果物ニ接吻ト吐シゃ物ヲ
※人によっては不快に感じる性的な表現があります
※BL的要素が発生します
ご了承下さい
昇格試験の準備をしている時から、ハンスの脳内では既にシンヤに対し凌辱の限りを尽くしていた。試験の準備自体はそんなに時間はかからなかったが、どちらかと言えば興奮し屹立した自分自身を抑えることの方に時間を費やしたほどだ。
今でも少し油断すると頭の中に欲望が明確にイメージされてしまう。特に今はその相手が目の前にいる。尚更注意を要した。
我慢だ、ほんの少しだけ我慢するんだ。ものの数分すればそのあとシンヤを思う存分楽しむことができる。そうなりゃあ――。
ちょうどシンヤとの会話がうまい具合に進んでいたのもあり、ハンスは大きく笑う。最早顔の歪みも抑えることもしない。
「それでは、昇格試験、開始してください」
イレーネの合図に、お互いが武器を取り出す。
ハンスの超歪兵器は通常より一回り大きな手斧だ。それが両手に二つ。拠点長という立場になり戦う機会は必然的に減ってしまってはいるが、久しく握っていなかった手斧はまだ自分の手に馴染む、実に馴染む。
元々膂力のあるハンスは兵器にギミックを加えておらず、純粋に魔力を注ぐことでの威力を上げることに特化させていた。通常の黒霧産物であれば魔力を注いだ一撃で両断できるほどだ。
対してシンヤの超歪兵器も、奇しくもハンスと同じ二刀の形となっている。だが手に持っているのは手斧ではなく、刃渡りを大きめに拵えたナイフ。
武器を両手に握りこちらに対するシンヤが、ハンスは可愛くて仕方なかった。
あんな細腕と指で頑張って武器を握って試験に……オレに挑んでくる。使用者になろうとするためにオレに向かってくる。
最高じゃあないか!
実力も経験も何もかもがオレより低い、いや、ないと言っていい!
そんなシンヤが一生懸命に武器を作ったんだろうなぁ。使い方の練習をしたんだろうなぁ。戦い方を勉強したんだろうなぁ。本当に可愛いなぁぁぁ――。
そんなシンヤをこれからオレが思う存分嬲り通すんだよなぁぁあああ!!
勝敗の条件は降参、意識不明、死亡だった。まずは少しだけ、すこぉぉぉしだけシンヤに戦わせてやろう。それにちょっとだけ付き合ってやるんだ。
あんなチャチなナイフじゃあ当然オレは一発も喰らわねぇ。でもそこを上手く演技してやりゃあいい。もう少しで当たりそうだ、っていう感じの期待を思わせる程度に! なぁに、それ位の実力差があるんだ、どうにでもなるだろう。
それでしばらくすりゃあシンヤも疲れて手が止まる。同時に少しずつ頭によぎってくるだろう。ああ、今の僕じゃあこの人には勝てないんじゃないかってな。そりゃそうだろうさ!
それで頃合いを見て、思いっきりあの可愛い唇にむしゃぶりついてやるんだ。
戦闘経験がないシンヤが怪我をするのは怖がるはずだ。負ける気配が出てきた所で降参を言うに違いない。でも降参なんて言わせねぇよ!!
熱い口づけをしながら思いっきり抱きしめてやるんだ。武器? 当然抱き着く前に納めておくに決まってるだろ? 大事なシンヤが怪我したら危ないからなぁ。
抱きしめながらも早速あのピッチリしたシャツの中に手を入れてまさぐってやるんだ。腹に脇、胸とその先端のビンカンな所を! どんな声を出すのか楽しみだなぁ!!
大丈夫だぞシンヤ! その後にもしっかりと下半身を攻め立ててやる! シンヤの太ももは柔らかいんだろうなぁ。アレなんてどんくらいのなのか気になっちまう! あんな可愛いナリして結構なモノを持ってるかもなぁ! すぐに触診してやるからよぉ!!
何より穴だ! 穴がどれほどのデカさかだ! オレのが入らなくて裂けちまったら可愛そうだからなぁぁ! たっぷりとほぐしてやらねぇといけねぇ!!
最後には口を塞ぐ必要もなくなるだろうよ。オレのがもっと欲しいもっと欲しいってヨダレを垂らしながら請い願うに違いねぇ!
楽しみだなぁぁシンヤぁぁぁぁ~。周りで使用者どもがいるこの中で、オレらのまぐわいを思いっきり見せつけ……て……?
