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目の前に三匹のスライムが。

 


 真っ暗な闇から、サードの意識が徐々に覚醒しはじめる・・・


 あれ?・・・  ここは死後の世界?・・・・   

 しかし、身体の感覚がそれを否定している。


 顔には地面に肌を押し付けている感触もあるし、身体の下にも地面があるのを感じる。

 そして、耳は小川を流れる水の音を聞き取っている。

 次は右手・・・ 良し動く! 左手は・・・・  全く動いている気配も感じないし、感触も無い・・・ そして思い出す。 頭上から降って来たスライムに襲われ、強酸で溶かされて左肩の付け根から地面に落ちた事を・・・・



 右手を握ったり開いたりしながら、問題なく右手が動いている事を確認しながらも、自分が置かれた状況を確認する為に、堅く閉じていた目を薄っすらと開けて回りを見回す。


 空船の上から下を覗いていた事を思い出し、幸運にも地面に向かって落下していなかった事を、久しぶりに神様に感謝しながら、頭を反対側に向ける決心をする。


 何故なら、後頭部側からカサカサと何か?が動いている音が微かに聞こえるんだ・・・

 もしかして?まだあのスライムが、自分の左腕を消化している最中で、もし、自分が顔を動かした瞬間、スライムが襲って来たら・・・ と、思うと、恐ろしくて頭を動かせれなかったのだが、勇気を出して反対側に頭を向けた瞬間、目の前に小さなスライムが三匹鎮座していた。



「うおぉ!~~~~~~!!!」と驚いて、慌ててスライムから距離を取ろうとしたが、左腕が無いせいか?上手く身体のコントロールが出来ず、転がる様にしてサードはスライムから離れたが、直ぐに大きな木の根元まで追い詰められてしまう。


 本来ならば、スライムに出会ってもそれほど慌てる必要がある生物では無い、先ず人を襲う事はほぼ無い上に、スライム自体が動物や魔物の死骸を餌としているからだ、しかし、先ほど左腕を溶かされてしまったサードにとって、自分に近寄ってくる目の前の三匹のスライムは、死神にしか見えない。


 大きな木の根を支えにして、どうにか体を起こしたサードは、スライム達から逃げる様に走り出したが、左腕を失ったばかりで、まだ身体の平衡感覚等のバランスが上手く取れていない上に、空船の船体の表面に張り巡らされた木の根に、足を取られて転倒してしまう。


 這う様にしてスライムから距離を取るサード、飛び跳ねながら距離を詰めて来るスライム。

 今度は転がって、またスライムから離れるサード、地面の上をスススーと移動してくるスライム・・・


 しばらく空船の上を逃げ回っていたサードが、ふと気付いた。『あれ? このスライム達、俺に向かって距離は詰めて来るけれど・・・ 襲って来る気配が無いぞ・・・?』と・・・ そして、一度、冷静になって今の状況を考察してみる事にした。


『うぅ〜ん・・・ 確か、最初に襲われた時って・・・ 木の上から襲って来たスライムは一匹だけだった様な・・・ でも目の前には三匹のスライムが・・・ 確か、スライムって基本的に生きている人や動物を捕食対象にはせずに、人や動物の死骸を餌にしているはずだよな〜 第一、何で生きている俺を襲う必要があるんだ? 下にはあれ程のワイバーンの死骸があるのに・・・? 』と思いながら、サードは目の前の三匹のスライムに余計な刺激を与えない様にユックリと立ち上がると、眼下のワイバーンの死骸を見る。


『じゃあ、なんであの時、俺はスライムに襲われたんだ?そして、何故? 今、俺の目の前のに居るスライム達は、俺を襲おうとはしないんだ?・・・ そもそも、俺を襲って来たスライムと、目の前に居る三匹のスライム達は同一個体なのか?・・・ 』と悩んでみたが答えは出て来ない、


 そして、不審に思う事がもう一つ、左肩の付け根の傷口の事なのだが・・・

 普段の生活をする上で、事件や事故で大怪我を負った場合や、俺達の様な冒険者が魔獣達等に襲われて負傷した場合は、教会で回復魔法での止血治療を受けるか?町医者の外科的な治療を受けるか? 冒険者の場合ならば、パーティーメンバーに回復魔法が使える者が居れば良いが、居なければ高価な上級回復薬を使って処置しなければ、命の危険に晒されるのだが、ソロで活動している駆け出し冒険者の俺では、パーティーメンバーの回復魔法を受けられ無ければ、高価な上級回復薬を所持する金銭的余裕も無く、所持しているのは『体力が少し回復する』程度の下級回復薬、出血死覚悟で傷口を押さえ、激痛に耐えながら、歩いて街に戻るしか命が助かる方法は無かっただろう・・・


 しかし、左肩の傷口は出血も無く、痛みも全く無ければ、まるで治療を受けた後の様に傷口は塞がってて、触って確認する限りでは皮膚が貼ってある様な感触もある。


『まあ、深刻な命の危機に関する問題が無くなったと思えば良いのだが・・・ もしかして? このスライム達が傷口の治療を? イヤイヤ、まさかそんなハズは無いよな〜 ?・・・ 』と考えながら、町医者が外科的な治療をする際、スライムが持つ特性を巧く活用して、患者の治療に役立てているのを思い出し、『もしかして、そうなの?』的な視線で目の前の三匹のスライム達を見ると、それを肯定するかの様に一匹のスライムがフルフルと身体を震わせた。










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