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すれ違う恋の行方〈中学編〉  作者: 秋 夕紀
第1章 梅枝七海(13歳)=立松千宙(13歳)
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§12 母親からの忠告

 七海と千宙は、夏休み中に何回か会っていた。部活後に一緒に帰ったり、休みの日に街に出掛けたりして仲むつまじく過ごした。9月の始業式には登校デートも再開し、二人の仲は順調に進んでいた。ただ、クラスの中では平静を装い、二人の事を知っているのは、七海と仲の良い3人だけだった。

「立松君とは、うまくやってる?夏休みはいっぱいデートしたんでしょ?」と言ってきたのは、初絵だった。続けて「それで、進んだの?」と訊かれた。

「まあ、ぼちぼちかな。手はつなぐようになったよ。」

 私が答えると、初絵は不服らしく、疑うような目を向けてきた。

「それだけ?付き合って半年か、まだ七海はお子ちゃまだから仕方ないか!ついでに報告しておくけど、わたしは黒岩君と付き合い始めたの。」

 突然の報告に驚き、しかも相手が黒岩君だと聞き、私は心配を隠せなかった。黒岩聖太は千宙と同じサッカー部で、夏休みの初めに試合を観に行った時、初絵が見初めた隣のクラスの男子だった。その時に情報を求められ、千宙に何気なく訊いた事があった。それによると、中学生になってから二人の女の子と付き合っていたが別れ、今は女子高生と付き合っていると言っていた。その相手とどうなっているのかは知らないが、言える範囲の情報を初絵には伝えておいた。


 中間試験が近付いたある日、今度は千宙が七海の家を訪れていた。

「結構な坂道だね。七海の家は、ずっとここなの?」歩きながら、千宙は訊いた。

「この坂道は、脚が鍛えられるよ!私の家は官舎なの。と言っても、一軒家だけどね。父が公務員で転勤が多いから、ここには小4から住んでいるの。」

 玄関を入るとすぐにママが出て来たので、私は彼を紹介した。

「立松さんね、七海と仲良くしていただいて、ありがとうございます。」と言われ、彼は何と返事をして良いか分からないみたいで、縮こまっていた。少し世間話をして、と言ってもママがほとんどしゃべっていただけだが、私の部屋に行った。

「ここが、わたしのお城。女の子の部屋は、初めてじゃないよね、お姉さんがいるから。さてと、何から勉強しようか?」と照れ隠しのために口が止まらなかった。

 休憩時間に、ママが飲み物とクッキーを差し入れに来て、私の小さい頃の話や学校の話を長々としていった。私はあきれていたが、彼は興味深く話を聞いていた。

「お母さんの話、面白かった!七海の小さい頃は、男の子みたいだったんだね。」

「活発な元気な女の子って言ってよ!でも、今はおしとやかで可愛らしい女の子でしょ!だから千宙君は、私のことを…そう言えば、思い出した!」

「急に何?何を思い出したの?」

「あの夏休みにプールに行った帰りにパパと会って、その時に千宙君、何か言い掛けていなかった?」と彼の顔をのぞきこんだ。

「そんな前のこと?何か言ったかな?忘れちゃったよ!」とごまかされてしまった。しつこく追及したが、その日は聞けずに終わった。


 試験が終わって、七海はその結果に満足して母親に自慢気に話していた。

「良い成績だったわね。学年順位も上がって、良くできました。」

「そうでしょ!千宙君と一緒に勉強して、頑張ったんだから!数学と理科を教えてもらって、分かるようになったもん。」

 七海の話しは留まる事を知らず、千宙との関係を誇示するかのようだった。

「良かったわね、良いボーイフレンドができて。ほんと、七海はうれしそう!」と口をはさまれ、私はちょっと話し過ぎたかと後悔していた。

「千宙君は真面目そうだし、しっかりしているから安心できるわ!でもね、男の子は理性が働かなくなる時があるのよ。羊が狼にもライオンにもなるから、気を付けないといけないわよ!それをコントロールするのが、女の子の役目でもあるの!まだ中学生なんだから、中学生らしい交際をしてね!」

 中学生らしい交際とはどういう事なのか聞きたかったが、ママの言いたい事は何となく理解できた。以前にパパにも言われた事でもあり、今の関係は壊したくないと思った。母の説教じみた話で、成績が上がった喜びは半減していた。


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