ハンスの頭の中で行われていたピンク色のシミュレートが早々に破綻した。
シンヤがハンスに向かってくるのは確かだが、勢いづけて走ってくるわけでもなければ出方を伺いつつというわけでもない。
武器は手に持っているものの、まるで何事もないようにハンスの方に歩いていく。笑顔のまま、白髪を揺らしながら、ごく普通に。
ハンスも拠点長になってから昇格試験を受ける者の相手を幾つかこなしてきた経験はある。そのいずれも顔や構えに緊張を露わにして半ば自棄になって勢いよく突っ込んでくるか、様子を見るという都合のいい言い方に変えた後手後手な姿勢なものばかりだった。
だが今のシンヤの様子は、今までの受験者のどのパターンにも当てはまらない。ただ歩いて向かってくる、ましてやその表情や動きには緊張や不安といった様子もない。まるでただ道を歩いているような行動をする受験者はいたことがない。
全くの初心者故の無知からか、それとも何か策があるのか……。
何の策もなしに同意書まで作って試験を受けるのは考えにくい。だとすればナイフにギミックがある可能性が一番高い。ナイフの超歪兵器でのギミックは、大体がスペツナズナイフのように刃の部分を飛ばすものだ。
その程度のギミックはハンスの実力では躱すことも弾くことも他愛ない。ハンスはナイフの切っ先がこちらを向くことに注視しつつ、すぐに対応できるように身構えていた。あくまで先にシンヤに攻撃させてやろうという考えは変わっていない。
「…………」
しかし視線を向けているナイフは一向にハンスに目線を合わせる様子はない。ただ自然に握られたナイフは重力に従いやや下の方を向いたきりになっている。シンヤもペースを変えずに足を動かしていく。
段々と距離が短くなり、ハンスの射程圏内に入ろうとしている。それでもナイフは動く様子もなく、シンヤの歩みが止まる様子もない。
近距離で刃が放たれた場合は弾く難易度が上がる。近づいてから放つのかと考えたハンスの手斧が動き、すぐに反応できるように構える。
一歩。まだナイフは動かない。
二歩。刃がハンスを向かない。
三歩。シンヤは足を止めない。
「……!」
歩む速度をそのままに、ナイフの向きもそのままに、とうとうシンヤはハンスのすぐ目の前まで来てしまった。何もせずにただ歩いてきた。本当にそれだけだった。
周囲で様子を見る使用者たち、立ち合いのイレーネ、そしてアイリもその不可解な行動に意図が読めずにいた。
一番読めない状況に陥っていたのは、対面しているハンスだった。
自分が構えた手斧のすぐ向こうにシンヤがいる。手を伸ばせば触れられるような距離、一歩進めば強く抱きしめることも容易な距離。
一手は直接斬りつけるのか。そんなことを考えていたハンスの予想は、ハンスにとってはいい意味で裏切られた。
シンヤが顔を上げてハンスの目を見た。武器は構えず腕も上げず、顔だけを上げた。気のせいか、その目にはわずかに恍惚な潤いを見せている。
「……んぇー……」
「!」
その数秒後、シンヤはゆっくりと口を開き、下を出してゆるりゆるりと動かしていた。
唇を開けた時にその奥で築かれ繋がっている、細い唾液の線。
艶めかしく誘うように動く、柔らかそうでいて滑らかな舌。
そしてその度に喉の奥から漏れる、嬌声にも似た声。
うっとりとさせた目で舌を動かして、シンヤはハンスを誘っていた。
それを見たハンスは、試験前に脳内で目の前の存在を凌辱していたことを一気に思い出した。
――誘っている。今までオレの愛に応えてくれなかったシンヤが、今ここで、オレを誘っている。
試験前に諫めていた自身が再びもたげてくるのがわかる。理性で蓋をしていた欲望が溢れ出そうとしているのを感じる。
強大な敵と相まみえた時と全く異なる緊張で、ハンスの心臓は鼓動が強く、早く鳴り出す。振動は体全身を揺さぶり、鼓膜に大きく思い音となって響く。
(……いいのか? 今まで拒んできたのに、シンヤ……本当にいいのか?)
普段は執拗に迫っていたのに、ここぞという時に二の足を踏んでしまう。ハンス自身思いがけない事だった。
「拠点長! いけません! 試験に集中してください!」
本来試験時には程度に関わらずどちらかの助言になるような発言は禁止されているが、元々都合のいい時にしか規則を出さない町だ。たまらずイレーネがハンスへの注意を叫ぶ。
しかしハンスは目の前のことに意識が奪われているのか、己の鼓動の音が大きいのか、イレーネの声に耳を傾けようとしない。
何せ我が物にしたくてたまらない相手からの願ってもない誘い。それもこんなにも直接的に、こんなにも魅力的に。
迫られるのを待っている舌を見続けていたハンスが、ふと目線を上げるとシンヤと目が合う。目が合ったことを認識してから、シンヤはゆっくりと、少しだけ目を細めた。
「♪~……ぁえー……」
目の前のお菓子をねだる子供の用に、ハンスを求めていた。今すぐにでも欲しいと、また漏れる声と舌先を垂れる雫が、それを表している。
その直後、ハンスは動いた。
両手に持っていた手斧を投げ捨てるように地面に放ると、そのままシンヤを抱きしめてその口にむしゃぶりついた。
触れたと同時に、激しい水音が口から聞こえる。閲覧席にまで届く音に、周りの使用者たちは顔を顰める。
「ウェッ……」
「マジかよ、スゲェな」
「しかもシンヤから誘うって、本当は今までしてほしかったのか?」
外野の声などとうに聞こえない。ハンスはただただ、今自分の唇と舌に全ての意識を向けていた。
――うまい! うますぎる! 最高だぁ!!
