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光の戦士デュランダル

光の戦士デュランダル~かつて神童と呼ばれた転生者は凡人を経てヒーローに~

作者: HOT-T

最初の方に出てくる二人は短編『人を顔で判断してはいけません』に登場しています。

リンクはページ下部に貼っています。

 星歴1241年。

 街道沿いのとある宿場。

 休憩の為に立ち寄り食事をすることとした。

 出された軽食を口に運び舌つづみを打つ。


「うん、このブルスカータ美味いな!!」


 ブルスカータとは焼いたパンの上にニンニクとオリーブ油を垂らしキノコなどを乗せたこの地方の郷土料理だ。

 何か似た料理を『地球』で見た気もするがそんなものこの世界では珍しくない。


「ええ。ウチの人気料理でしてね。気に入ってくれて嬉しいですよ」


「いや、本当にこれ美味いなぁ。おふくろがキノコ料理得意な人なんだけどこのキノコのチョイスもまた……」


 興奮気味に声がした方へと振り向き、凍り付いた。

 大柄で強面な男がこちらを見下ろしているではないか。

 やべぇ、ぼったくり請求された上で身ぐるみはがれる!!

 下手したらそのまま奴隷商人に売られてしまうかもしれん。


 何という事だろう。

 いい雰囲気だったので穴場だと確信して入ったがどうやら墓穴だったらしい。

 こんな事なら休憩なんかするんじゃなかった。


「ちょっとバルキンさん!またお客さんを怖がらせて……だから料理だけしててっていったじゃない」


 奥から先ほどまで接客をしてくれていたちっこい女将が顔を出す。


「だってシャミィ……お客さんが褒めてくれてるみたいで嬉しくて出て来てしまったんだよ……」


 どうやらこの男、女将の旦那らしい。

 そして見た目に反して気が弱い善人の様だ。

 ああ、そうか。人を見た目で判断しちゃいけないって言うもんな。


「ごめんなさいね。ウチの人、クソ怖い悪人面なんだけど根はいい人だから安心して」


 奥さん、オブラート。

 もう少しオブラートに包んであげようよ。


「あ、いえ。こんな怖そう……いや、強そうな旦那さんが居たら安心ですね……」

 

「そうなの。前に強盗が来たことあるんだけどこの人の顔見るなり『命だけはお助けを』って泣きながら逃げて行ったのよね。一緒に歩いてたら人攫いと勘違いされるし、ちょっとイチャついたら私が襲われてるって通報されるし。もう笑っちゃうわ」


 おーい奥さん、旦那が泣きそうになってるよ。

 もう止めてあげて。バルキンさんのライフはゼロだよ!?


 だが確かに強盗に入ってこの旦那が出てきたら俺だって逃げるわ。

 何せどう考えてもカタギの顔じゃない。何人か殺してそうな雰囲気だ。


 個人的には二人のなれそめが気になる。

 どう考えても生きている世界が違う二人だ。

 いや、人を見た目で判断しては……でもなぁ。


「ところでお兄さんは冒険者か何か?」


「あー、いえ。旅行ですよ。遠くへ嫁いだ姉の様子を見に行ったついでにぶらぶらとね」


 全く。姉貴と来たら実家から馬をフルで走らせても数日かかるような場所に嫁ぎやがって。

 まあ、元気そうだったから万事良しだけど……


「へぇ、お姉さん想いの弟さんなのね」


「はは。そうですかね。だけど姉貴って昔から……」


 そこから俺の姉トークが始まる。

 姉貴の魅力を余すことなく伝えるこのプレゼンに最初は笑顔で話を聞いていた女将だった。

 だが段々笑顔が消えていくのが見て取れる。

 

 どうしたのだろう?ああ、そうか。月一のアレなんだろう。

 これはレディに対して失礼をした。女性が多い家で育ちながらそういった配慮が出来なかったのは恥ずかしい限りだ。


「……という感じの人なんですよ」


 まだ数時間は話せるがこの辺で切り上げておこう。


「えーと、お兄さんってシスコンかな?」


「まさか。姉貴が魅力的なだけですよ」


「あっ、そうなんだ……ははっ……あっ、そうだ。旅行者さんならゴロンド砦跡にはもう行った?」


 ゴロンド砦。

 確か戦争があった時の砦だよな。

 一時期はゴーストの巣窟だったが長年の除霊活動で観光施設として活用出来るようになったとか。


「いや、行ってないですね」


「ここから近いから寄ってみたらいいよ。あそこの売店で売ってるゴロンドサブレはお土産としても人気だよ」


 戦争遺産で何を売ってるんだよ。

 だがまあ、『地球』でも寺院の周囲にお土産屋さんが集中してたりするしな。


「ちなみにサブレのお店は私のお父さんが開いてます」


 商売上手か!!




