダンジョン攻略と違う」


 遠い目をするアミティエさん。いや、だって飛び道具持っているなら部屋の外からぶっ放さない?普通。


 バフ系のスキルで有用なのがあったら全がけして、開幕ブッパは基本では?何が悲しくて敵の土俵で戦わないといけないのか。


 懐かしい……中学の頃、友達が持ってきた『TRPG』でそれやったらキレられた事があったなぁ……あいつ元気かなぁ。


「よし、勝ったな!」


「長く険しい戦いでしたね」


「そうかな……そうかも……」


 実際時間感覚狂いそうな場所だが、わりと時間経っている気がする。


 最後に部屋の中を見回し、罠や伏兵がいないか警戒。ボス含め半魚人どもが消えているのを確認し、ようやく一息つく。


 靴が水を吸ってぐちゃぐちゃだ。ようやく終わると思うと心が軽くなる。経験値はもっとほしか……おや。


「あ、全スキル『5』になりました」


「にゃにゃにゃにぃ!?」


 なんて?


 奇声をあげるホムラさんがこちらに近づいて来て肩を掴む。


「おま、なんで!?私まだ『3』だよ!?」


「いや、思いのほかボスが経験値落としまして」


 ついでにガチャポイントも十連分たまったようだ。凄いなダンジョンボス。


「あー!?ボスボーナスかぁ!畜生、もっかい出てこい半魚人のボス!気合みせろぉ!」


「やめーや。ウチもう休みたいねん」


「そうですよー」


 暴れるホムラさんにアミティエさんと少し遠くから宥める。


 マッタクー、ボス経験値逃シタグライデ大ゲサダナー。


「ふんぬぅぁぁぁぁ……!」


「さて、と……」


 膝をつくホムラさんを『おべべが汚れるでしょ』と引き上げ、部屋の奥にある『噴水』へと目を向ける。


 不思議な噴水だった。元々はこの集落の祭壇かなにかだったのだろうが、その頂上に置いてある腕輪からとめどなく水が流れ落ちている。それがこのダンジョンを水に漬けているのか。


「ホムラさん、アレ見てください。魔法とかそういう罠あります?」


「ぐすん……うぅ……特に見当たらねぇよ」


「ウチも見た感じ、物理的な罠はなさそうかな?」


 一応確認したという事で、代表して一番頑丈な自分が取りに行く。


 俺は昔友達がGMやってダンジョンコア周りに爆弾しかけまくったのを忘れていない。あの野郎……魔法の罠解除して安心した所に突然ぶち込みやがって。


 ……また、皆で遊びたいなぁ。


 そんな事を考えつつ、特に問題なく腕輪を手に取った。水の放出がピタリと止まる。


 それと同時に、ダンジョンに波紋が広がる。比喩ではない。水面に石でも投げ込んだみたいに、壁も空気もさざめいているのだ。


「なんだ?」


「ああ、これがオトンの言っていたダンジョンが消える瞬間かぁ」


 どうやら問題ないらしい。アミティエさんが扉を警戒しつつも肩の力を抜いている。


 そして、ダンジョンの壁が霞の様に消えていく。その光景は半魚人が消える時に近い。一分もしないうちにダンジョンは消え失せ、不自然に木々がなくなった空間に自分達が取り残される。


 茜色の空が出迎えて、こうして自分達の最初のダンジョンアタックは幕を閉じた。



読んで頂きありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


Q.TRPGってなに?

A.テーブルロールプレイングゲーム。物凄く大まかに言うと機械でやるのが『RPG』。紙とペンでやるのが『TRPG』です。ニコ動などで色んな人がリプレイ動画がを上げていたりしますので、気になる方は視聴してみるのもアリかもしれません。


Q.ダンジョンってそんなに危ないの?

A.現地民から見たダンジョン


 奥に百万円ぐらいのお宝があるよ!最低でも村一つ入る大きさの迷路の先にあるから取って来てね!中に五十体以上の人食いクマが活動している上に倒しても時間経過で復活するよ!放置したら規模が大きくなるから気を付けてね!


為政者「おファ●クですわ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] たろっぺさんの作品はどれも文章が安定してるし読みやすいね TS癖が強いけど(笑) ちなみにTRPGは『テーブルトーク』か『テーブルトップ』RPGだよ 今更だけど
[一言] 苦心して作ったギミックをスルーされる悲しみ…
[一言] このダンジョンの報酬のショボさはおファ●クですわね
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