勇者襲来!?
ハイファンタジーなのに異世界恋愛になってましたごめんなさい!
後々それっぽいのは出てきますが異世界恋愛を期待して見てくれてた人には申し訳ございませんm(*_ _)m
「魔王様! 魔王様!」
ユミナスが呼んでいる。
「どうした? 騒々しい」
いつもは冷静なユミナスが騒いでいる。
余程何かが起こったのだろう。
トークナマイの国王を殺し、国民を我が軍の配下にした。
配下と言っても友好な関係を築くようにした。
ぶっちゃけ洗脳に近い。
だが、そこから生まれる子は洗脳をしなくても我らと仲良くしている。
遺伝子まで変えてしまったのかも知れない。
そうして、私は悪国と噂されていた国々で国王を民衆の面前で殺し、関係者も殺し回った。
トークナマイでした事と同じような事をした訳だな。
まさかこんなに国が多くて、王族が悪者ばかりだとは思わなかった。
前世のレヌイルフ王国も相当悪行高き国だったんじゃないか?
俺とエリスは死んでしまったが、他のみんなは幸せに暮らせてるといいな。
もしかしたら、エリスの父親も悪者だったかも知れないけど。
「魔王様! 魔王様ってば!」
おっといかん。呼ばれているんだった。
「ユミナスよ。何があった?」
「我が軍の尖兵がやられました」
「なに? どういう事だ?」
悪国に攻めて行った尖兵がやられるとは。
尖兵と言えど普通の人間に負ける筈がない。
「どうやら悪さをしていた国王の末裔が居たようで、各国から集めて勇者を育成していたと報告がありました」
勇者か?
この世界に来てから勇者を見てないな?
見た事があってもゲームの世界だけだった。
ゲーム……懐かしい響だな、いかんいかん。
「それで、その勇者はどこに居る?」
俺は前屈みになって尋ねる。
ちなみに今座って居るのはトークナマイの国王の玉座だ。
フワフワでずっと座っていても痛くならない。
是非ともこれを作った職人に会って量産して貰いたい。
おっと、また話がズレる所だった。
「勇者の存在は未だに分かっておりません」
まぁそうだよな、分かっていたらすぐに殺すだろうしな。
「皆の者には引き続き警戒を怠らないように。もし見つけたら、生け捕りで私の所へ持ってくるように伝えてくれ」
同胞を殺されたんだ。死より辛い目に合わせてやろう。
「はつ!」
ユミナスは影に消える。
最近覚えたスキルらしい。
影縫いと言ったか?
私も試しに使ってみたら使えたのでユミナスの隙を見て各国を散策している。
結局バレて怒られるんだけどな。
ずっと城の中に居るのは退屈なんだもん!
勇者の存在が噂されて数日。
私は暇すぎて魔法の研究をひたすらしていた。
ゴブリンの時はアルコールランプ程度しか火を操れなかったが今はマグマほどの火力が出るようになった。
これで自分の手が溶けて無くならないのが不思議だ。
水は大都市を一瞬で飲み込めるほどの水を出せるようになった。
調節しないと部下も巻き込んでしまうので注意が必要だ。
風は台風並みの威力になったし、天気も操れるようになった。
この魔法を天候操作と名付けた。
土は島を拡大できるほどの力と、元から海しかなかった場所に島を作れるようになった。
部下の為に島を作ってあげたが、これは魔力を凄い使うのであまりやりたくない。
闇は精神支配、呪い、腐敗、まさに魔王みたいな魔法が使えるようになった。
これは魔王特権なのか、あまり魔力を消費しない。
腐敗は臭くてあまり使う気がしないが、勇者を見つけたら第一関節ごとに腐らせていこうかと思う。
そして光なんだが、魔王なのかあまり上達する事はなかった。
試しに部下のアンデッドに使ってみたら消し炭残らず消滅させる程度だ。
まぁ回復ならエリクサーくらいの威力があるんじゃないか?
もっと光がドーン!って感じの魔法が使いたかった。
でもまあ出来ない事を伸ばすより出来る事を伸ばした方がいいよな。
さらに闇魔法を極め、人をアンデッド化するのに成功していた。
腐敗した勇者をアンデッドにしてじわじわと回復魔法をかけてやるのも楽しいだろう。
私の影が波を打つ。
「魔王様、勇者が見つかりました」
いきなりユミナスが現れた。
心臓に悪いからやめてくれよな。
ユミナスは扉から現れる事はほぼ無くなった。
驚いている表情を楽しんでないか?
ニヤニヤしてるし。
「して、勇者はどこに?」
「我が軍の島でございます」
この前作った島かー。私が居ると思って乗り込んできたんだな。無謀な勇者め。
「傷付けないように生け捕りに出来るか? 眠らせるのが効果的だろう」
「分かりました」
ユミナスは影に消えて行った。
「此処か?」
私はユミナスから捕らえたと連絡を貰い、魔族の島、通称マゾ島に来た。
誰だよこんな名前考えたやつ……ユミナスか?
部下に案内され地下牢獄へとやってくる。
「ご苦労だった。戻っていいぞ」
礼を良い、勇者の元へ向かう。
武器も取上げ、手も動かせないように壁についてある手錠で拘束している。
一体どんな勇者が来たのか、身の程知らずの顔でも拝んでやるか。
そう思い鉄格子から覗くと、ちょうど起きたようで勇者はこちらを見る。
「!?」
金髪で長髪のストレートだが、その姿はまるでエリスそのものに見えた。
「あなたが、魔王ですか……私をどうする気ですか」
覇気のない少女が訴える。
エリスに見えてしまったので頭が真っ白になっている。
「聞いて……いるのですか……」
我に返り、弱っているのを見て少女に回復魔法を掛けていた。
「ど、どうして! 私を回復させたんです!」
元気になった少女は手錠をガチャガチャ鳴らしながら喋る。
「似ていたのでな」
「似ていた?」
「あぁ、昔……世話になったやつの顔に非常に似ていてな。 それで無意識でしてしまった。済まない」
自分でもどうして回復させてしまったのかよく分かっていない。
エリスと重ねてしまって先に死んで欲しくないと思った。
「いえ、こちらこそ怒ったように言ってすいませんでした。ありがとうございます」
少女は礼をする。
「名は?」
「エリアスです」
!? 容姿が似ているだけでなく、名前まで似ているとは。
「そうか、エリアスか。私は魔王だ」
「やっぱりあなたが魔王だったんですね……私の両親を……」
どうやらエリアスは私が殺したどこかの王国の娘だったようだ。
私はエリアスにどうしてこうなったのか訳を説明した。
人間同士でも争いは尽きないんだ、魔族と人間でも争いはあっておかしくないだろう。
「こちらも生きる為だったのだ。許して欲しいまでは言わない。理解してくれ」
私はエリアスに頭を下げる。
魔王になってから初めて頭を下げたな?
「はい、私はあなたを許しはしません。でも……理解はしました」
理解してくれたようでよかった。
分からなければ支配魔法を使う所だったかも知れない。
「それで、私はこれからどうなってしまうのでしょうか?」
そうだった。
このまま放しても襲ってこないだろうし、魔王を倒せないで帰ってきたとなったら末裔になんて言われるんだろうな?
それこそ殺され兼ねないか?
んー……。
「私のモノにならないか?」
そう思ったら咄嗟に口に出ていた。