 女将に礼を言うと代金を払って宿場を後にした。

 どうせ紹介してもらったのだし足を運んでみようとゴロンド砦に向かって歩き出す。

 ゴロンド砦は谷間に作られた要塞でかつては不落要塞のひとつと言われたらしい。


「うーん……」


 何か宿場を出たあたりから誰かがついて来てるよな。

 突き刺すような視線を感じる。

 これは……尾行されているよな?


「あのさ。俺そんな金持ってるわけじゃねぇぞ?」


 振り返り声をかける。

 茶色味がかかったショートヘアの少女がびくっと身を震わせ反応した。


「し、失礼な。人を野盗扱いするな」


 まあ、野盗っぽかったら即逃亡って奴だが確かにそんな感じはなさそうだ。


「何だ違うのか。それじゃあ何だ。迷子か?」


「はぁ?あんたは馬鹿なのかい?わたしはこの地域の出身だぞ?地元で迷うかって。仮に迷っていたとしてもわたしは17歳。『迷子』はおかしいだろ!!」


 いや、その情報は知らんがな。


「なあ。あんた、『ホマレ』だよな。『神童のホマレ』……」


「あー……」


 もしかして昔の知り合いか?

 確かに俺は幼い頃、『神童』と呼ばれもてはやされていた。


 俺は元々この世界とは異なる世界、『地球』に住んでいた。

 だがあっちで若くして死んでしまった所、何かよくわからんが『神』の手でこの世界に転生出来たわけだ。

 ホマレって言うのは今の親につけてもらった名前。本当はアホ程長い本名だが大概は『ホマレ』で通している。

 ちなみに笑える事にこの世界における俺の親父もまた、転生者だ。

 事情があってその事を親父には話せてないがな。


「えーと……人違いです」


「嘘つけ!わたしはあんたを知ってるぞ!」

 

 まあ、有名人だったからな。


「世の中にはそっくりさんが3人いるって言うぜ?」


「一緒にパーティ組んだことあるだろ!!」


 うわ、マジかよ。そりゃ逃げ場がないな。

 しかもまずい事に本気で覚えてねぇ。

 

 転生にあたって神から与えられた数々のチートスキルのおかげで俺は『神童』と呼ばれた。

 幼い頃から冒険者ギルドに入り浸って無双しまくりいきっていたという痛い過去がある。

 いや、本当に過ぎた力ってのは人を歪めるんだよな。

 どう考えてもあの頃の俺は調子に乗ってたからな。


 女性ばかりのハーレムパーティを組んでみて俺の取り合いを楽しんだりしてたなぁ。

 当の俺は姉さん達を愛してたので相手にしてなかったのが更にヤバさに拍車をかけていた。

 あの頃の女癖の悪さときたら……母親からは『男前に産んだけど調子に乗りすぎたんだね』とよく言われる。

 いやはや、実にお恥ずかしい事で。

 

「あんた……まさか本当にわたしを忘れたのか?」


 どうしよう。思い出せない。

 察するにあの頃やらかした何かの責任を取れ!とかだろうか? 

 心当たりがありすぎて困るんだが……

 

 だがちょっと待ってくれ。目の前の少女は俺よりも6歳も下だ。

 となると俺がイキってたのって大体12歳くらいの時だったからそう考えると当時の彼女は……

 やべぇ、犯罪じゃん。当時幼女だった彼女に何をしでかした!?


