異端尋問!?
どうしてこうなったんだ?
「マスター、じっとしててください」
「そうですよ。これは異端尋問なんですから」
「それを言うなら異端審問な? それとこれは尋問じゃなくてただの審問であって欲しいのだが……」
ミリィの声を聞き付けてみんながやってきた。
まあそこまでは分かる。何事か気になったのだろう。
そこからがおかしい。
何故かいきなりララとリリに捕らえられ、ダイニングルームにある自分の席に座らされると逃げられないようにか二人にずっと腕を組まされている。
これじゃあゲートも使えないし俺の家にも行けない。
元々逃げも隠れもしないのでそれは良いのだがみんなの目が怖い、何かしたのかな。
「それでは、これより第一回主様じんも……審問会を始めるのじゃ」
俺の後ろには何やら誕生日会に使うようなガーランドが飾り付けられていた。
でもハッピーバースデーではなく「第一回パパじんもんかい」になっていた。
これを作ったのは間違いなくリマだろう。
そのせいでディオーネが尋問会と言いかけたんだな。
役目を終えてお腹が空いたのか一人黙々とカツ丼を食べている。
「それで何を話せばいいんだ? 俺は何もやってないぞ?」
「最初はみんなそういうの。そして最後には私がやりましたって泣きながらカツ丼を食べるのがお決まりなの」
タイミング悪く今日の晩ご飯はカツ丼だ、美味しそうな香りが部屋中に広がって何もしてないのに自供してしまいそうになる。
「ミリィ、これはどういう事なんだ?」
「ちょっと待った! ミリィに助けを求めようだなんて姑息な手段は使わせないわ!」
「お姉ちゃん!?」
メイとアルリエッタがミリィの手を後ろへ拘束し、リリィはバツ印の付いたマスクをミリィに着けていた。
必死にもがくミリィだったが手を離してくれないので諦めたようだ。
「それで先程何があったのか教えて頂きますか、ユキトさん?」
「何がって言われてもオグマスの家に行って紙幣を渡したり今後の神の領域にある木を活用しようって話をしてきたんだ。あ、後はこの世界の名前も決めてもらったのはリエラも知ってるだろ?」
「ええ、確かにこの世界はレスカファーナに決まったとメッセージを頂きました。でも問題はそこではありません」
何か追加で言いたそうな歯切れの悪さを感じる。
実はドリアードとの子作りは禁忌とされているのではないだろうか。
そのせいでドリアードはリリィとミリィしか居ないのかもしれない。
そう考えていると歯切れの悪いリエラの変わりにジェリアンヌが口を開く。
「ユキト殿、そろそろ白状するんだ。この中で誰が好きなのか」
「んなっ!?」
「天使である私の前で嘘偽りは通用しないわ!」
みんなを見るとジェリアンヌとジブリエル以外は視線を俯かせて合わそうとしてくれない。
何だこの状況は。
下手に誰かを選んでしまうとこの状況下じゃ何を言われるか分からない。
かと言ってそういうのに興味がない訳ではない。
この場を凌ぐには素直に言うしかないよな。
深呼吸をして心を落ち着かせてゆっくりと話出す。
紛れもない俺の本心だ。
「みんな大好きに決まってんだろ! まだ知り合って日が浅い者も確かにいる。でも日数なんて関係ない、俺の…………俺の大事な家族だ!」
みんなを見ながら喋ると下を俯いていたみんなは俺に注目する。
リマは相変わらず嬉しそうにご飯を食べてるけど。
「はぁ、流石はすけこまし主様じゃな」
「でもやっぱり決まりですね」
「うん、決まった。後は順番」
「早速始めるの」
何やら俺を蔑ろにして話始めていた。
腕を組んでいたララとリリまでも加わっている。
審問会はどうなったのやら……俺は目の前に置いてあるカツ丼を食べてとりあえず空腹を充たす事にした。
そうして食べ終わる頃に再びララとリリが俺の前に戻ってくる。
「マスター、ここに線を引いてください。あと順番に番号も」
「リリ、不正はダメです。マスター、好きな所に線を引いてください。それと下にランダムで構いませんので一から十一の数字を書いてください」
ホワイトボードに縦線だけが十一本伸びている。
それに線を引くという事は所謂あみだくじと言うやつだろう。
きっと俺がみんなの事を家族だと言ったので誰が長女か等を決めるんだな。
年齢的にはリリィが一番上な気もしなくはないけれどそれを言ったら怒りそう。
俺は黙ってララに従い線と数字を追加して返すと、みんなの所へ持っていき、更に追加で線を書き加えていた。
