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解消されたと思ったのに

 翌日の通学時、隣に居るのは凜風(リンファ)だ。

 電車内で顔を合わせると、無遠慮に傍に来て挨拶して来てたし。

 なんで?


如果你不消除任何误解ごかいをといておかないと它就不会清楚(すっきりしないから)

「別れるって言った。はっきり」

我明白(わかってる) 但你认(でもそれで)为这能说服我吗わたしがなっとくすると?」


 つまり、一方的に別れを切り出されても、納得できないってことらしい。

 自分の行動を思い返せば、理解も及びそうだけど、そこは考えないんだ。だから殴る蹴るを当たり前だと思い込む。それも愛情表現だなんて、冗談きついんだけどね。

 中国では当たり前かもしれないけど、日本では暴行傷害にしかならない。


「日本では殴る蹴る常識は無いんだけど」

我将确保没有来(ぼうりょくは)自我的暴力(ふるわない)

「無理でしょ。口より先に手が出る」

我向你保证,我会的(やくそくするから)


 無理な方に全財産。絶対手が出る。


「悪いけど、これ以上信じられない」

我将遵守我的承诺(やくそくはまもる)


 懇願する感じで見てるけど、どうして信じられるのか。これまで一度だって暴力を振るわれなかったことは無い。ひとつ言えば倍、ふたつ言うと十倍。

 その度に、顔が腫れあがって痛くて仕方なかった。唇切れてもお構いなし、鼻血が出ても知らん顔。どこに愛情があったのか。


「信じると思う? 今まで散々好き放題殴り続けてきて」


 日本人は我慢することが得意、なんて思われてるけど実際は違うからね。

 今の若い人に関しては、許容できる範囲なんて限られてる。国際社会では及び腰で、なんでも我慢してるけど。あれは役人や議員が腰抜けなだけ。他国にいい顔したいから。


我希望你能相信我(しんじてほしい)

「無理」


 泣きそうだ。

 でも今までがあっての、これだから。


如果我把我的手伸出来(わたしがてをだしたら)你就把你的手伸出来(てをだしていい)

「それだとただの殴り合い」

那我(じゃあ、)该怎么做呢(どうすればいいの)?」

「別れる一択」


 唇噛みしめて泣き出してる。

 でも、無理だから。いくら顔が良くてもスタイルが良くても、性格に難がありすぎるんだよ。ここまで暴力を厭わないんじゃ、どう考えても日本人の誰とも合わない。

 日本だと暴力行為は絶対悪だから。中国は知らないけど。


 大学に着くと泣きながら俺のあとを付いてくるし。

 なんか泣かせてる悪い奴みたいに見られるでしょ。泣かされて来たのはこっちなのに。

 なんで急にしおらしくなってるんだか。いつも通りぶん殴って終わりにすればいい。その方が中国人らしいでしょ。


 一旦、別々の教室に移動するけど、ずっと沈んだ表情だった。


 昼になると、やっぱり探してでも傍に来る。

 構内に複数個所、学食とかラウンジがあるから、あたりを付けて来たんだろう。

 今さらだけど。


「未練あるの?」

「ある」

「なんで?」

「心細いから」


 日本語になってる。今朝はずっと中国語だったのに。

 でも、心細いって、日本には同胞が山ほどいるじゃん。なんで心細くなるのか理解不能。

 結局、学食で並んで飯食ってる。そのせいで、誰も別れたとか思わないみたい。


「元気ない感じだけど、なんかあった?」


 凜風に元気がないのを見て取ったんだろう、サークル仲間が声掛けてきてる。

 ここで話すのもあれだし、適当に誤魔化しておけばいいか。


「分かんない」

他们和我分手了(ふられた)

「え? 意味は?」


 ええい。なんで素直に言うんだよ。

 テーブル挟んで前の席に座って「翻訳プリーズ」とか言ってるし。まあ、本人が言ってるからいいのか。


「別れ話を切り出したから」

「え? なんで? だって、仲良かったじゃん」


 まあ、そう見えたんだろうね。その陰でどれだけ殴られ続けて来たか。血塗れになるまで殴るなんて、普通なら警察に被害届を出すレベル。それをずっと我慢してきた。明らかな暴行傷害なのに、耐えてきたんだから。