「えーと……その……」


 嫌な汗が背筋を伝う。

 俺もあの頃は子どもだったって言い訳をするつもりはない。

 何せ転生者なのだから身体は子ども。頭脳は大人だったのだ。


「申し訳ない。降参です」


「オンデッタ村のフリーダだよ!」


 フリーダと名乗った少女はシュバッと左手を斜めに構え今にも変身しそうなポーズを取る。

 名前とそのポーズで記憶回路が一瞬にして繋がった。


「ああっ!思い出した!小鹿(バンビ)ちゃん!!」


 瞬間、彼女が投げた石が直撃した。


「そのあだ名で呼ぶな!!」


「す、すまん!!」


 思い出した!

 彼女は俺のファンで一度だけ荷物持ちとして同行させたことがあった。

 パーティの歩く速度について行けず足をプルプル震わせていたので『バンビ』って呼んでからかってた。

 うん……ドン引きするわぁ。


「荷物持ちでもいいからってパーティに入れてもらったけど全然役に立たなくて……『もっと鍛えてついて来れる様になったらまたおいで』ってクビにされたんだよ」


 はい。しました。

 

「わたしはそれが悔しくて村に帰ってからも血がにじむような努力を積んで鍛えまくったんだ……そして冒険者としてもある程度経験を積んでリベンジに舞い戻ったら……冒険者を引退してるとかふざけんじゃないよ!!」



 かつては頂点にまで上り詰めようとしていた冒険者を辞めた理由。

 それはある理由で神から貰ったスキルをすべて返上したからだ。

 

 そうなると俺は凡人でしかない。

 冒険者は引退する事となった。

 

 そして神に返したスキルには『人に好かれる』というものもあり、俺を溺愛していた連中はあっさりと離れていく事になった。


 スキルを無くしても変わりなく接してくれていたのは家族だけだった。

 いや、家族愛って本当にすごいよ。マジで神のスキルに影響されてなかったんだよな。

 前世の家族とは大違いだよ。


「わたしは、今度こそあんたと肩を並べて冒険してやるって思ってたのに……それなのに……」


「いや、その……本当に済まなかった。でも俺はもうあの頃みたいな冒険者じゃないんだ」


 一応あれから護身術程度に少しは武器を扱えるようにはなったが絶頂期に比べればカスみたいな強さしか持っていない。

 全部、神のスキル依存だったんだな。


「だからさ、その許してくれよ。その……」


 ふと、露店が目に入った。


「ゴロンドサブレ買ってやるから」


「子ども扱いか!!」


 再度投擲された石が直撃した。



□□

 結局、バンビ……否、フリーダは俺に買ってもらったサブレを食べながら俺と砦跡の観光をしていた。

 飲食OKとか本当に色々台無しだな、ここ。


「それじゃあ、あんたは急に力を失ってしまったというのかい?」


「ああ。何故だかはわからんけどな」


 それは真っ赤な嘘だ。

 死んでしまった二番目の姉貴を救ける為、俺は神に全てのスキルを返却した。

 姉貴が死んでしまった原因も元を辿れば俺のせいだ。

 だから手にした名誉やら全てを失ったとしても俺には責任があった。


 幸い、スキル返却で神に助けられた姉貴も今や結婚して一児の母。

 最初は義兄貴の事をよく思わなかった。

 だが今では姉が選んだのがあの人で本当に良かったと思っている。


「あれか……その、ダンジョンで落ちているものを拾い食いして腹を下した結果とか?」


「いや。それは流石にマヌケすぎるだろ。てかそんな拾い食いするような奴がいるわけ………」

 

「あれ、もしかして心当たりでも?」


「無い。『俺は』そんなことしてない」

 

 ひとつ下の妹がダンジョンで拾い食いして腹下して1週間寝込んだことがあった。

 元々あんまり賢くない妹だったがまさかここまでとは、と家族皆が呆れかえっていた。

 まあ、そこが可愛いんだがな。前世の妹など足下に及ばん。

 

 小さい頃はよく『兄ちゃん』って甘えに来てくれてその怪力で何回か骨折しかけた。

 あの怪力、神のスキルで防御力が強化されていた俺で無かったら死んでる所だったぜ。

 

