また転生!?
「また来たんですね」
え?
俺はまた輝いている子供の様な人と話をしている。
「まさか初日で死んでしまうなんて思いませんでしたよ」
何を言ってるのかさっぱり分からない。
一体どうなってしまったんだ。
「まぁそうでしょうね。寝相が悪くて崖から落ちて死んだなんて普通思いつきませんもんね」
何かの冗談だろ。
そんな寝相の悪いやつ居るか?
夢でも見てるのかも知れない。
川に落ちたならまだ分かるけど崖なんて何処にも見当たらなかった。
「夢じゃありません。現実ですよ? 現実って言うと色々語弊があるかも知れませんが」
たまたま転生した少年が、物凄く寝相が悪くて崖まで転がって行ったって事で良いんだろうか?
「ええ、そういう事ですね」
なるほどなー。……って理解できるか!
「そう言うと思いましたよ。せっかく転生したのに何もしないで死ぬなんて思いませんでしたよ。今まで見てきた中でこんな事、初めてです」
そうだろうよ、そうだろうよ。
俺も初めてだった。転生自体初めてだけど。
今度こそ俺は天国か地獄に飛ばされるのか?
「今回は特別です。また転生してあげましょう。但し条件があります」
条件?転生は何年後とかになるのか?
次転生させたらもう転生出来ないとかか?
まあ転生できるなら何でも良いがなんだろう。
「一日は生きてください! い・い・で・す・ね?」
俺に迫ってきて念を押す。
急いで首を素早く何度も縦に振る。
身体がないから伝わってるのか分からないのに気付いた。
「うんうん、分かってくれたみたいですね。それでは今度こそ、良い転生ライフを」
…………パァ────ン
子供の光が強くなり眩しくて目を瞑る。
今思ったけど目も無いよな?
なんで子供って分かるんだ?
そんな事を考えて目を開けると今度は砂浜にいる。
「あー、あー」
声を出してみる……ん!?
俺は急いで海で自分の顔を見る。
そこで確信する。
「わ、私。女になってる!?」
しかも、一人称が俺じゃなくて私って言ってしまっている。
私は赤髪で腰までありそうな長髪の可愛い女の子になっていた。
少なく見積っても前よりは二、三歳上だろうか?
…………ぐううううぅ。
お腹から断末魔が響いた。
「うっ、お腹が空いた」
転生してイキナリ腹へりとはなんて事だ。
まさか、そこだけ引き継いだ訳じゃないよな?
たまたまでありたい。
「何か食べるものは……」
私は当たりを見渡し食べ物がないか調べる。
幸い、海なので貝を発見した。
でも異世界だよね?食べれるのかな?
襲ってきたりしない!?
私は砂浜に打ち上げられていた木の棒を持ち恐る恐る貝に近づく。
……つんつん。
つついて見たけど中から何かが飛び出してくる気配がない。
「大丈夫そう……かな?」
私は貝を海から砂浜へ木の棒を使い引っ張り出す。
するとグチュグチュ音を立てて貝がいきなり泡を吹き始めた。
「まさか魔物!?」
私は木の棒を前に構える。
神様モドキに一日は生きてくださいと念押しされたので、せめて一日は生きねば!
持っている木の棒にギュっとさらに力が入る。
「さ、さぁ! 何でもいいから来なさい!」
大声を出し貝を威嚇する。
『グオオオーン』
貝から出てきたのは、とても小さい貝から出てくるような大きさでは触手が現れた。
「うわー……さすが、ファンタジー」
恐怖より驚きの方が強い。
驚きが強すぎて他の人が聞いたら棒読みに聞こえてしまいそう。
貝はミル貝みたいに一本だけ触手のような物を持っていて、それで私に攻撃してくる。
モドキと約束したんだ!
こいつを倒して食べて一日は生きる!
貝が三連続で攻撃してくる。
それをいとも簡単に躱す。
十六だった時より軽いからか、この子の身体能力が高いのか、簡単に躱せる。
「でも躱してるだけじゃ埒が明かないわね」
私はこの子が何か持ってないか見る。
腰に短剣が差してあるのに気付いた。
右手で短剣を引き抜きそのまま逆手持ちにして構える。
刃物に詳しくない私でも見ただけでよく切れそうだと分かる。
「さっきはよくもやってくれたわね!」
貝の攻撃を躱しながら詰め寄る。
一本しか触手がないので簡単に辿り着く。
「喰らえぇぇえ!」
貝の身を目掛けて勢い良く突き刺す。
身は殻から出ているので刺し易い。
先端から泡を出して一瞬で機能が停止する。
「やった? やったー!」
あまり強くないと思うが初めて魔物を倒すことが出来た。
両手を挙げ、跳ねながら喜ぶ。
「異世界転生って楽しい!」
私はMMORPGを小さい頃からやっていたので、敵を倒してレベルを上げる!という感じのゲームが大好きだった。
この異世界にそんな概念があるか分からないけどね。
倒した貝をぶつ切りにして焼いて食べる。
火はマッチのような物を持っていたのでそれで付けた。
用途はこれで合ってるのか知らないけど。
魚の塩焼きのように貝に木の枝をぶっ刺して焼いた。
ジュウジュウと音を立てて焼き目が付いていく。
うんうん、美味しそうに焼けてる。
でも毒とかないよね?
まあいいや。食べよう。
「いっただっきまーす!」
私は異世界で初めて食べる貝に勢いよくかぶりつく。
噛むと身から旨みの汁が溢れ出す。
歯ごたえがあり高級なお肉を食べているみたい。
「うっ……うまー!」
あんな気持ち悪い貝がこんなに美味しいなんて!
お腹が空いていたので無我夢中に食べた。
前世だと貝なんて食べようとも思わなかった。前世って言うか前前世だね。
「ごちそうさまー」
貝でお腹が満たされた。
久しぶりのご飯だったね。
流石に此処で横になるのは危ないかな?
また寝相が悪かったら今度は海に落ちて溺れて死んでしまう。
「うん、今度こそ街を探そう」
見た所、ここは端なので真っ直ぐ進めば何かしらの集落があるだろう。
幸い日も落ちていない。
もう草村は勘弁だし。
私は歩き出す事にした。