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すれ違う恋の行方〈中学編〉  作者: 秋 夕紀
第1章 梅枝七海(13歳)=立松千宙(13歳)
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§6 夏休みの計画

 1学期の終業式の朝、二人はいつものように待ち合わせて登校していた。

「明日から夏休みだね。休みはうれしいけど、こうして一緒に登校するのも今日限りで寂しいな。」と私は正直な気持ちを吐露していた。

「そうだけど、夏休みの試合を見に来るんでしょ。それに、陸上部も大会や練習があるだろうし、俺も部活で学校に行くし、会えないことはないよ!」

「うん、そうだね。」と小声で答えて、黙り込んでしまった。それを察して、

「8月になったら、試合も終わって休みになるから、一緒に遊びに行かない?梅枝が良いならだけど。」と彼が救いの手を差し伸べた。

「ええっ!ホントに?行く、行く!どこへ行こうか?」

 私は抱き付きたい気持ちを我慢して、一人ではしゃいでいた。一緒に遊ぼうと言われた時、自分の耳が信じられなかった。嬉しくて彼の腕にしがみ付きそうになったが、それは自制心で何とかこらえた。その代わりに興奮してしまって、変に思われなかったか心配だった。でも、彼も会いたいと思ってくれているんだと安心した。


 終業式も終わり、教室では成績表が配られ、一喜一憂する生徒たちの声で騒がしかった。その後で配られた保健だよりで、アンケートの集計結果が公表され、さらに騒がしさが増した。

「交際した事がある人が、3年生の女子より2年生の方が多いよ。」「キスの経験は女子の方が多いんだね。このクラスでも3、4人いるってことだよね!」「男子と女子に差があるってことは、同級生だけじゃなくて、年上もあるのか。」「手をつなぐくらいなら良いけど、キスはどうかな?」「誰だろう?」

 詮索や憶測する者もいれば、ショックを受ける者、自分には無関係と決め込む者と様々だった。養護の片岡先生の解説に目を留める者はほとんどなく、大半が興味本位にとらえていた。

 放課になったクラスでは、夏休みの計画を立てる人たちや、しばしの別れを名残惜しそうにしている人たちが残っていた。七海と初絵たちのグループ4人は、昼食を食べながら話し込んでいた。

「保健だよりは、七海と立松君が作ったんでしょう。アンケートの質問は、どっちが考えたの?恥ずかしくなかった?」と初絵が訊いてきた。

「ほとんどは片岡先生が作ってくれたんだけど、質問内容は二人で考えたよ。」

「男女交際について、内の学校は他より進んでるのかな?」と一人が言うと、

「交際したいと思っている人、結構多いよね。キスしたい人も。」ともう一人の子が言い、皆でうなずいていた。

「付き合えば、手をつないで、キスぐらいするんじゃないの?中学生では早過ぎるのかな?七海はどこまで行ったの?」

 突然の質問に、私はのどを詰まらせていた。

「そんなの、どこまでも行ってないよ!純愛っていうのかな。」

「よく言うよ!純愛なの?立松君の家に行ったんでしょ?何もなかったの?」

「何言ってるのよ!ある訳ないでしょ!わたし、そろそろ部活に行かなくちゃ。サッカー部の応援の件、よろしくね!」と言って、席を立った。

 私たちが付き合っている事を話してから、初絵たちは興味津々だ。手をつないだり、キスしたりしていると思っているのか、あのアンケートのせいで余計な事を詮索された。私はまだそんな余裕はないし、今のままで十分だと思っているが、肝心の立松君はどう思っているのだろうか気になる。


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