「まあ、そういうわけで冒険者として一緒にパーティを組むことはもう無いんだ。ごめんな」


「そんな……今までそれを目標に生きてきたのに。わたしはこれからどうすれば……」


 本当に、過去の俺を殴ってやりたい。

 勝手に彼女に希望を持たせ、十年越しにその希望を奪ってしまった。


「その、何ていうかさ。こうなったら新しい目標を見つけて前に進むしかないと思うんだ」


「新しい、目標?」


「俺とパーティを組むって目標はもう果たせない。だけどその為に君がしてきた努力はきっと違う形で実を結ぶと思うんだ。だから、俺がこんな事を言えた義理じゃないけど、前に進んで欲しい」


「……そう、だよな」


 その時だった。

 獣の咆哮が砦跡に響き渡る。

 これは……

 外を見ると砦跡に向かって進行している鈍色の肌をしたカバ型のモンスターの姿があった。


「あれは……カバゴドン!?」


 鉄カバ魔獣カバゴドン。

 体長は約2.5mで鉄を主食とするカバ型モンスターだ。

 カバと言うと温厚そうなイメージがあるが実はとんでもない猛獣だ。

 縄張りに入った相手を容赦なく襲うし、しかも鈍重そうな見た目に反してとんでもなく走るのが速い。

 こいつもその性質を踏襲しておりかなり危険なモンスターと言える。


「はぐれ魔獣か。このままじゃ観光に来てる人達が……よしそれならここはわたしが」


「え!?」


「あんた言ったよな。新しい目標を見つけろって。わたしは、昔村を襲ったモンスターを退治してくれた冒険者を見て憧れていたんだ。困った人の為に手を伸ばすヒーローって奴に。今が、その時なんだよな」

 

 言いたいことはわかる。

 だけどカバゴドンはマズイ。

 彼女がどれくらい強くなったかはわからないがそれでもあれは手に余る。

 それくらいに獰猛なモンスターなのだ。


「今こそ、わたしがヒーローになる!!」


「ちょっと待て!!」


 制止を聞かず彼女は腰に差した剣を抜き、砦から飛び降りる。

 いやいや、あれはどう考えてもヤバイ。

 カバゴドンは物理防御が高い。だから魔法攻撃などで責めるのがセオリーなのに……


 接敵したフリーダは華麗なステップを踏みながらカバゴドンに斬撃を見舞っていくが……まあ、当然の如くというかやはりというかダメージを与えられている様子はない。


「くそっ、このままじゃ!!」


 俺は砦から飛び降りると彼女目掛け走り出す。

 カバゴドンの攻撃を避けていた彼女だが大きく踏み込んだ攻撃を弾かれた際に体勢を崩す。

 そのすきを見逃さず大きな口を開けカバゴドンが噛みつきを行う。

 ダメだ、あれを喰らったら彼女なんかひとたまりも無い。


「うおぉぉぉ!!」


 カバゴドンが彼女に噛みつこうとした瞬間、追いついた俺は彼女を横に突き飛ばした。

 そして代わりに強靭な両顎に捕まってしまう。


「ぐああっ!!」


 巨大な牙が身体に食い込み熱い血が流れ出て来た。


「なっ、あ、あんた何で!?」


「ははっ、何でだろうな」


 罪滅ぼしでもある。

 だけど、恐らく『ヒーローになる』って彼女の言葉。

 あれが何かさ……熱くさせたんだよな。

 

「俺もヒーローって奴に、憧れてるのかも……」


 カバゴドンが俺を咥えたまま顎を振り回し、口を開き俺を崖の向こう側へと投げ飛ばした。


「ホマレェェェ!!」


 その先は谷底。このままだと待つのは死。

 だけど……それでいい。これが、丁度いいって奴だ。

 

 確かに神から貰ったスキルはすべて返却した。

 だけど俺の魂には、この身体には神に由来しない力が残っていたんだ。

 

 転生者の親父、そして元王族のおふくろから受け継いだ正真正銘、『俺の力』って奴が。

 光に包まれた俺は仮面と鎧を纏った戦士へと姿を変え、上昇していく。

 そう、これが俺に隠された力。これぞ光の戦士『デュランダル』!!


