表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
事前登録したら異世界に飛ばされた  作者: たろっぺ
第一章 ハロー、ギフテッド
1/170

プロローグ

よろしくお願いいたします。


第一章ハロー、ギフテッド


プロローグ


サイド 矢橋 翔太



「は?」


 気が付いたら真っ白な空間でコスプレしていた。


 いや本当になんだこれ。右を見ても左を見ても、それどころか上下を見ても真っ白な空間。しかも自分は寝間着用のジャージだったはずなのに、今はRPGの初期装備みたいな恰好だ。


 夢……なんだろうか。いや、そうに違いない。


 なんせ時刻は深夜0時で、自分は自室にいた。新しく始まるアプリゲームを遊ぶために、明日は土曜日だからとこの時間まで起きていたのだ。いや普段でも漫画とか読んでてそれぐらいいっちゃうけども。



『アナザーワールド』



 なんちゃって中世をベースとした剣と魔法の異世界物。はっきり言ってどこにでもありそうなゲーム。


 しかし、その異様なまでに出来がいいグラフィック。そして多彩な『スキル』や『称号』、『刻印』などのシステムがPVで流れ、中々の注目を集めた作品だ。


 原作となった作品がない。それどころか聞き覚えのない会社が作ったアプリゲームでありながら、なんと事前登録者は一万人以上。


 まあ一部のお祭り好きや冷やかし、話題づくりもいるだろうけども。自分の場合元々やっていたゲームがつい最近サービス終了してしまって暇ができたから、せっかくだしと登録したわけだ。基本無料だし。


 よくよく思い出したら事前登録で作ったキャラクターの装備に似ている気がするな、今の自分の服装。やはり夢か。


 ああ、せっかくの夢なんだったらもっと――。


『はじめまして、諸君』


「あ、え……」


 その声を聴いた瞬間、呼吸が止まった。


 なにもわからない。頭が混乱する。ただ一つだけわかる事。それは、この声の主は『人間ではない』という一点のみ。


 本能でわかる。これは、人の理解が及ばない存在だ。


『ああ、リラックスしてくれ。君達の態度には興味がない』


「かひゅっ」


 ようやく呼吸が許された。息が止まっていたのはほんの僅かな間だったろうに、肺は必死に空気を取り込んでいく。


『単刀直入に言おう。君達はこれより私が管理する世界に行ってもらう。流行っているんだったか?異世界転移とやらが。素晴らしい文化だ。手間が省ける』


「は、え?」


 女性、なんだろうか。いや人間じゃないけど。この声の主は。


 なんにせよ、その声はこちらの理解などお構いなしに話し続ける。


『君達の《同意》はしかと受け取った。そちらの世界の神との盟約により、我の世界で働いてもらう』


 ど、同意?なんの事だ。意味が分からない。


 だがふと、まるで自動的にとでも言いたくなるような自然さである記憶が思い出される。


 そう、『アナザーワールド』の事前登録画面。そこにあったのだ。『これに同意なされた場合、作成したこのゲームのキャラクターとなって異世界で活動していただきます』と。そんな文が。


 冗談の類だと思った。そんな文章本気にする奴がいるわけない。一瞬の期待はあっても、すぐに馬鹿馬鹿しいと笑うだけ。


 これは、眠る時行われる記憶の整理というやつで、それに偶然願望とこの記憶が結びついただけの事。そのはずだった。


『まさかこれだけの数が短期間で集るとは。君達の世界の文化は素晴らしい。昔はもっと手間がかかったのに』


 だがこれが夢であるものか。己の脳みそにこんな『恐ろしいもの』を想像する力などない。こんな、心どころか魂まで鷲掴みにされているような怖気を与えてくる存在、幻であっても生み出せるはずがない。


『期間は《世界に変革をもたらすまで》だ。誰か一人でもいい。我が世界を変えたと思える成果を出したのなら、己の世界に帰るといい。無論、残りたい者は残ってもいい。どちらにせよ与えた容姿と能力はそのままだ。契約だからね』


 話しは続く。それに介入する事などできはしない。蟻がどうやって象の歩みを邪魔するのだ。


『君達の住んでいる世界ほど育成が上手くいっている所は少ない。こうして時折生物を借りて濁ってしまう前にかき混ぜてもらっているよ。ああ、そうそう。世界を変える手段はなんでもいい。英雄になるのも、王になるのも、神を殺すと吠える悪魔になるのもね。我を殺してくれても構わない。そういう存在だからね』


 段々と視界がぼやけてくる。同時に、足先から異常な冷気がふき上がってきた。


『君達の活躍を期待しているよ。帰る場合はこの瞬間に合わせてあげるから安心したまえ。ではな。その旅路に幸福の多からんことを』


 そこで世界は、純白から白銀へと切り替わった。


「さっっっっっむ!!??」


 あたり一面の銀世界。なんて生易しい話しではない。空は曇天足元は膝まで雪に埋まり、視界一杯の猛吹雪。


 状況はさっぱりわからん。それでも無理やり理解するなら、どうやら自分は異世界に飛ばされたようだ。


 ああ、だったらどうか言わせてくれ。


「せめて街の中に転移させろぉぉぉぉおおおおおお!?」


 推定神様。タメ口なのをお許しください。


 敬語とか、使う余裕がないです。これは、世界を変える前に死にます。





読んで頂きありがとうございます。

この少し後に、第一話を投稿させていただきます。そちらも読んで頂けたら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今迄、初手 魔の森とか 誰もいない辺境とかほあったけど 初手、寒冷地ははじめてですね せめて温暖なところにしてくれとは誰でも思うな
バケツとTSござるからー 今作品も面白いと言いな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