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連れて行かれた先は。

 


 目の前で、フルフルと震えてるスライムを見て『まあ、そんな事はないか〜 』と思いながら、右手でガシガシと頭を掻くと、サードは座っていた太い木の根から腰を上げて、荷物や脱いだ装備が置いてある場所へ向かって歩き出す。


 まだ左腕が無い状態に慣れない様で、少しフラフラと振らついてはいるが、足取りはしっかりとしている様に見える。


「問題は、今夜はこのままココで夜が明けるのを待つか?それとも、このまま街に向かって出発するか?なのだが・・・ まあ、どちらにせよ、撤収の準備だけはすませとかないと!」と大きなリュックから、食料品関係とゴブリンを討伐した際、ゴブリンが根城にしていた場所で回収した。初心者冒険者であったであろう人が残した数点の遺品の中から、冒険者を証明するタグだけ残して、それ以外の遺品は残して行く事にする。


 街まで歩く際に少しでも体に架かる負担を軽減する為だ、取り敢えず荷物の整理が終わったので、次は街まで歩くエネルギーを補給する為に、食事の準備に取り掛かる。



 石で囲った簡易囲炉裏に枯れた木の枝を投げ入れ、再び火を起こし、木の枝で作った串に刺したままだった食べ掛けの川魚を、囲炉裏の側に刺して再び軽く炙り、小さ鉄鍋に水筒から水を注ぎ入れ湯を沸かし、沸騰した鍋に村で貰って来た野菜や干し肉を刻んで入れて、シチュー擬きを作る事にしたのだが、片腕だけでは、ナイフの刃が通り易い野菜を切るのにも苦労したし、硬い干し肉は思案の末に、両足のブーツの底で挟んで押さえながら、悪戦苦闘しながらどうにか一口サイズにナイフで切って、鍋の中に入れたが、これが思っていた以上に苦労した。


 そして、あの三匹のスライムは達は、まだ俺の側をうろちょろと動き回っている。


 試しに、残った野菜を与えてみたが、食べようとはしなかったのに、干し肉に対しては、もの凄く分かり易い反応を見せた。



 足で挟んでナイフで削っていた時も、巧く削れず、少し離れた場所に飛んで行った干し肉に興味を示していたので、


「おっ? お前、この干し肉が食べたいのか?」と、袋の中に入ってた干し肉を一枚取り出し、側にいるスライムに差し向けてみると、まん丸だったスライムの体がミョ〜ンと、干し肉に向かって伸びてきたが、スライム自体のバランス感覚の問題か? ただ単に伸びた身体を上手く維持出来なかったのか? ペタンと倒れ、またまん丸になって、再び干し肉に向かって伸びてくる。


 その姿が妙に可愛く見えて、調子に乗ってホレホレと遊んでしまったが、『どうせ残った干し肉は、もったいないがココに置いて行くしかないのだから』と、三匹のスライム達に干し肉を一枚ずつ渡してやった。


 俺がシチューを食べている間、干し肉を体内に取り入れ終わったスライム達は、まるで三匹で戯れているかの様に、俺の目の前でコロコロと転がったり、限界まで身体わ伸ばしてはペタンと倒れて見たり、三匹で競争するかの様に行ったり来たりしている。


 そんな様子を眺め『王都に住む者の中には、大小様々な大きさのガラスの水槽にスライムを入れて、観賞用に飼っている人がいるらしいぜ!』と王都の学園に通って居た頃の、仲が良かったクラスメイトから聞いた話を思い出す。



 作ったシチューを食べ終わり、暫く目の前ので戯れているスライム達を眺めていたが、空が少し明るくなって来たのに気付き、水筒に残った水で焚き火の火を消し、愛用の剣とナイフを腰に差し、大きなリュックを右肩に掛け、


「ようスライム達、なんか?名残惜しい気もすることが、俺はそろそろ行くわ! 日が完全に昇る前にワイバーンの素材を少しでも多く回収して、義手を作る為の金を稼がんとな!」と目の前のスライム達に声を掛けた。


 過去の大戦で、先の時代に繁栄していた文化や技術の多くが消失したらしいが、それでもまだ、消失せずに残った数々の技術が、その形を変えながらも今の時代を生きる者達の生活を支えてくれている。


 失った手足を補う義体技術もその一つだが、性能の良い義体を手に入れ様とすれば、其れなりの高額の資金が必要となるので、左腕を失ったサードは、少しでも性能の良い腕と、治療後のリハビリ期間の生活費を稼ぐ為に、眼下に転がるワイバーンの残骸をあてにしていたのだ、本来ならワイバーンの討伐依頼はBランク以上の冒険者達がパーティーを組んで受ける依頼、勿論、依頼料も高額だし、ワイバーンの素材も高額での買い取り対象となっている事から、眼下のワイバーンの残骸から少しでも多くの素材を持ち帰りたいと思っていた。



 サードに声を掛けられたスライム達は、まるでサードの言葉を理解しているかのように、ピョンピョンと飛び跳ねながらサードの目の前を移動し始め、少し先に進んではその場で飛び跳ねてサードが追いつくのを待っている。

 その様子は、サードを先導するかの様にも見えたが『それほど高い知能を有しては無いと言われているスライムに、人を先導して移動するなんて・・・そんな器用な真似が出来るのか?』と思いながらも後をついて行く感じで歩いて行くと、スライム達は下に降りる穴とは違う方に向かって飛び跳ねて行く、『ああ、やっぱり・・・ 』と少し寂しく思いながらも、下に降りる穴に向かって歩き始めると、スライム達が慌てた様にサードの目の前に来て飛び跳ね始めた。


「えっ? お前達、もしかして俺を何処かに案内しようとしてる?・・・」と、目の前で三匹がどうじ飛び跳ねた後に、一匹ずつ次の場所に跳ねて移動する動作を繰り返している。

 試しに、スライム達が向かう場所へと足を運んでみると、さっきと同じ様に目の前で三匹がどうじ飛び跳ねた後、一匹ずつ次の場所に向かって跳ねて移動した。


 そんな調子でスライム達に先導されながら、木の根が入り組んだ大きな岩の隙間の前にたつ、

「これって、この岩の隙間の中に俺も入って来いって事だよなぁ・・・ でも、この入り口ってかなり狭いぞ?・・・」と呟きながらも、このスライム達が俺を何処に連れて行こうとしてるのか?が、妙に気になって、腰から剣とナイフを抜いて、大きなリュックと一緒にその場に置くと、灯り用の六角柱の形をした魔石と、小さなナイフだけをポケットに突っ込んで、先ほどからまだか?まだか?と催促する様に、岩の隙間に出来た入り口を出入りしているスライム達に付いてはいる。


「この入り口・・・ 本気で狭いぞ・・・ やっぱり俺ってバカだよなぁ〜 ・・・」


 スライム達に誘われる感じで、興味本位で岩の隙間に身体を捩じ込んだ自分を恨みながらも、ハッ!っと気合いを込めて一気に肺の中の空気を吐き出すと、自分の身体を奥へと押し込む。


 岩の隙間に強引に身体を差し入れると、その少し先には空間があり、目が暗さに慣れるとともに、その空間の広さが認識出来た。


「取り敢えずは、立った状態で歩き回るのには問題は無い様だな・・・ スライム達は何処に行った?・・・ 」


 ピタピタと跳ねる音が聞こえて来る事を確認しながら、ポケットから灯りの魔石を取り出すと、少しだけ力を込めて握って灯りを確保すると、魔石の灯りで明るくなった辺りを見回すと、そこは、どこか通路の様な場所に思えた。




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