「ヘヤァァァァァァ!!」

 

 へたれ込んでいるフリーダに噛みつこうとするカバゴドンの上からドロップキックで強襲を掛ける。


「え?」


 流石にこの防御ではいくら圧倒的なフィジカルを持つこの姿でも頭を踏み砕けないか。

 ならばとバク転してカバゴドンとフリーダの間に立つ。

 敵を確認したカバゴドンは大きな口を開けかみ砕こうとしてくるが。


「シューティング、ビィィィィム!!!」


 両腕から放ったのは『ビーム』。

 魔法とは似て非なる特殊攻撃であり、俺達レムのきょうだいが共通して使うことのできるものだ。

 シューティングビームによりカバゴドンの両牙が破壊される。

 まさかのダメージに怯んだカバゴドンの下に潜り込むとその巨体をリフトアップし回転。

 そしてそのまま崖目掛け投げ飛ばした。

 カバゴドンはそのまま谷底へ真っ逆さまに落ちていき見えなくなった。

 

「あ、あんた……一体何者なんだ?」


 昔の俺ならここで仮面を外して正体を明かしていただろう。

 だが今は……何も言わず、ただ飛び去るのみ!!

 

 とりあえず何か飛行も出来るので高空まで飛んでいきそこで光の玉になると他者に見つからぬよう崖の近くまで移動して変身を解除する。

 よし、ここまで行けば後は定番のあれだ。


 俺はとりあえず傷口を抑える振りをしながらフリーダの方へ歩いて行く。

 出血はしっかり止まっている。多分変身の影響だろうな。


「おーい」


「ああっ、あんた無事だったのか!?」


「何か途中で引っかかったみたいで何とか上がってくることが出来たよ。傷もそれほど深くなかったみたいだし……ところでモンスターは?」


 実際、こんな演技をする必要は無かったりする。

 どうも概念的に俺がデュランダルに変身して戦っていることは他者には認識されない様になっているっぽいんだ。

 だから俺が崖から落ちた直後にそこからデュランダルが出て来ても俺=デュランダルという風に捉えられない。

 俺の栄光は語られることも知られることもない。それが新たに課せられた運命。

 幾らデュランダルが頑張ろうとも俺が認められることはない。

 だが、それでいい。人に褒められたいからヒーローをしているんじゃない。

 だから、これでいいのだ。


□□□


 ゴロンド砦の事件から数日後、俺は家でくつろいでいた。

 ちょっとしたケガをして帰って来たので大変だった。

 おふくろがかなり心配をして涙目になっていた。

 心配させてごめんって感じだ。 


「頼もー!!」


 あれ、何か今聞き覚えのある声が聞こえた。

 凄く嫌な予感が……というか嫌な予感しかしない。

 おふくろが玄関の扉を開けるとそこには決めポーズを取るフリーダが居た。


「バン……じゃなくてフリーダ!?いや、お前何で!?」


「ふっふっふ!私の新たな目標が決まったのさ。それは、あの謎のヒーローみたいな凄いヒーローになる!!」


「……へぇ、良かったね。それで、何で俺の所に?」


 フリーダは眉間に皴を寄せてため息をつく。


「ゴロンド砦での出来事を親に話したらすっごい怒られてさ。他所の家の息子を傷モノにしておいて平気な顔で帰って来るな、責任とって来いって」


 傷モノって……確かにケガはしたけど命に別状はないしな。


「ホマレ、君まさか旅先で……いや、確かにもう大人だけどさ。でもこの子明らかに未成年だし……ハッ、まさかそのケガも特殊なプレイをした結果!?やっぱりお父さんの息子だぁ……」


「ちょ、待って!落ち着いてくれ。人様に恥じる様な事はしていない!てか待て。親父は何か特殊なプレイとかをやらかしたことがあるのか!?」


「あんたに大けがを負わせちまった責任を取って、あんたが回復するまで身の回りの世話をさせてもらいたいんだ」


「未成年の子に身の回りの世話をさせるって……ああ、息子の女癖がまた復活して……」


「ちょ、違う。おふくろ違うって!!」


「ふしだらなものですがよろしくお願いします!!」


「ふしだらっ!?やっぱりそういう関係だったんだ……ああっ、もうダメ。眩暈がしてきた……」


 俺はふらついて倒れそうになるおふくろを支えながら叫ぶ。


「それを言うなら不束者だろ!ていうかそのポーズ止めろ!!後、ご近所が見たら誤解するからとりあえず家に入れ!そしておふくろの誤解を解け!!」


 こうして、俺の周りに何か賑やかな奴が一人増える事となったのだった。

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