そこからリマを抜いた十一人でジャンケンが始まる。
なんて無謀な事を……と思いながら食後のティータイムを楽しんでいるとあっという間に決着が着いていた。
勝った者から順番に線を決めていく。
「それでは始めるのじゃ。誰が主様の第一夫人になるか、恨みっ子なしじゃ。良いな?」
「どういう事だ!?」
「はい」「うん」「なの!」
ディオーネが変な事を言ったので俺はティーカップを落とす程驚いてしまう。
テーブルに落ちて割れずには済んだが中身をぶちまけてしまった。
そんな俺をお構い無しにみんなはあみだくじに注目してあのミリィですら俺を見る事はない。
「どうせそういう遊びなんだろ」
開き直って楽しそうにしているみんなを眺めていた。
みんな種族が違うものの笑いあって楽しんでいる。
きっとこんな風景にマリエッタさんも憧れたのだろう。
あれからサイジョーに現れる事も、サブレスの村長の元に現れる事もない。
結局何だったんだろうな。
まあ村長が体たらくだから化けて出てきたって線が濃厚だけど。
「決まったのじゃ、主様!」
「ああ、終わったか。どうなった?」
みんなを眺めながら考え事をしているとどうやら終わったみたいだった。
この遊びが何処まで続くのか最後まで見届けてやるか。
あみだくじは終わったので消されてホワイトボードには第一夫人から順番に書かれている。
ディオーネ
マリエラ
ジェリアンヌ
アルリエッタ
ミリィ
リリィ
ジブリエル
エイミー
ララ
リリ
メイ
「妾が一番なのじゃ! これからもよろしくなのじゃ、主様」
ああ、うん。よろしく。
そう心の中で呟いた。
「私が第二夫人です。不束者ですがよろしくお願いします。実は初めに会った時使った魔法は婚礼の魔法だったんですよ」
おい、それ初めに言え。
「我が第三夫人だ。ユキト殿との子供となると一体どんな子が産まれるのか楽しみだな」
「ジェリアンヌ様の次で良かったです」
「ご、五番目ではありますが、これからもユキトさんの事を全力でサポートしていきたいと思いましゅ!」
あ、噛んだな。
「ミリィがユキトと関係を持つならあたしだって持たないと大精霊リリィ様としてバカにされてしまうわ!」
もう既にバカにされてる気がするけどな。
「最後の方になってしまったけど、ラッキーセブンって事で悪くないわね」
「初めから良い男だと思ってたの。第八夫人だけど一番だと思ってくれて良いのよ?」
胸は確かに一番だぞ。
「「マスター、これ以上女の子を増やしてはいけませんよ?」」
逆にどうやったら増やせるのかを俺は知りたい。
「ん、よろしく」
相変わらずメイは短い。
「これで審問会は終わりでいいんだよな?」
「何を言ってるの? もう審問会なんてとっくの昔に終わってるのよ?」
「じゃあ今のこれは?」
「正真正銘、ユキトさんの奥さんになる順番を決めてました」
「はえ? ええええーっ!?」
遊びではなかったみたいだ。
この世界へやって来てから一番の驚きかもしれない。
もし、アニメの世界ならば目が飛び出ていただろう。
「何を驚いておるのだ、主様。まさか、この後の及んで白紙にする訳じゃなかろうな?」
「い、いや。で、でもみんなはそれで良いのか? 俺なんかと……」
「俺なんかとではありません、マスター」
「そうですよ。ユキトさんだからこそ良いんです」
「うん」
事前に打ち合わせをしていたかのようにみんなは首を上下に振って頷いている。
「だがな。一番付き合いが長いリエラだってまだ半年足らずだぞ?」
「日は浅いけど大事な家族だと言ってくださりました」
「いや、まあ。リエラの言う通りなんだけど……今はまだやらなくちゃ行けない事もあるし、みんなの気だって変わるかもしれない。それにララとリリ、メイだって学校に通うようになったのに結婚なんて早い気がする。だから婚約と言う形で一旦保留にさせてくれないか? みんなの事が大好きだからこそ適当にしたくないんだ。お願いだ」
立ち上がって深々と頭を下げる。
「仕方ないのぉ。主様がそこまで言うなら今回はそういう事にしといてやるのじゃ」
第一夫人(予定)であるディオーネの言葉でみんな納得してくれたようでこの話はこれで終わる。
それにしても結婚か……この中の誰かと結婚する妄想は何度かしていたけどまさかリマ以外のみんなととは思わなかった。
異端審問って書いておきながらこれはただの審問かもしれません(白目)
特にここからすぐに子供が出来たりとかは今の所は考えていません。




