魔王に転生!?
「また来ちゃいましたね」
えぇ、また来ちゃいました。
俺はどうやらレヌイルフ王を倒す事が出来ず死んでしまったようだ。
「いえ、相打ちだったみたいです」
そうか、ならエリスの敵討ちは出来たみたいだな。
最初はゴブリンなんて嫌だって思ってたけど中々楽しい人生。いや、ゴブ生だった。
「そう思ってくれるなら転生させた甲斐がありました」
今度こそ転生はしないで天国か地獄に連れて行かれるのか?
ていうか天国と地獄は存在するんだろうか。
「一応、存在しますよ? 余っ程、善行を積むか悪行を重ねないと何方かには辿り着きませんがね」
え?じゃあ死んだ俺はこれからどうなるんだ?
「今回は前回と比べると目まぐるしい成長でしたね」
確かに初日で死ぬことは無かったな。
一歩間違えてれば危なかったけど。
「なのであなたにはもう少しまともな魔物になってもらいます」
え?また魔物!?
ていうかランダムじゃなかったのか?
「年齢はランダムですが、何になるかは私が選べるのです」
もしかして最初から年齢以外は指定していたのか!?
「いえ、三回とも全てランダムです。でも三回目だけは魔物と言う項目にチェックを入れました」
神様モドキがなにか見せてくる。
ゴブリンの時に見たステータスだ。
でも少し違うな。
「これは次にあなたが転生する魔物です」
俺は名前をマジマジと見る。
ゴブ太郎では無いようだ。
ん?『マオウ』これが名前みたいだ……マオウ!?まさか魔王じゃないよな?
「そのまさかです」
えええええ!?
「今度は王となりみなさまを導いてあげてください」
いや、導くって悪い方に導いちゃだめでしょ!?
「今度も良い転生ライフを。因みに私はモドキではありません。神様ですよ」
……パァ────ン
お決まりのようにまた光り輝く。
四回目なのでもう抵抗なく目を瞑る。
……そして目を開けると。
「マオー! マオー!」
俺は赤ん坊になっていた。
泣き方も魔王なんだけど……。
「魔王様、いないいない、ばぁ!」
泣き止まそうと何かしてるやつがいるな。
こいつはどうやら私の部下に当たるらしい。
お世話をされる事一年。
私は立つ事と喋る事が出来るようになった。
もちろん、首はもう据わっている。
「魔王様、今日から魔王学のお勉強をしましょう」
こいつはずっと私のお世話係をしているサキュバスのユミナスだ。
何故か上司に当たる私に夢の中で搾取しようとして来る。
魔王になった事で魔法抵抗が強くなったのか毎回返うちにしてるけどな。
もし、魔法抵抗が無かったら搾取されてるのか?めちゃくちゃされたいじゃないか!
「コホン。ユミナスよ、魔王学とはどういったものなのだ?」
元居た世界で言う帝王学みたいなものか?
あまり詳しい内容は知らないけど昔の皇帝になる人はみんな勉強していたとか。
「魔王学とは、魔王様が立派な魔王になるべく学ぶのです。これを学ぶ事により、ありとあらゆる魔族や人間を自分の思う通りに出来るので御座います!」
自分の思う通りに……ね。
でもそんなの要らない気がする。
「それって支配魔法じゃだめなのか?」
私は生まれつき支配魔法の適正が強かった。
前世のゴブリンで魔法を覚えていたからなのか六属性魔法はある程度使えた。
魔王の中でも歴代クラスに匹敵する強さだとユミナスは褒めてくれた。
「……それもそうですね。遊びましょうか」
ユミナスはテントの中に沢山ボールを入れて遊ぶおもちゃを持ってきた。
そんなもんで遊ぶ程子供では無い!
と思っていたが、テントを開きボールを入れた瞬間にダイブしてしまう。
どうやら好奇心は抑えられないようだな。
そして、一年が経ち二年が経ち、三年が経った。
私の体はどんどん成長していき、見た目だけなら二十歳になったんじゃないか?
これでエリスと会ってたら全てを守り幸せになってたかもな。
魔王の容姿もそんなに悪くない。
モデルにでもなれそうだ。
魔王って聞かされてたから頭にU字の角が生えてあって変な顔色かと思っていたら普通の人間にそっくりだ。
後から聞いたが、私は魔王と人間の間から生まれてきたのだとか。
所謂、ハーフってやつだな。
私の父親、つまり元魔王は私を見る前に亡くなってしまったんだとか。
人間である私の母親は私を産む時に痛みに耐え切れなくて死んでしまったらしい。
「ときに魔王様、そろそろ我が軍の資金源が底を尽きそうです。如何なさいますか?」
如何なさいますかって言われてもなあ。
今まではユミナスの裁量に任せていた。
これからは本来魔王である私に任された。
これでも元人間だったから人里を襲うのは抵抗がある。
かと言ってこのままだと野垂れ死んで魔王軍は壊滅になってしまう。
究極の選択に悩まされていた。
お金も食べる物も無いとなると、街の隅で皿を置き誰かが恵んでくれるのを待つか?
この世界ならホームレスとか難民とかいっぱい居そうだし誰も恵まないか。
どうしようかなあ……。そうだな。
うん、決めた。
「どこか悪い噂を持っている国は無いか? 特に国王が悪さをしている所をな」
これなら多少罪悪感が少なく済む。
悪い国王に加担する者を排除して国民から称えられる。
思いっきり恩を売り、それで食べるものを貰う。完璧だ。
半分は前世の腹いせと言うか私のような被害者を出さないためだ。
「はっ、只今調べさせます」
右手を胸に当てお辞儀をし、ユミナスは走って出て行く。
上に立って下の者を従えるって結構疲れるな。
ゴブリンの方が百万倍楽だった。
エリスもこんな苦労をしていたのだろうな。
それでも私に魔法を一生懸命教えてくれていた。
改めて感謝だな。
「魔王様。見つかりましたよ」
ユミナスが戻ってくる。早くない?
「その王国はどこに」
「東に二万キロ離れたトークナマイ王国で御座います」
東に二万キロか。結構あるな。
「東はどちらだ?」
「あちらで御座います」
ユミナスが右を指差し、私は左を見る。
ふむ、あっちが東か。私は目をよく懲らす。
透視の魔法を使う。
透視と言っても服が透ける事はなく、遠くを見るための魔法だ。
私はゲートを開き部下を集め、説明した。
「先ずは国王を生け捕りにし、真偽を尋ねるのだ。そして、事実ならば国民が見える所で殺す。良いな?」
「はっ!」
私の部下は人間に似たものも居るが、半数は虫や獣のような姿だ。
それでも言語を理解して喋る事が出来るみたいだ。
指揮官役にユミナスを向かわせる。
私が一人になりゆっくり休めるようにするためだ。
毎晩寝ていると夢の中で襲ってくるので寝た気にならん!本人曰く、催眠学習だとか。
……搾取したいだけに思うがな。
まぁ今はいい、私は何も考えずに寝る事にした。