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1 今、君の手をつかむ。(愛しているから)

 恋する桜と夏の雲


 プロローグ


 ……桜、咲く?


 本編


 今、君の手をつかむ。(愛しているから)


 山野美桜が恋をしたのは突然だった。


 美桜が恋をしたのは、モデルの仕事をしていた十七歳のときで、相手は十五歳も年上の男性だった。

 美桜は恋に興味がなかった。

 美桜にあったのは、モデルの仕事と、友達のことと、家族のことと、毎日の充実した明るくて楽しい生活だけだった。

 だから自分が本当に或る日突然、恋に落ちて美桜は本当にびっくりした。


 その恋は一目惚れの恋だった。


 その自分の初めての感情を知ってから、すぐに美桜はその男性に恋の告白をした。美桜は生まれたころからずっと、美人だとみんなから言われていた。

 美桜は確かに美人だった。

 背も高くて、長くて黒い髪がとても美しくて、肌が白く、そして笑顔も素敵だった。(胸は控えめだったけど)

 モデルの仕事もとても順調だった。

 美桜はずっと異性に、(あるいは同性にも)とてももてていた。

 美桜にずっと十七年間も恋人がいないことをみんなが不思議がっていた。(あるいは本当はいるのだけど、隠していると思われているようだった)


 美桜は自分の恋は、うまく行くと思っていた。

 少なくとも、告白は成功すると思っていた。


 でも、美桜の「好きです」という、人生最大の勇気を振り絞った初めての告白は「ごめんなさい」というその男性のたった一言の言葉によって、完膚なきまでにばらばらに砕かれてしまったのだった。


 美桜の初恋は終わった。


 美桜は振られて、つまり、失恋したのだった。(そう。私は失恋したのだ。本当に)

 美桜は落ち込んだ。

 落ち込んで、ずっと部屋の中で一人で泣いていて、仕事になんて行くこともできなかった。(プロとして失格だと思った。でも、どうしても、なにもすることができなかったのだ)


 美桜はモデル友達の年下の友人、松川小夏に失恋をしたことを相談した。


 すると小夏は「そうだったんだ。でも意外。美桜のことを振る男性って、いるんだね。どんな人?」と美桜に聞いた。


「大学の先生」と美桜は言った。

 するとその言葉を聞いて、「ああ。変わった人なんだね。きっとその人」とにっこりと笑って、フルーツジュースをストローで飲みながら小夏は言った。


「ねえ、今からもう一度、その先生のところに行ってみない?」

 相談に乗ってもらった、喫茶店からの帰り道で、小夏は美桜にそう言った。


「どうして?」首をかしげて、美桜は言う。


「なんかさ。その人、すごく変わってるっぽいし、それに美桜も結構天然っていうか、少し抜けてるところあるでしょ? だから、美桜が本当に振られたのかどうか、私が確かめてあげるよ。その大学の先生にあってさ」


「私は確かに振られたよ。ごめんなさいって言われたもん」と美桜は言った。


「なにか理由があるのかも。その理由がなかったら、その先生は美桜と付き合ってくれるかもしれないよ?」と小夏は言った。


 そんなことあるのだろうか? 美桜は疑問に思う。美桜の目には、ただ小夏が自分の失恋のことを、あるいは、その美桜の恋をした少し変わった男性について、面白がっているようにしか見えなかった。

(そのことについて小夏にいうと、「そんなことないよ」と笑いながら小夏は言った)


「まあ、いいじゃん。仕事もおやすみなんだし、学校も夏休みでお休みだし、どうせ暇なんでしょ? 一緒にその美桜の愛しの人がいる大学に言ってみようよ。ね、いいでしょ?」

 いつものように美桜の手を引っ張って、まるで本当の妹のようにして、小夏が言う。

「うん。わかった。でも、私はもう会わないからね。あったらきっと、私、また泣いちゃうから」と美桜は言った。


「決まり。じゃあ早速その大学に行こう! 場所は?」


 笑顔の小夏に美桜は最寄り駅の名前を言う。


 それから二人は電車に乗って、その美桜の恋をした少し変わった先生のいる大学まで移動をした。


(それはとても暑い、晴れた夏の七月の或る日のことだった。青色の空とくっきりとした白い雲がすごく綺麗な日の午後だった)

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