こんなにも柔らかくてプルップルで、オレの舌とねっとりと絡みついてやがる! 唇は当然、それに歯に舌にヨダレ! 口の中にあるもの隅から隅まで根こそぎ舌で舐め回してやる!
しかも少し強めのミントの香り。シンヤめ、オレとキスするために口臭に気を使ってきてくれたんだな? 可愛いヤツだ! そんなこと気にしなくていいんだぞ! 可愛すぎる! もう舌も喰ってやりてぇ!!
興奮に拍車をかけたハンスは、より強くシンヤを抱きしめると口をすぼめてシンヤの舌を思いきり吸い出した。激しくすするような音を響かせて、力強く乱暴に、唾液も含めてすすり出し、自分の口の中に運んだそれらを自分の舌で弄ぶ。
その音が聞こえる度、周囲からは吐き気を催す声が漏れ出るが、アイリはそれすら忘れているかのように呆然と二人の状況を直視していた。
何故、こんなことを?
アイリの頭の中を占めているのは、この一言だった。
変わってしまってからのシンヤの考えは理解が難しいものだったが、今目の前での行動は輪をかけて理解ができなかった。おそらく誰一人として、シンヤの行動の意図を理解できる者はいない。
だがその直後、ハンス以外の全てはその意図を理解した。
シンヤとハンスの口からは、相変わらず激しい水音が出ている。互いの唾液が混ざり合い、二人の間の地面を濡らす。
――シンヤァァァァァ! シンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤシンヤアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!
最高なんてもんじゃねぇぞ、お前の口はあぁぁぁ!! こんなの毎日しゃぶりついても飽きやしねぇ! 降参を言わせねぇつもりだったがシンヤから来てくれたんだ! 試験も何も放っぽってオレとキスしたかったんだろぉぉ? 今してるぞ、今! お前が欲しくて欲しくてたまらないモノを今!! お前に味わってもらってるんだ! それと同時にオレが欲しくて欲しくて仕方なかったモノを、今存分にもらってるんだ!
でもこれだけじゃ終わらねぇ! この後にもタップリと味わわせてもらうぜシンヤァァァ! 体中の隅から隅まで! 体中の穴という穴に! オレのモノをこれでもかって位にタァァァップリと注ぎ込んでやカッ――
不意にハンスの頭に軽い衝撃が走り、同時に果物に刃を立てたような小気味よい音が聞こえた。レモンのような弾力を持つ皮か、はたまたスイカのような固めの皮か。どちらにしろ耳障りの良い音だった。
同時に、二人の間から発していた音、正確にはハンスが一方的にむしゃぶりついて立てていた音が止む。そして数秒ほど時が止まったかのように一切の動きがなかったかと思うと、ハンスはゆっくりと顔から地面に突っ伏した。
ハンスの後頭部には、まるでウサギの耳が生えたかのように、刃が二本、並んで刺さっていた。
即死だ。一居住地の拠点を収めていた男が、舌を絡め唾液を飲み干している間に、その命を終えた。
しばらく立ったまま動かなかったシンヤが、ゆっくりと手を動かし、いつの間にグリップしかなくなっていたナイフに、ハンスの後頭部から生えた刃を戻す。ハンスの服でナイフについた血を拭いホルスターに戻すと、待ち望んでいたかのように口を大きく開く。
「う”ぉえ”っ……う“え”ぇ”ぇ”ぇ”え”……」
口の中と周りに残っているハンスの唾液と臭いとで吐き気を催していたシンヤは、そのまま吐しゃ物をハンスの頭に浴びせた。当然、ハンスは何も言わないし何の反応もしない。
中途半端に胃で溶けた朝食や胃液が、先ほどのキスとは違った粘性を帯びた水音を響かせ、ツンとした臭いを漂わせる。その臭いにやられて、もう一度胃の中の物をハンスにぶちまける。
「ぅええっ……おぅえ……プッ!」
胃の中にあった物を全て吐き出し、唾を吐きかけるように口に挟まっていた吐しゃ物の残りを吹き出す。
ポケットから取り出したハンカチで口の周りを拭い、ハンスの唾液をふき取るとハンカチを手放す。揺れるように落ちたハンカチは、その後吹いた風に舞う土埃ですぐに汚れていく。
「……フゥゥゥゥゥゥーッ……」
改めて一呼吸置く。できればすぐに口でゆすぎたい気持ちがあったが、とりあえずは問題ないと気持ちを落ち着かせる。
「……ボクの勝ちィ……」
キスする前に見せた恍惚な目をした笑顔で、シンヤは血と吐しゃ物にまみれたハンスを見下ろしていた。
シンヤ・マサキの使用者昇格試験は、拠点長ハンスの死亡によりシンヤの勝利として決着した。
【追加】
サブタイトル変更
シンヤのナイフについては次で説明予定です
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