大いに慌てる。
魔石の灯りに照らされた場所を、三匹のスライム達に先導されて進み始めた。
「なんか、ダンジョンの通路を案内されてる感が・・・ イヤイヤ、空船の中だから通路なのは間違いないんだろうが・・・ ?・・・ ぬおぉぉ〜〜〜!
アダダダダダダダダダダダダッ!
イッ!・・・イッダァ〜〜〜!アァ・・・コツ、腰と尻が・・・ 」
案内された先には階段があり、スライム達はそこをピョンピョンと飛び跳ねて降りて行く、幅の狭い階段の壁面には、手摺りの様な物もあったが、今は一本しかない腕には灯りの魔石を握っており、しかも階段は爪先方向へ傾いていた。
サードが活動拠点として暮らしている街の、石畳みの階段でも良くある事で、街ならあまり気にする事も無く上り下りしているサードだが、この空船は半分以上が山に埋もれ少し傾いた状態で、しかも長い年月を放置されていた事で通路の床にはビッシリと、苔の厚い絨毯で覆われていた。
苔で滑る階段を、恐る恐る。慎重に足元を確認しながら下り始めたが、突然の既視感に襲われ、しかも、その既視感が『誰かに声をかけられ、後ろを振り返る瞬間』だったため、無意識で顔を後ろに向けてしまい、その拍子に足を滑らせて階段を転げ落ちた。
壁に張り付いて、腰と尻を摩りながら呻いていると、三匹のスライム達がサードに近寄って来て、その身体をミョ〜ン!伸ばしながら顔に寄って来る。
まるで、その仕草が『大丈夫か?』と言っている様で、思わずクスリと笑って、
「ありがとう。もう大丈夫、さあ俺を案内してくれるんだろ?」とスライム達を促した。
元気に飛び跳ねながら俺を先導していたスライム達が、突き当たりの様な場所で飛び跳ねながら待っていたが、サードが側に立つと壁に向かって一匹のスライムが飛ぶ、それを見て、一瞬『オイ!』と思ったが、壁に向かって飛んだんスライムが壁に当たった瞬間にすっと消えたのを見て、余りにも予想外な出来事に、思わず!
「ハァアァ〜〜〜!?」とアゴが外れんばかりに大きな声を上げ、開きっぱなしになったアゴを、灯りの魔石を握った手でカックン!と音を立てて閉じた。
残りの2匹も壁に向かって飛び込んで行く様子を、マジマジと凝視してたが、試しに壁に触れてみると、手がそのまま壁に溶け込んで行く、エッ?と思ったが、カン♪と軽い音を立てて止まる。
どうも灯りの魔石が引っ掛かって、途中で手が止まった様だ、ウゥン?と少し考えたが、ポケットに灯りの魔石入れ、もう一度手を突っ込むと、すっと手が壁に溶け込んで行ったが、案の定、腕当てを装着している手首で止まる。
ふと気付いて、今度は、そのまま顔を壁に潜らせてみると、なんの抵抗も無く頭だけ壁の向こう側に突き出た事で、壁を透過する条件が理解出来たので、取り敢えず装備を外し、服も全て脱いで壁を潜ると、そこは、どうにか周りの様子が確認出来る程度には明るさがある場所で、白っぽい色をしたかなり太い円柱の柱が三本並んでいた。
スライム達は、石柱?の前にある四角い箱の様なものの上で、俺が入って来るのを大人しく待っていたようで・・・
・・・・・・・・・???
何故か?また既視感が・・・
その既視感に目眩を感じた瞬間、俺は無い誰かに身体を操られたか?の様に、無意識のうちに目の前の四角い箱に手を置いて、何か?呪文の様な言葉を呟いていた。
俺が呪文の様な言葉を無意識で呟いた途端、スライム達が次々と三本の石柱?の中に消えて行き、同時にズゥン♪と腹の底に響く音がしたか?・・・ と思ったら、立っているのが困難な程の激しい振動に襲われた。
『 まるで、固い地面に突き刺した棒を、グリグリと動かして抜く時の感じに似てる・・・
もしかして・・・
この空船が飛ぼうとしている!』と直感的に確信して、何?何だ!?動くのか?エッ!本当か〜〜〜〜〜〜!
突然、再稼働し始めた空船に大興奮したサードだったが・・・
1時間後、空を漂う様にして飛ぶ空船が辿り着いた先を目前に、サードのテンションは一気に下がる事になる。