 限度が無いんだよ。このままだと命に関わる。


「いろいろあって」

「えー、なんか勿体ない」

「じゃあ、付き合ってみれば」

「そりゃ、俺で良ければ」


 自分を指さして「どう?」とか言ってるけど、即座に首を横に振ってるし。


「気がないよ」

「仕方ないね」

「でもさあ、もう付き合う気無いんだ」

「無い」


 隣で泣きだしてるし。


「泣いてんじゃん。なんで別れることになったんだよ」

「いろいろ」

「言いたくないんだろうけど、これじゃあ彼女が哀れだろ」

「自業自得って言葉がある」


 今日のこの時まで謝罪は一切ない。

 日本には謝罪の言葉が複数ある。きちんと詫びて罪を認める文化もある。でも、海外にそんな文化は存在しない。軽いんだよ、どの国の言語も謝罪に関して。日本で言えば、せいぜい「ごめん」程度。ましてや中国人に謝罪する文化は存在しない。たぶんね。

 だから態度も行動も改まることは無い。すべて他人が従えばいい。従わなければ力で屈服させるのが世界のやり方。結果、傲慢な考え方が世界中で罷り通る。

 日本人と合うわけがない。


 謝罪ってのは完全な負けを意味する。だから謝罪しない。まあ文化の違いがこれ程、明確に出る事例は無いだろうな。

 だから、凜風に期待するものは無い。するだけ無駄だし。

 ちなみに泣くのは同情を引くため。悪いと思ってじゃない。これも世界共通。日本だけが別。


「自業自得って、何やらかしたんだ?」

「さあ、本人に聞いてみてよ」

「いや、中国語で話されたら分かんないし」


 見た目に反して、とんでもない暴力女なんて知ったら、誰も同情しなくなるだろうなあ。少なくとも日本国内では。中国なら暴力を肯定する主張をするだけ。

 国家からして、そんな態度なんだから。

 日本に居て、そんな子だと知れたら、周りから人が居なくなる。さすがに俺もそこまで追い詰める気は無いし。


「とにかく、個人の問題だから」

「なんか可哀想だな」


 昼休みが終わり午後の授業も終えると、やっぱり探し出して俺の傍に来る。

 こんな態度を取るのも初めてだな。今までならぶん殴って、さっさと先に行ってたのに。


「なんで俺の傍に来る?」

因为我爱你(あいしてるから)

「軽いね。その言葉自体」


 許した時点で全部チャラになったと受け取る。そして明日からまた暴行の日々が始まるだけ。その場しのぎの軽い言葉で済ませる。

 反省なんて外国人にできるわけがない。反省する人種なら、世界から戦争は無くなってる。無くならないのは反省しないから。何しろ第二次世界大戦では、日本が絶対悪であって、原爆を落としたアメリカでさえ正義。どれだけ無辜の市民を無残に殺したとしても。

 反省した経験が無いんだから、無理ってものだよね。

 日本は世界中に対して土下座させられただけ。今も尚、土下座は続いてる。


 ドイツくらいに要領よくできなかったのもある。あの国の国民性は本当に小賢しい。スケープゴートを用意し、全責任を押し付けたんだから。

 支持して生み出したのは他でもない国民なのに。日本は違う。国民が選んだわけじゃない。

 天皇を崇めはしていたけど。それが裏目に出たんだろうなあ。いいように祀り上げて国民を誘導した。


「外国人ってさあ、他人を責めるのは得意だけど、自らは反省しないよね」


 言われてる意味を理解しないみたい。

 まあ、中国は日本から侵略された経験があるし。屈辱だと思ってるから、反日政策も当たり前にある。反日と友好を巧みに使い分けてる。


「許してまた付き合うとなったら、殴るんでしょ? 気に入らない、腹が立った、イラっとしたからって」

「我永远不会再实施暴力行动にどとやらない

「口先だけでしょ。誰がそんな言葉信じると思ってるの?」


 信じられないかもしれないけど、信じて欲しいとか言ってる。

 自分に対して不信感しかないのも理解した。だけどチャンスは欲しいと。

 軽いなあ。自分がしてきたことも反省できない、謝ることもできないのに。なんで繰り返さないって言えるのか。図々しいにも程がある。


「日本では本当に悪いと思ったら、心の底から反省し謝罪するんだけど」


 謝罪の文化が無いから、できないんだろうけど。それと同時に反省もできるわけがない。


「ごめんなさい」

「心からの謝罪って、日本が散々他国から突き付けられたんだけど?」

我不知道该如何道歉あやまりかたがわからない。土下座? 腹切り?」


 土下座も腹切りも無い。無理だよね。経験無いし日本に要求だけしてたんだから。謝罪が何なのかも知らないのに。意味無いよなあ。

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