予感的中!?
レヌイルフ近辺へと辿り着いた。
王様の側近が使用していたゲートと言う魔法で移動をしてきた。
その魔法を使えるのはこの世界では数人だけらしい。
俺も試しに使ってみたら使えたので驚かれた。
この魔法があれば何処へでも好きな所へ行けるかと思ったが、見た事の無い場所への移動は不可能らしい。
因みに、元居た世界への移動も不可能だった。あと女湯も。
まぁこれは見たことないから出来なかっただど、その事を教えたら「私の裸じゃ満足できないの!?」と言われてしまった。
満足してるから見たかったんだが黙っておく。
「お嬢様、到着致しましたよ」
側近に言われて馬車から顔を覗く。
いきなりレヌイルフの城にワープしたら驚かれるので通行証を見せ、街の外壁を通って移動した。
街中は雪景色が広がっていて寒そうなのに、人がいっぱい居て活気がある。
エリスが言っていたようにお酒が有名らしくて、いくつも酒屋があるのが見えた。
外交が終わったらエリスと飲みたいな。
レヌイルフの街を真っ直ぐ進み、城門へとやって来る。
ここも通行証を見せて通る事になっているみたいだ。
そして、馬車を止めレヌイルフの王室に向かう。
「ようこそ、遥々レヌイルフへお越しくださいました」
俺たちを出迎えてくれた王の名前はレヌイルフ・ネルフと言うらしい。
歳は四十歳くらいか?
頭もハゲかけてる。アゴも綺麗に割れてる。
はっきり言って格好良いとか言えない。
どうしてレヌイルフと言うのが国の名前になってるのかと言うと、この世界では国名を国王が引き継いでいるとか。
最初は違う名前で王位を継承する時にその国の名前を引き継ぐという訳だ。
日本で言う歌舞伎や落語家みたいだな。
因みに、エリスの国はエリス王国という名前になっている。
今の国王は父親だが、母親は早くに亡くなっているのでエリスが引き継いだそうだ。
それでも色々な権限は、まだ父親にあるとか。見習い女王って感じかな。
「お久しぶりで御座います。レヌイルフ王、お会いになれてとても嬉しいです」
エリスはお辞儀をしたので俺もお辞儀をする。
きっと嬉しいとは思ってないだろうな。
定型文ってやつだ。
「今日エリスに来てもらったのは……言わなくてもわかっておるな?」
玉座に座り、股を広げながら喋っている。
第一印象は最悪だな。
「はい……」
少し間をあけて覚悟を決めたかの如くゆっくり頷いた。
「来たと言うことは承けてくれるのですね?」
レヌイルフ王は前のめりになり鼻息を荒くして興奮している。
「勿論で御座います。謹んで承ります」
エリスは内心泣きそうにはなっていそうだが満面の笑みで答えた。
政略結婚だから好きでもない男と結婚しなければいけない。
それがエリスの役目だと思っていそうだ。
「では、早速皆の者をお呼びしよう。ゲートを使える者をこちらへ、エリス王国の王とその関係者を呼んでくるのだ」
どうやら結婚式は今日挙げる予定みたいだ。
前々からエリスの父親とそういう手筈にしてあったとか。
エリスは聞かされてないから戸惑っていた。
ものの五分も経たずにエリス王国の関係者が揃う。
そして、盛大な祝賀会が開かれる。
エリス王国とレヌイルフ王国を回るパレードも行われる。
式は大いに盛り上がった。
お酒も飲んでべろべろになってレヌイルフ王国が用意してくれた客室に居る。
主役であるエリスもここに居た。
「本当によかったんですか?」
俺はエリスがどう思ってるのか分かるので改めて聞いてみた。
「私一人の人生で両国が手を取り合い活気に満ち溢れてくれるのならば、安いものです」
嬉し涙ではなく悲しそうに泣いている。
「エリス様……」
「それにあなたも居てくれるから私はやっていけるの、あなたが居なければ前に進む事が出来なかったわ。ありがとう」
「俺なんて何もしていませんよ? 逆にエリス様にはいつも色々教えて貰ってばかりで……」
「そんな事ないわ、これからもよろしくね?」
「もちろんですエリス様!」
これから違う土地でエリスの為に頑張らないと。
そう考えていると、何かでエリスが撃ち抜かれる音がした。
「エリス様!?」
俺はエリスに駆け寄り光魔法を使い、手当をする。
「くそ、出血が収まらない」
エリスは口から血を流し何かを喋ろうとしている。
「無理しないでください! そうだ、誰か! 医者を!」
俺は大声で叫ぶが誰も来ない。
「……最後に、お願いがあるの」
最後だなんてそんな事言わないで欲しい。
「何でも聞きます!言ってください!」
「私の本当の名前はエリー……呼んでくれないかしら?」
「わかった……エリー! 死なないでくれ、エリー!」
だめだ、エリスの体温が急激に下がっていく。
俺の魔法じゃ治せないのか!?
「ありが……とう。あなたが記憶喪失じゃない事も分かっていたわ……私に勇気をくれて……本当にありがとう」
「エリー!エリイイイイ!」
俺はエリスに向かって叫ぶ。流れ出した血は止まらず辺り一面を赤く染めた。
「大丈夫ですか!?」
そこに入ってきたのはレヌイルフ王だった。
確か王は祝賀会で疲れて寝たと聞いていた。
ここに来るのはおかしい。
「お前がやったのか?」
俺はレヌイルフ王に聞く。
だが、王は知らない顔をしている。
「お前がその後ろに隠している。道具で撃ったんだろ!」
後ろに何か光る物を隠したのが見えた。
すると、薬莢の一つが零れ落ちる。
「くっ、エリスを殺したのはゴブリンのせいにするつもりだったが、お前もここで殺そう。悪く思うなよ」
レヌイルフ王は俺に拳銃を向ける。
「貴様ああああ──!」
俺は出せる力の全てを使いレヌイルフ王を攻撃した。