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すれ違う恋の行方〈中学編〉  作者: 秋 夕紀
第1章 梅枝七海(13歳)=立松千宙(13歳)
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§18 転校の告白

 七海は転校の事を千宙に言い出せず、クラスの友だちにも相談できず、時間ばかりが過ぎていった。このまま千宙と会えなくなるのが、つらくて悲しかった。せめて思い出作りにと、3月の休みの日に彼をデートに誘った。

 その日は遊園地に行き、私は千宙君に思い切り甘えていた。手をつなぐだけでは物足りなく、腕を絡めて歩いた。また、遊具に乗った時も、彼の横にぴたりと座って、一時も離れまいという気持ちだった。観覧車の中で、

「今日の七海は、いつもと違う雰囲気だね。」と千宙君が私をうかがったので、

「うん。千宙君と離れたくなくて!」と言いながら、うつむいていた。

 いよいよ帰るという時になって、転校する事、会えなくなる事を涙ながらに告げた。彼はぼう然としながらも、泣いている私の肩を抱いてくれた。

「泣かなくても良いよ。仕方ないじゃん!また会えるよ!」

「またって、いつなの?東京と静岡だよ。遠過ぎるよ!」と言う私に、彼は必死になって慰めの言葉を探しているようだった。

「そうだ!夏休みはどう?俺が静岡に行ってもいいし、七海がこっちに来てもいいし、きっと会えるよ!」

「夏休みか。ずっと先だね。でも、仕方がないよね。絶対会おうね、約束だよ!」

 私の告白に、彼もつらい気持ちでいる事は分かっていた。謝るのは私の方なのに、彼に気を遣わせてしまった。やさしく肩を抱いて慰めてくれて、私は彼に何もして上げられなかった。そのままキスしてくれたら、良かったのにと思った。


 修業式までの数日間、二人はお互いを気遣い、一日一日を大切に過ごした。別れが近付くにつれ、交わす言葉も少なくなっていた。修業式には、七海の転校がクラスで告げられ、何人かの女子が涙を流して惜しんでいた。仲の良い初絵たちには、事前に話して置いたが、別れ難さにたまらなく涙していた。

その朝、千宙君から贈り物をもらった。

「七海、元気で!また会おう!これは俺たちの絆が切れないようにと思って、おそろいのミサンガだよ。ホワイトデーのお返しでもあるけど。」

「ありがとう!千宙君も元気に頑張ってね!ミサンガ、大事にするよ。手紙を書くから、返事をしてね!たまには電話してもいいかな?」

 私は涙を必死にこらえて、最後の別れを告げた。また会えると言っても、中学生の私たちが新幹線を使って会うのには、お金も時間も掛かる。こんなに好きなのに離ればなれになるなんて、失恋はしてないけど、それよりももっとつらい事だ。携帯もスマホも持たない私たちにとって、障害が多過ぎると思った。


 引っ越しの日、千宙の姿はなく、親友の初絵たちが、別れを惜しんでいた。

「立松君、来ないんだね。最後なのに、どうしたのかな?」

「今日はサッカーの試合があるから、来れないんだって。仕方ないよ。」

 私は来られない事情を聞いていたが、もしかしたら来てくれるのではと期待していた。いよいよ出発となり、初絵たちに伝言を頼んだ。

「千宙君に、よろしくと伝えといて!それから約束を忘れないでって!」

 最後に会えないなんて、悲し過ぎる。引っ越しの準備もあって、修業式がお別れの日になってしまった。もう一度、顔を見て話がしたかった。


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