円卓の騎士と始まりの魔女の出会い
短いのでもう一話更新します
魔女は人を騙し裏切る生き物だ、魔女を信じるな。
英国、引いては欧州の裏社会――マフィアや後ろ暗い組織という意味ではなく、神秘に属する世界――ではよく言われることだ。
魔女は人体実験も厭わない狂った知の探究者。自分さえよければ、他者がどうなろうと構わない。享楽的で自己中心な大義を持たぬ者。
中世、そんな魔女から大衆を守るために作られた組織がブリテンの騎士団、通称「騎士団」である。魔術具で武装した一〇〇〇を越える魔装騎士で構成され、金髪碧眼の男もまたそこに属する魔装騎士の一人だった。
入団するなりすぐさま頭角を現したマレウスは十八で騎士団の最高戦力、円卓の騎士に任命され聖剣を与えるほどの天才であった。
そんな「湖の騎士の再来」とまで呼ばれた新星が騎士団を抜ける切っ掛けとなったのが、彼が円卓の騎士になってしばらくしての任務での出来事である。
その日の任務は指名手配されている二級相当魔術師の拠点への襲撃、とよくある任務であった。
ただひとつ違うことがあるとしたら、拠点が組織的で設備の整った研究施設だったということだ。
「湖の騎士卿、施設内の敵掃討を確認しました」
一回りは年が上である部下からの報告を静かに聞きながら、マレウスは剣に付いた魔術師の血を拭う。
彼の足元には既に事切れた老齢の魔術師だった骸が倒れ伏せていた。
「ジェクト、了解です。隊の皆さんの撤収の指揮をお願います」
「隊長は?」
「僕は彼女の保護を」
二人が視線を向けた先にあるのは琥珀色の液体で満たされた、人間の子宮にも見えるガラスでできた培養管の中の少女。ピクリとも動かず液体の中で浮かんでいるが、装置が稼働しているということは生命活動が続いている証左と思われた。
白い髪に赤い瞳の少女。彼女の正体はまず間違いなくこの研究所で行なわれていた実験と関係があるはずだ。ここで行なわれていた研究――それは、
『人為的に魔導書の適正を持つ人造魔術師の創造』
その目的を達成するため、多くの犠牲者が存在したことが焼き払った資料から察せられた。彼女もその一人なのだろう。どこからか誘拐してきたのか、はたまた……。
「保護……ですか。彼女は魔術師が作った実験体――それも限りなく成功に近いナニかです、処分するべきでは?」
「それを判断するには尚早です。彼女が危険かどうか確認してからでも遅くはありません」
怪訝な表情でそう提案する部下にマレウスは首を横に振る。
「――了解しました。若き聖人」
「先輩まで変な呼び方しないでくださいよ」
「はははっ、あんまり一人で背負い過ぎると禿げるぞ」
マレウスが騎士になったばかりの頃に付添となったのが目の前のベテラン騎士だ。何年もの付き合いがある彼にはまだ大人と呼ぶにも早い若者が何を考えてるかすぐわかった。
青臭い最強の騎士を内心嬉しく思うジェクトは培養管の少女は上官に任して、自分は撤収の指揮に戻る。
(願わくば、彼女には平穏な人生を送って欲しいものです)
揶揄われたマレウスは金髪を揺らしながらため息を吐くと少女を解放する方法を調べ始めた。
その後、ア―ロンは人造魔女と分かった少女の処遇を巡って騎士団上層部と争い、少女を連れて魔術結社「黄金の黎明」に亡命することとなる。
さらにその数年後、一組の双子が生まれる。妹は少女と同じ赤い瞳に白い髪、姉は少年と同じ碧い瞳と金色の髪をしていた。




